
表紙 – GANG STARR
表紙はGANG STARR、1998年4月号!
ジャケよろしく、同年4月にリリースされたGANG STARRの5THアルバム「MOMENT OF TRUTH」のタイミングに合わせて彼等のインタビューやディスクガイドを大軸として、他にもAV8やNERVOUS等で知られるトラックスのディスクガイドもあったりと、98年に発刊された全12号の中でも屈指の内容充実号!
DJ PREMIER、GURUはもちろん、DJ PREMIER仕事においてはしばしばセットで語られるエンジニアのEDDIE SANCHOにまでインタビューしてる(!)のは、けっこう貴重な気がします。
98年時点までにはなるけど、編集部周辺のライターやDJ、レコード店バイヤーなどが投票する形でDJ PREMIERベストワークのランキングも掲載されているんで、上位のみ一部抜粋。
第01位 – JERU THE DAMAJA”COME CLEAN”
FRONT – APRIL 1998
第02位 – GROUP HOME”SUPA STAR”
第03位 – GANG STARR”DWYCK”(feat. NICE & SMOOTH)
第04位 – GANG STARR”TAKE IT PERSONAL”
第05位 – GANG STARR”DJ PREMIER IN DEEP CONCENTRATION”
第06位 – NAS”N.Y. STATE OF MIND”
第07位 – NOTORIOUS B.I.G.”UNBELIEVABLE”
第08位 – GANG STARR”YOU KNOW MY STEEZ”
第09位 – GANG STARR”MASS APPEAL”
第10位 – GANG STARR”JAZZ THING”
今でこそ、ウェブメディアでもCOMPLEX(2013年公開)だったり、PLAYATUNER(2016年公開)辺りでも同趣向の企画がウェブ検索でヒットしたりしますが、その辺りのUSメディアと比較してみると、国内での人気や評価との違いが見えてきて面白いと思ってて。
そんな切り口で検証すると、上記の両企画とは明らかに違った味が出ているのはGANG STARR”DJ PREMIER IN DEEP CONCENTRATION”の第5位でしょうね。
ぶっちゃけ、KOOL & THE GANG”SUMMER MADNESS”ベタ敷きのビートに、DJ PREMIERのスクラッチを乗せたGURUのラップ無しのキャリア初期曲なんで、コレが上位にくるというのはだいぶ特殊のような(投票者のDJ割合が多かったから?)。
他にも、98年時点までのDJ PREMIER仕事を網羅したリストがあったり、DISCOGSがまだ存在していなかった時代には非常に資料性の高かった内容になっています。
トラックスガイドの方は、正直トラックスという「楽曲未満」と言っていいDJツールをここまで掘り下げているのは他の雑誌だと見たことないんですが、このニッチなニーズをしっかりとフォローしていることが逆説的に当時の購読者層を示している気がしてて。
故に、前述のDJ PREMIERベストワークスのランキングにおいても、”DJ PREMIER IN DEEP CONCENTRATION”が5位に選出されたのだろうと、妙に腹落ちしたり。
当時のハーレムのレギュラーDJ陣によるトラックス3選なんてミニランキング(コメント付き)も掲載されていたので、そちらもランキングのみ一部抜粋。
DJ MURO
・JAZZY B(FOR SOUL 2 SOUL)”LONDON BEATS”
・DOUBLE DEE & STEINSKI”LESSON 2″
・UNKNOWN”FUSION BEATS”DJ KEN-BO
・MASTERS AT WORK”GET UP”
・RUDE RYDIMS EXPERIENCE”EVERYBODY BOUNCE”
・KENNY DOPE(MAD PROJECT)”SUPA”DJ HASEBE
・KENNY DOPE”KLAP YOUR HANDS”
・CRAZY BUNCH”HERE WE GO”
・CROOKLYN CLAN MEETS DJ KOOL”CROOKLYN KOOL”DJ MASTERKEY
・KENNY DOPE(UNRELEASED PROJECT)”GET ON DOWN”
・KENNY DOPE(MAD PROJECT)”SUPA”DJ YUKIJIRUSHI
FRONT – APRIL 1998
・RUDE RYDIMS PRODUCTION”YOU COULD EVEN”
・MASTERS AT WORK”BLOOD VIBES”
・BEATNUTS”THAT’S THAT BEAT”
98年時点のランキングとはいえ、KENNY DOPE率高い…!
そう言えば、このぐらいの時期はDJ MASTERKEYがDJの営業でKENNY DOPE”GET ON DOWN”はマジでよくかけてたな~とか、他にもMUROが挙げてるのがトラックスっていうよりはカットアップものだったりしてDJごとのキャラクターが意外と出てて興味深かったり、色々と気付きがあります。
今回の巻中の日本語ラップ広告はカラーでDJ HASEBE「ADORE」に、YOU THE ROCK「ROCK THE POINT」、白黒でもNAKED ARTZ”巨塔 ’98″、GORE-TEX”WATER PROOF”、STILL-NAP”火に油”と、知った作品が犇めき合ってます。
日本語ラップが確かに盛り上がっていた時期だったんだなあ、と改めて。





日本語ラップ畑のインタビューはDJ HASEBEとDRUM METHOD。
前者はともかく、三木道三を長らく裏方としてサポートし、古くはDJ DOUBLE-Kとして関西シーンを盛り上げた故・山本克則の変名プロジェクト、DRUM METHODのインタビューは貴重。
三木道三の出世作として知られるミックステープ「MIKI-FM」、続編のミックスCD「MIKI-FM 1997ヘルス」についても少し触れられています。
DEV-LARGE連載 – THE WORLD OF BUDDHA BRAND
DEV-LARGEの連載「DEVLER NOW AND FOREVER/THE WORLD OF BUDDHA BRAND(コワスギルこわすぎる男の世界)」の本号のロゴはこんな感じ。

前月の3月号で原稿を落としちゃってたらしく、謝罪から入る今回は、本来は前回掲載するはずだった分と、NIPPSのインタビューを掲載。
5月号にはCQとDJ MASTERKEYでBUDDHA BRANDとしてインタビューされるテイをとってるんだけど、コレはNIPPSのソロ仕事を聞くからってことで、敢えてのピンなのかも。
ともかく、後の両者の決別が予想できない程、DEV-LARGEからNIPPSへの愛が溢れる内容になっていて微笑ましい限り。
注目すべき点をいくつかピックアップすると。
- EL DORADOの第1弾シングル、SUIKEN”THE SENSE”のB面”ISOTOPE”はDEV-LARGEプロデュース。曰く、「この曲はまじスイケンの詞とバッチリハマってて、俺のベスト・ワークに入るものになった」。
- DEV-LARGEがプロデュースしたV6の森田剛の楽曲に言及。曰く、「アッと驚くものになったと思う。ラップ指導がしんどかったけど、リズム感と飲み込みが早かったんで、限られた時間にかなりのことが出来た。まじ一緒に仕事してみて、ガッツのあるやつだと思ったね。見た目じゃわからんぜ全て、とか言っとくよ。ちなみに、ラップのパート録るのに3時間しかワクがなくて、その中であそこまで歌えたんだから大したもんだ」。言うまでもなく、「見た目じゃわからんぜ全て」は森田剛”DO YO THANG”からの一節の引用すね。
- NIPPSの”ISLAND”の、この時点でのタイトル候補が”BE SQUARE”、”CAN’T TOUCH THIS”で、どっちでも良かったとか。
最後、裏表紙(内側)はこんな感じ。
CDではキャリアで唯一、短冊シングルでリリースされたBUDDHA BRAND”REMIX(KRUSH GROOVE 4)”!
短冊シングルのジャケを流用したデザインだけど、色使いが渋い…!

振り返ってみて、やっぱり内容特濃…!
個人的に何度読み返したか分からないぐらい、数あるFRONTカタログの中でも特にフェイバレットな一冊なんで、興味のある方は是非オークションとか中古本屋で現物を探してみてください。
今なお、手元に置いておいて損はしない一冊だと思います。


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