STILLICHIMIYA「死んだらどうなる」 – #np 2023.07.09

本日7月9日は、調べてみるとSTILLICHIMIYAの(3RDアルバム?)「死んだらどうなる」のリリース日で(2014/07/09) 。※CDのリリース日
完全自主制作のCDR作品「S.T.(STILLICHIMIYA)」、一般にも流通した自主制作盤「ONE PEACH」を経て、田我流、YOUNG-G、BIG BEN、MMM、MR. 麿の5名にメンバーがフィックスしてから初のアルバムで、グループ結成10周年のタイミングでMARY JOYからのリリースとなった一枚。
LPはJETSETがディストリビュートする形で、2015年に450枚限定でリリースされました!

STILLICHIMIYA_死んだらどうなる
STILLICHIMIYA_死んだらどうなる_裏

STILLICHIMIYA「死んだらどうなる」
(MARY JOY/JPN 2LP/MJLP-062)

A-1 うぇるかむ
A-2 HELL TRAIN
A-3 出かけよう
A-4 ズンドコ節
B-1 CM「おねり」
B-2 生でどう?
B-3 宇宙旅行
B-4 DIGITAL CURRY
C-1 だっちもねぇ(feat. 原田善照)
C-2 路地にて
C-3 めんどくせぇ
C-4 めっちゃええやん
D-1 銃声
D-2 シャドウダンス
D-3 竹の子
D-4 CM「土偶」
D-5 土偶サンバ
D-6 陸の孤島

グループをスリム化して、MARY JOY所属となったのが2009年(EP「天照一宮」のリリース年)としても、そこからアルバムまで5年を要したのは、その間に田我流やBIG BEN、MR. 麿(EXPO)等のソロ作、YOUNG-GとBIG BENによるプロデューサーユニット、おみゆきCHANNELのリーダー作など、メンバー各自の課外活動の活発化のせいだと思うんだけど、それ故にメンバーが久々に再集結した本作でのスペシャル感たるや…!
元々、「宮のエース」の田我流だけど、EVISBEATS”ゆれる”の客演以降、明らかにソロMCとして開花したことで、それ以前までの作品とはメンバー間のバランスも少し違ったものになっていて(そもそも、V.A.的なニュアンスが強かった前作「ONE PEACH」からはメンバーも減ってる)、その辺りも考慮してか、本作はローカルなネタをふんだんに盛り込みながらもコンセプチュアルな作りになっています。
個人的にも大好きな作品なんで、楽曲単位で改めてレビューしてみました。
メンバー5人分、それぞれソロで撮ったPR動画も(半ば大喜利ノリですが)ユニークでした!

全曲レビュー

01 – “うぇるかむ”
BIG BEN作の、ほのかにレゲエがかったユルめのビートに、地元山梨のローカルなネタでマイクをリレーする、いかにも「らしい」作り。
エース、田我流が口火を切り、各メンバーが入り乱れる構成は華やかでシンプルに楽しい!
スタジオ石のYOUTUBEチャンネルで2012年から続いてる動画「うぇるかむ とぅ やまなし」シリーズの記念すべき第1回からイントロで使われてたビートなんで、イメージ的には動画を楽曲化した感じ?
季節のイイ時期、車でみんなでワイワイしながら山梨旅行に出掛けた矢先、いきなり事故死しちゃう寸劇(映画「丹波哲郎の大霊界 – 死んだらどうなる」そのまんま!)は、予備知識無しで聴いてるとけっこう衝撃展開かも。

02 – “HELL TRAIN”
いきなり死んじゃった御一行を地獄行きの列車に乗り込む展開で、田我流ことFALCON(A.K.A. NEVER ENDING ONE LOOP!)が手掛けたファンキーなビートに、BIG BENから始まるマイクリレーが熱い!
テーマに沿って(?)リリックもだいぶ危険だけど、MR. 麿が恐らくはノリノリで手掛けたであろうMVはそんな世界観を見事に映像化していて必見。
余談だけど、STILLICHIMIYAや田我流の躍進は、MMMとMR. 麿コンビによるスタジオ石が作り出すビジュアル面からの後押しも大きい気がしてるんで、そんな体制がうまくハマッた一曲だと思います。

03 – “出かけよう”
2013年の対バンイベント「極東最前線(MOCKINBIRD WISH ME LUCK)」の来場者向けの特典としてダウンロード配布された一曲(当時は田我流のソロ名義)。
またしてもFALCON作のビートに乗って、釣り好きで知られる田我流がMMMと2人で、釣りやアウトドアをテーマに語り合うような、リラックスしたユルめな作り。

04 – “ズンドコ節”
ドリフターズ + 笑点イズムを見事に継承し(?)、例の「ズンズン・ズンズン・ズンズン・ドッコ~♪」と歌うフックはもちろんそのままに、田我流から始まる軽快なマイクリレーが痛快な、YOUNG-G曰く「(小林)旭、ドリフ、(氷川)きよしよりズンドコ」な一曲!
「田村、うしろうしろ」、「なんだ馬鹿野郎」、「ちょっとだけよ」、「ダメだ、こりゃ」、「次、行ってみよう」等、後半にドリフネタで畳みかけるMMMヴァースも聴きもの!
ともすればギャグラップに振れてしまいかねない題材を、絶妙なサジ加減でタイトに仕上げたバランス感覚も見事だし、それをビジュアルでも表現してみせたMVは「死んだらどうなる」本編リリースと合わせて公開されて、作品の世界観を一発で知らしめた傑作だと思います。
ただ、LPもCD同様にイントロに寸劇有りのバージョンになっていますが、出来たらコレはMVのイントロ無しバージョンにしてほしかったかな…。

05 – “CM「おねり」”
ラジオCM風、箸休め的な一発ギャグ?
おねりとは、じゃがいもとかカボチャと、とうもろこしとか小麦を塩湯と混ぜた山梨の郷土料理で、特に一宮町付近で好んで食べられているそうな。

06 – “生でどう?”
YOUNG-G作のビートは、2000年代に隆盛を極めたアトランタ産バウンスビート~マイアミベースを模していて、彼の器用さを改めて確認できますが、そこへ乗ってくるメンバーの下ネタマイクリレーも含めてアトランタ産ヒップホップのオマージュ、という感じ。
田我流名義でリリースされた”やべ~勢いですげー盛り上がる”を、アトランタの南部マナーで作り直したような仕上がりと言えば、分かりやすい(むしろ、分かりにくい?)かも。
2015年のリリースツアーのタイトルになった一曲としてもお馴染みのはず。

07 – “宇宙旅行”
もっさりしたドラムブレイクで幕を開ける、SE飛び交うスペイシーなビートでタイトル通り、宇宙と交信するようなナナメ上の展開。
山梨に行こうとして突如地獄(“HELL TRAIN”)に飛ばされたかと思ったら、アトランタ(“生でどう?”)、次は宇宙旅行って、いちいちブッ飛んでますが、それが正に「死んだらどうなる」の世界観なんだと思います。

08 – “DIGITAL CURRY”
YOUNG-G作のビートは、ここではUKのインド~パキスタン系移民アーティストが生み出した、所謂バングラビートを模していて、オリエンタルな雰囲気を演出。
タイトル通りのカレー賛歌(?)ですが、同じようなトピックにPUNPEE”CURRY SONG”なんかも在るけど、カレーネタの純度(??)で考えれば本作に軍配!
STILLICHIMIYA周辺は、アルバムタイトルが「(ONE) PEACH」だったり、田我流も”ラーメン”って楽曲を残していたりと、食べ物ソングが多めの印象。

09 – “だっちもねぇ”(feat. 原田善照)
STILLICHIMIYAというクルーが世の注目を集めたきっかけとしては、SEEDA & DJ ISSOによる日本語ラップV.A.「CONCRETE GREEN 3」へ提供された”D.N.I.(だっちもねぇこんいっちょっし)”はハズせないと思うんですが、それこそが”だっちもねぇ”に参加した元祖甲州弁ラッパーこと原田善照の”だっちもねぇこんいっちょっし”のカヴァーだったわけで。
そんな縁から、ついに憧れのオリジネーターを召喚した”だっちもねぇ”は”D.N.I.”のアップデート版で、MC HAMMER”U CAN’T TOUCH THIS”を下敷きにした丁度イイぐらいの(?)ダサさ加減が絶妙!
YOU THE ROCKが”HOO!EI!HOO ’98″でレジェンド、PRESIDENT BPMを呼び寄せて、愛を込めて楽曲をリメイクしたように、STILLICHIMIYAもまた、彼等にとってのアイドル、原田善照を呼び寄せてリメイクを敢行したのは、彼等なりのケジメと言えるかもしれません。

10 – “路地にて”
本編、2つ目のスキット。
ハラちゃんと大盛り上がりした後は、いかにもCMっぽかった”CM「おねり」”とは一味違う、路地での一幕でクールダウン。

11 – “めんどくせぇ”
BIG BEN作のもっさりしたビートで、田我流とBIG BENとひたすら下世話で愚痴っぽいラインを投げ合う感じは、ちょっとだけ田我流”墓場のDIGGER”っぽい?
“だっちもねぇ”、(スキットを挟んで)”めんどくせぇ”と、敢えてフラストレーションを溜め込むことで次曲の清涼感がより際立っているような。

12 – “めっちゃええやん”
BIG BENが手掛けた耳当たりのいいメロディアスなビートに乗って、田我流が歌うフックも含めて作中屈指のポップな仕上がり。
YOUNG-G、フックマンに徹した田我流以外の3人が、MMM~BIG BEN~MR. 麿の順にキッチリと長めのヴァースを蹴る構成もニクい!
ラストのスクラッチパートまで聞き逃せません。

13 – “銃声”
“めっちゃええやん”の直後、突然の発砲…!
本国のマッチョ系ヒップホップ作品のスキットをイメージしたのか(?)、キャッチーな前曲の直後だからこそ、緊張感が増す感じ。

14 – “シャドウダンス”
で、続くのは(なぜか)SCATMAN JOHN”SCATMAN”なユルいコーラスをフックに据えた本作…。
1ヴァース目のMMMからして、どこか外人っぽいカタコト調のラップを披露していますが、次のMR. 麿は歌い出し、語るようにラップする田我流ほか、みんな自由奔放な感じ。
前曲からの流れについては、いまだに解明できず…!

15 – “竹の子”
“シャドウダンス”で頭の中に「?」が湧いたと思ったら、ド頭から「おーーーーーい、竹の子ーーーーー!」と呼びかける冒頭のクダリからして本作も理解不能!
アッパーなビートで終始、意味不明に騒ぎ倒すダンスチューンなんだけど、パーティーに理屈は要らないってこと?
そんな理屈をまた考えてしまってる時点で、もはや彼等の手の平なのか…!

16 – “CM「土偶」”
本編、最大の謎パート(?)を経て、次曲へのブリッジとなるラジオCM風のスキットが再び。

17 – “土偶サンバ”
スキットでキッチリとネタ振りした上で雪崩れ込む、タイトル通り(?)土偶ネタで一曲通したサンバラップ!
またしてもビートはYOUNG-G作で、バウンスビートにバングラビート、”竹の子”みたいなアッパーなものだったり、本作ではサンバビートまで手掛けてみせる彼の引き出しの数こそが、本作の多面性を大いにサポートしている気がします。
日本語ラップにおいては、そこまで多くはないサンバラップですが、ポチョムキン”おてもやんサンバ”と双璧を成す最高峰だと思います。

18 – “陸の孤島”
ラストを飾る”陸の孤島”は、アカペラの短編スキット。
「死んだらどうなる」自体が、2014年の冬の記録的降雪による交通遮断で”陸の孤島”となった時期に制作された、というのがMARY JOYの公式インフォにあるので、その時に実際に録られたものだと思うんですが、冒頭の寸劇から始まる本編を回収する内容になっているかは謎。
でもまあ、CD帯にある通り、「遊んでるだけ」だからこれでいいのか…!

改めて楽曲単位で細かく振り返ってみて、STILLICHIMIYAがクルーとしてのアイデンティティを保ったまま、本作以上の作品を今後リリースするのは現実的にかなり難しいかも、とも。
元々の起こりが、山梨県一宮町の合併反対に立ち上がった若者達のデモだったわけで、実際に合併が敢行されて10年が過ぎていた2014年時点で、すでに無き一宮町へのノスタルジックな想いだけを歌うにはもう時間が経ち過ぎていたし、「死んだらどうなる」の端々ですでに感じられる異国音楽への歩み寄り、恐らくは田我流が出演した映画「サウダーヂ」のテーマとも結び付いて、本作以降のクルーは「郷愁」というキーワードで断片的な活動を行うのみ。
2015年には、DJ KENSEIが手掛けたベストミックス「STILLICHIMIYAの流れ」もリリースされ、明らかに一段落して、2019年の田我流の3RDアルバム「RIDE ON TIME」にはついにクルーの出代も無くなり、今のところ、2019年に地元山梨で彼等が主催したイベント「KAMIKANE3000」のテーマソング的な”3000″が最後のリリースとなっています。


そう頻繁にじゃなくてもいいから、これからもまだまだクルーで遊んで、出来ればまとまった作品も作ってほしい、という願いを込めて。

STILLICHIMIYA_死んだらどうなる_CD
「わしらただ遊んでるだけや」BY DJ KENSAW(R.I.P….)

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