追究 … 未知のものや不明の事柄を調べて明らかにしようとすること


A.K.I. PRODUCTIONS”SEX!OR DIE!”
(NUTMEG INTERNATIONAL/JPN 12″/NC-2027)
A-1 SEX!OR DIE!(ORIGINAL MIX)
A-2 SEX!OR DIE!(INSTRUMENTAL)
A-3 SEX!OR DIE!(A CAPPELLA)
B-1 SEX!OR DIE!(D.M.X MIX)
B-2 SEX!OR DIE!(D.M.X MIX)(INSTRUMENTAL)
B-3 SEX!OR DIE!(D.M.X MIX)(A CAPPELLA)
なんとなく、直近の黎明期の作品紹介の流れで、とりわけレアってわけでもない一枚も。
A.K.I. PRODUCTIONSと言えば、巨漢MCのA.K.I.の方に注目されがちですが(実際、後年はA.K.I.のソロプロジェクトになってるんだけど)、ILLICIT TSUBOIが在籍してデュオ体制だった頃の初期作は、好事家達の間では評価が高くて。
そんなデュオ期唯一の12″は、やや不気味な見た目のジャケのせいか(?)、あまり見掛けない割には高値で取引されることなく、必然的にレア盤認定(?)されることもない不遇な一枚だと思います。
BPM早めのバタついたビートに乗って、タイトルよろしくのド下ネタ、自身の性癖を押し付けてブッかけるが如くピストンしまくるような最低最悪のリリックは、もはや語り草。
日本では、いとうせいこうかMAJOR FORCEぐらいしか選択肢がなく、スチャダラパーがようやくメジャーデビューした頃、”改正開始”を歌(謳)うMICROPHONE PAGERすらまだ結成前の91年、このえげつないほどのハードコアスタイルがどれほど特異に聴こえたかは想像できません(もしくは、当時からスルーされてた…?)。
裏のREMIXはもちろんD.M.XことDUB MASTER X仕事で、妙に爽やかになったヒップハウス仕立てになっています。
日本ではまだ早過ぎた、と言ってしまえばそれまでなんですけど、実際に同年のシーンでリリースされた作品を並べてみると、こんな感じ。
| DATE | ARTIST | TITLE |
|---|---|---|
| 1991.01.15 | GANG STARR | STEP IN THE ARENA |
| 1991.04.25 | 高木完 | FRUIT OF THE RHYTHM |
| 1991.05.13 | DE LA SOUL | DE LA SOUL IS DEAD |
| 1991.07.23 | MAIN SOURCE | BREAKING ATOMS |
| 1991.08.13 | CYPRESS HILL | S.T.(CYPRESS HILL) |
| 1991.09.03 | NICE & SMOOTH | AIN’T A DAMN THING CHANGED |
| 1991.09.03 | NAUGHTY BY NATURE | S.T.(NAUGHTY BY NATURE) |
| 1991.09.24 | A TRIBE CALLED QUEST | THE LOW END THEORY |
| 1991.10.01 | PUBLIC ENEMY | APOCALYPSE ’91…~ |
| 1991.10.10 | スチャダラパー | タワーリングナンセンス |
| 1991.10.22 | BLACK SHEEP | A WOLF IN SHEEP’S CLOTHING |
| 1991.10.29 | ORGANIZED KONFUSION | S.T.(ORGANIZED KONFUSION) |
| 1991.10.29 | ICE CUBE | DEATH CERTIFICATE |
残念ながら、本作リリース日の詳細は特定できませんが、本国で言えばNAUGHTY BY NATURE”O.P.P.”とかA.T.C.Q.”CHECK THE RHIME”辺りと共に当時レコ屋の棚に並んだシーンを想像すると、本作の特異性が一層浮き彫りになる気がします。
ちなみに、リリース元のNUTMEG INTERNATIONALは、代々木の伝説的ライブハウス「CHOCOLATE CITY」が母体となっていたインディーレーベルで、レコードだと7″のDUB MASTER X”DUB WA CRAZY”シリーズで有名かもしれませんが、カタログには本作の他にもTOKYO NO.1 SOUL SETの最初期作だったり、ジャパレゲのCHIEKO BEAUTY作品等も遺されていて意外と侮れない感じ。
この機会に12″に遅れること2年、93年にリリースされたデビュー作「JAPANESE PSYCHO」(CD)の方も紹介しておきます。

A.K.I. PRODUCTIONS「JAPANESE PSYCHO」
(FILE RECORDS/JPN CD/23FR007D)
01 – 万事快調
02 – 子供奴隷時代
03 – 素晴らしき日本野球
04 – 虹の彼方に(OVER THE RAINBOW)
05 – 仏滅の朝に俺が殺した
06 – SEX!OR DIE!(性か!?死か!?)
07 – お前も今日から大衆だ
なんと、攻めまくった当時のままの内容でサブスク解禁されているという事実…!
“SEX!OR DIE!(性か!?死か!?)”は副題も付いて、ビートも差し替えた新テイクになっているんですが、12″収録の2バージョンよりもこっちのがイイのがむしろ少し残念…。
サイプレス上野ことLEGENDオブ伝説のオフィシャル・日本語ラップ・ミックス「LEGEND オブ FILE MIX」に収録されたのも、こちらのCDバージョンでした。
CDのブックレットには、若き日の2人の仲睦まじい姿が!


余談になりますが、2022年の最重要作品の一つ、OMSB「ALONE」に収録された”大衆”は、言うまでもなくA.K.I. PRODUCTIONS”お前も今日から大衆だ”のオマージュにして、原曲を手掛けたILLICIT TSUBOIがプロデュースした一曲。
93年にA.K.I. PRODUCTIONSメンバーとしてCDデビューを果たしたILLICIT TSUBOIと、89年生まれのOMSBでは、シーンで言うところの第〇世代みたいなカウントではどれだけ違うのか、もう分からない位ですが、そんな背景も知った上で”大衆”を聴くと、さらに違った感慨があるはず。
まあ、”お前も今日から大衆だ”の方は、不穏なビートの上で所謂「青い鳥症候群」を延々と𠮟りつけるようなリリックで、正直感動するようなタイプの楽曲ではないんだけど、色んな解釈の余地のある楽曲には違いないんで、それを何世代も離れたOMSBが独自解釈で最高にエモーショナルな形でオマージュしてみせたのは感動的だったし、日本語ラップ・シーンの本質的な意味でも成熟を感じた次第。

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