日本語ラップ VS【DJ PREMIER】

「DJプレミア完全版」というプロデューサーDJ PREMIERの偉業を広く深く掘り下げた恐らく世界初となる一冊に、VINYL DEALER BEAT BANDITとして僭越ながら寄稿させていただきました!
DJ PREMIERは国内外含め、店主にとって常にトップ5には入ってくる位、好きなプロデューサーの一人なんで執筆依頼を貰った時は大変光栄だったのと、久々のフィジカルリリース仕事ということもあって気合が入りました。
レビューの執筆時(去年)は、DJ PREMIERビートが脳内BGMで延々とリピートされ、店主自身にとっても御大のビートの魅力を改めて意識し直す良い機会になったと思っています。

DJ PREMIER 完全版

その「DJプレミア完全版」が、いよいよ2024年1月26日に書店に並ぶということで一足早く見本誌を拝読したところ、御大DJ PREMIERのこれまでの仕事を味わい尽くした、確かに永久保存版級の超濃厚な一冊に仕上がっておりました…!
詳細はご購入後のお楽しみってことで多くを語るのは野暮ってもんですが、個人的にはディスクレビュー以上にアーティスト陣のインタビュー企画やコラム、巻末の執筆陣全員のベストワーク3選が非常に興味深く。
特に、ベストワーク3選は自分も含めて見事に皆さんバラバラの選曲になっていたのがすごく面白く、だからこそ語るべき余白が多くて皆が今なお惹かれ続けるんだろうなあと、妙に納得もした次第。

ちなみに、出版元の河出書房新社のご厚意で、極少量ながら当店でも販売させていただけることになりました!
帯にライターのクレジットも入れてもらい、至れり尽くせりで恐縮の極み…。
というわけで、巷でも話題の「DJプレミア完全版」に便乗して、当記事では球数は少ないまでも日本語ラップアクトとの仕事をピンポイントで紹介します。
もちろん、全て「DJプレミア完全版」本編にも掲載された作品ですが、こちらは日本語ラップ起点での解説ってことでスピンオフ的に合わせて楽しんでいただけると有難く。

アナログ(中心)で聴く、日本語ラップ/国産R&B VS DJ PREMIER!

ZEEBRA_UNTOUCHABLE

ZEEBRA”THE UNTOUCHABLE”
日本語ラップ史という大きな枠組みで捉え直した時に、(スチャダラパーのREMIX仕事を除いて)DJ PREMIERの純粋なプロデュース作品としては歴史上、国内アクトとしては初となる意義深い一曲。
DJ PREMIER作のBILLIE HOLIDAY”YESTERDAYS”を使用したビートは、リリースの97年時点でも取り立てて先鋭的なサウンドではなかったですが、キングギドラを休止したZEEBRAのソロでの最初期仕事としてインパクト、話題性は充分だったはず。
FILE RECORDS/NEXT LEVEL産の企画盤、日米合作V.A.「NEXT LEVEL RECORDINGS VOL.1」収録曲だったこともあり、後にFUTURE SHOCKからリリースされたソロでの1STアルバム「THE RHYME ANIMAL」には未収録だったため、キャリアにおいてはやや影が薄い気がしないでもないですが、その「THE RHYME ANIMAL」にPT.2、2000年の2NDアルバム「BASED ON A TRUE STORY」にPT.3が収録され、ZEEBRA自身にとって非常に思い入れのある楽曲なのは間違いないと思います。
ちなみに、”THE UNTOUCHABLE”のフックには、まだデビュー前にキングギドラとして客演したRHYMESTER”口から出まかせ”の自身のヴァースから「体中に電流、流れてる戦士 むやみやたらに近付きゃ感電死」の一節を再利用していたり、ヴァースでもDJ HASEBEの客演仕事の”末期症状”のタイトルを読み込んでいたりもして、キャッチーな節回しを披露しています。
一応、BUCKWILD作のRHYMESTER”マイクの刺客”がA面扱いなんですが、それに負けず劣らずのB-SIDEクラシックだと思います。

CHEYENNE_FEEL MY LOVE

CHEYENNE”FEEL MY LOVE”(DJ PREMIER REMIX)
MISIA”つつみ込むように…”以降、ポップスのマーケットも巻き込んで空前の国産R&Bブームの中で、REMIX仕事ながらDJ PREMIERにも白羽の矢が立ったのが、当時はニューヨーク在住で逆輸入でデビューしたCHEYENNE嬢の”FEEL MY LOVE”。
同じく初期のシングルで、”KEEP IN TOUCH”ではMARLEY MARL、”YOUR HOT LIPS”ではDA BEATMINERZをリミキサーとして招集、当時はまだ音楽業界がバブルだったのがよく分かる感じで大物制作陣が参戦していたのもレーベルからの期待の現れだったことでしょう。
今井了介が手掛けたオリジナル・バージョンをマッチョにビルドアップしたようなREMIXは、正直驚くような出来ではないですが、2000年前後のDJ PREMIERのR&B関連仕事だと、例えばBRANDY”ALMOST DOESN’T COUNT”(DJ PREMIER MIX)やN’DEA DAVENPORT”BRING IT ON”(PREMIER & GURU MIX)辺りのUS仕事と比較しても及第点は超えていると思います。

PUSHIM_SET ME FREE

PUSHIM”SET ME FREE”
リリースの2000年当時、マツダ車のPRソングになったSONYからの企画盤で、ジャパレゲ畑のPUSHIMと組んだ珍品!
同作が日本国内のみのリリースで、DJ PREMIER作のオリジナル・バージョンはPUSHIMのアルバムにも収録されなかったこともあってか、海外のコアなヘッズからすると知る人ぞ知る一曲になっており。
綺麗なピアノリフを刻んで組み直した、いかにもDJ PREMIERらしいビートなんで、インストを勝手にジャックしたフリースタイルなんかもYOUTUBE上でチラホラ確認できます。
ちなみに、”SET ME FREE”(HIPHOP MIX)では、ビートは同じながらDJ PREMIERのスクラッチも加えられていて、更に濃厚な絡みを聴かせています。

スチャダラパー_サイクルヒッツ

スチャダラパー”クラッカーMC’S”(REMIX)
公式には国内最初となるDJ PREMIER仕事なんで、CDのみの音源もオマケで。
スチャダラパーの95年のREMIX盤「サイクル・ヒッツ」に収録された”クラッカーMC’S”(REMIX)は、GLADYS KNIGHT & THE PIPS”CLAUDINE THEME”の冒頭の一瞬のフレーズを切り取ったシンプルなビートに、スチャダラパーBOSEとANIのキャッチーな掛け合いが映える一曲。
RAMSEY LEWIS TRIO”SLIPPIN’ INTO DARKNESS”を使用した自前のオリジナル・バージョンよりももっとストイックな仕上がりで、その無骨さがDJ PREMIERらしいと言えばらしいんですが、まだオモロラップを提唱していた頃のスチャダラパーとの相性はまずまず、という感じ。
DJ PREMIERの他にもPETE ROCKやBUCKWILD、NO I.D.、国内からもILLCIT TSUBOI等が参加した「サイクル・ヒッツ」は結果的にLP化も12″化も一切無く、そのせいかスチャダラパーのキャリアにおいてはやや影が薄い作品だけど、KI/OON RECORDS期のベスト盤「ポテン・ヒッツ」と対になる一枚として何らかの形でアナログで残されていたなら印象はかなり違った気もします。

スチャダラパー_サイクルヒッツ_DJ PREMIER

なお、CDには着せ替えで各曲ごとにジャケが付いてるんで、”クラッカーMC’S”(REMIX)版のジャケも載せておきます。

スチャダラパー_TRIPPLE SHOT EP

スチャダラパー”今夜はブギー・バック”(LIVE@UMEDA HEAT BEAT OSAKA 9/11/98)
スチャダラパーで、もういっちょ!
これは完全に余談レベルなんですが、小沢健二との大名曲”今夜はブギー・バック”をJERU THE DAMAJA”COME CLEAN”の2枚使いで披露したライブ・テイクが公式に音盤化(12″/CD)してるんで、ついでに。
98年の大阪でのライブ時、原曲のリリースが94年で、彼等的にもそろそろ普通に演るのは飽きてきたぐらいのタイミングだったのか(?)、DJ SHINCOによる”COME CLEAN”の粗めの2枚使いで、もちろん小沢健二の参加も無いストイックな仕上がり。
同曲のライブ・テイクでは疑似ライブの”今夜はブギー・バック”(LIVE AT BIG EGG?)、REMIXだと小沢健二パートを小山田圭吾が歌い直した皮肉なテイクは有名ですが、後年の「トリプルショットEP」にひっそりと収録されていた本REMIXの方は、それらに比べると知名度が低い気がします。
DJ PREMIERプロデュース云々とかじゃないけど、WARNER MUSIC JAPANから公式リリースされていて権利関係もクリアしてるはずなんで、変化球として!

TERIYAKI BOYZ_BEEF OR CHICKEN

TERIYAKI BOYZ”YOU KNOW WHAT TIME IT IS?!”
続いて、こちらもCDで。
ファッションブランド「A BATHING APE」のNIGOがDJを務め、RIP SLYMEのILMARIとRYO-Z、M-FLOのVERBAL、そしてWISEの4MCが組んだユニット、TERIYAKI BOYZの2005年の1STアルバム「BEEF OR CHICKEN」に、DJ PREMIERプロデュースが一曲有り。
TERIYAKI BOYZのキャラに合わせた(?)、BPM早めの軽快なビートを提供していて、メンバーのマイクリレーを好アシスト。
中盤には、LARGE PROFESSOR”RADIOACTIVE”の「LIVE WITH THE HARDCORE STYLE」と、DE LA SOUL”OOOH.”のREDMANのパンチライン「LET’S GET ILL」を掛け合わせたワードプレイも披露していますが、コレは日本向けと言うか(?)、DJ PREMIERにしてはちょい分かりやす過ぎかな。
アルバム本編はCDのみだったんで写真もそっちなんですが、”YOU KNOW WHAT TIME IT IS?!”の方はDJ PREMIER仕事のブートレグV.A.「RARE & UNRELEASED JOINTS VOL.5」にひっそりと収録されてLP化はしているんで注意!

最後になりましたが、以前からDJ PREMIER関連のレコードは積極的に展開してきた当店なんで、今回の「DJプレミア完全版」のリリースを記念して、GANG STARR及びDJ PREMIERのプロデュース曲を含むレコード/「DJ PREMIER完全版」をお買い上げのお客様に当店の独自特典で、本記事をそのまま閉じ込めた「DJ PREMIER VS JAPANESE MC & SINGER」のミックスCDRを差し上げます。

本記事で紹介した作品に加えて、日本語ラップのアカペラを既発のDJ PREMIERビートとブレンドしてミックスしています。
DJ PREMIERファンはもちろん、日本語ラップ好きにも楽しんでもらえることを意識してみたんで、この機会に是非!
配布期限は一旦設けませんが、ある程度捌けたら急にやめるかもしれないんで気になる方はお早めにどうぞ。

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