日本語ラップ VS【野球】

阪神タイガース VS オリックス・バッファローズという、59年振りらしい関西ダービーで大いに盛り上がった日本シリーズ。
7戦目までもつれた末、最後は阪神タイガースの、実に38年振りの優勝でついに閉幕ということで!
個人的には野球よりもサッカー派なんで、普段から野球中継も観ないし甲子園で野球観戦したこともないクチなんですが、それでも関西に住む一人として流石に完全スルーは難しい位の事態になってます。
そこで、普段はあまり野球に興味の無い店主のようなヘッズも、どうせなら知ったフリ(ACT LIKE YOU KNOW!)でこの祭りに参加した方が楽しいんじゃないかということで、無理やり日本語ラップの野球ネタ曲をピックアップしてみました。
余談ですが、サッカーだったらAKLO”サッカー”、バスケだったらZEEBRA、DEV-LARGE、TWIGY”PLAYER’S DELIGHT”とか、人気スポーツなら一曲ぐらいは日本語ラップでもまつわる楽曲があるかなって状況になってますが、そんな中、探してみれば野球はけっこう沢山在って、逆に日本における野球人気を改めて感じさせる結果になりました…!

アナログ(中心)で聴く、日本語ラップ VS 野球!

MURO_三者凡退

MURO”三者凡退”(feat. GORE-TEX)
日本語ラップで野球ネタといったら、誰もが挙げるであろうクラシック!
NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのGORE-TEXをいち早く見い出したことでも知られる一曲ですが、タイトルそのままの野球ネタで、「このラップゲームは直球勝負」という冒頭の一節に始まり、「世界の野茂が投げる変化球に対し」「カーブやらフォークは無用」「内角低めの直球勝負」「第2打者、空振り三振」等、MUROもGORE-TEXも終始テーマに沿ったリリックで通し切る、本テーマにピッタリ過ぎる仕上がり。
最も印象的な、例の「ピッチャー、ビビッてる(ヘイ、ヘイ、ヘ~イ)」の替え歌だったり、ラストには周辺メンバーを剛腕投手と敏腕投手、それぞれの枕詞でシャウトする展開があったり、野球ネタの楽曲としては本作でもってすでに極まってる気がしないでもない程、紛うことなき野球ネタ日本語ラップの金字塔。
当初は12″のみで96年に発表されましたが、翌年にバトルDJ系の音源リリースで知られるUSのBOMB HIPHOP RECORDSのV.A.「BOMB WORLDWIDE」に、UKのFUNKY DLやカナダのSWOLLEN MEMBERS等の音源と共に収録されたのは、それほど知られていないかもしれません(自身の作品にはベスト盤「BACK 2 BACK 2」に収録)。

SHIDA_外角低目

SHIDA(SEEDA)”外角低目”(feat. KLOW)
SEEDAがまだスペル違いのSHIDAと名乗っていた頃、99年のデビュー作「DETONATOR」に収録された一曲で、同作からのシングルとして12″も存在。
こちらもまだ若き頃のI-DEAがプロデュースしていて、ダミ声で粗ぶった主役のラップを好アシスト。
冒頭の一節「外角低目、ミット目掛けノーダウトのボール投げかけ、たどる軌道はファンキーファンキー、YO最後の最後バキバキ」からして全てを物語ってる気がしないでもないけど、他にも「あっという間にデカい弧を描く、溢れるパワー含むこの球」「この球イコール俺達の鉄砲、外角低目45度」等、タイトルよろしくの野球ネタを連発。
後半はKLOWとの掛け合いになってく展開なんで、楽曲としての勢いは尻上がりになってくんだけど野球ネタのメタファーは減っていく印象かな。
KLOWは、「DETONATOR」収録の”HOSHI”にも参加してるけど、当時のSEEDAのサイドキックだったのか(?)、両曲共にSEEDAに合いの手をバンバン入れてく感じで小気味良し。
その後の活動が分からないけど、元々サイプレス上野の友達の友達、らしい。

RIP SLYME_マタ逢ウ日マデ

RIP SLYME”完全試合”
DJ FUMIYAがジョインし、5人体制でメジャー移籍する直前、2000年のシングル”マタ逢ウ日マデ”の12″のB面曲に何気に野球ネタが…!
赤塚不二夫ジャケでブランディングからして(?)仕切り直すメジャー以降の展開を早くも予見させるような、DJ FUMIYA作の可愛らしいビートに乗って、終始野球ネタのリリックが楽しい感じ。
ヒップホップのアティチュードからして、他の楽曲でも野球ネタでは攻撃的なメタファーになりがちなところ、そこはRIP SLYMEのキャラクター性でほっこりと、メタファーと言うよりも本当に野球の話をしてる感じと言うか、ほぼ同じようなテーマと言えるMURO”三者凡退”とか茂千代”P.E.R.F.E.C.T.”とこんなにも曲調や切り口、ライムが違うのかと思うと、ヒップホップって面白いなと改めて。
フックでは「ファースト・セカンド・サード、一周してバックホーム」というフレーズが繰り返されるんだけど、これって”完全試合”で合ってる?

茂千代_BARELL SAMPLER EP

DJ KENSAW”P.E.R.F.E.C.T.”(feat. 茂千代)
当初はDJ KENSAW & DOPE EMCEEEZ名義でリリースした2005年のミックステープ作品「GLITTER ZOO」にライブ・テイクがお披露目され、その後2008年のDJ KAZZ-Kによる茂千代のベストミックス「茂千代MIX “THE BARREL~MIX TASTING”」についにスタジオ・テイクで収録された名曲(写真は、同作からのサンプラーEP)。
DJ KENSAW作のBPM早めの疾走感溢れるビートに、ヒップホップのゲームを野球に例え、”P.E.R.F.E.C.T.” = 完全試合ということで、「この手にかかる、スパッとストライク」「試すスライダー、おちょくるフォーク」「錆びてない、一人立つサウスポー」「踏ませんホームベース、踏み込むアウェー」「背番号06茂千代、これがド真ん中、よく見てみろ」等、キレまくったメタファーが炸裂しまくり。
そんな野球メタファーの合間、キングギドラ”大掃除”のZEEBRAヴァースの一節を引用した「お前の芯では捉えられなくて、ああ悲しくなるお前のスイング甘くて」なんてラインを忍ばせる遊び心も粋。
「GLITTER ZOO」のライブ・テイクはRHYMESTERの宇多丸(とライターの古川耕)が絶賛したことでも有名なんですが、音源としてはやっぱりスタジオ・テイクが自分は好み。

SHAKKAZOMBIE_SHAKKATTACK_表
SHAKKAZOMBIE_SHAKKATTACK_裏

SHAKKAZOMBIE”SHAKKATTACK”
OSUMI、HIDE-BOWIE、DJ TSUTCHIEからなる、SHAKKAZOMBIEの記念すべきデビューシングル。
当初は巨漢MCのOSUMIを和製FAT JOEに見立てて、ブチ切れた高圧力フロウを売りにしていた時期(?)で、本作も1ヴァースからトップギアのハイテンションで聴かせるOSUMIが「選手宣誓」や「リード、リード(リーリー)」と野球ネタもチラ見せ。
“三者凡退”ほどの決定打とは言い切れないまでも、野球ネタとしては引用し甲斐のある「リーリー」が良い味を出してると思います。
ちなみに、12″はセンターレーベルがDEV-LARGEのデザインということでも知られているはず。

キエるマキュウ_第三ノ忍者

キエるマキュウ”第三ノ忍者”(feat. DABO)
CQとDJ MAKI THE MAGIC(後年にはILLICIT TSUBOIも合流)によるキエるマキュウは、そのグループ名の由来が野球漫画「巨人の星」に登場する大リーグボール2号の別名にも関わらず(?)、持ち歌には野球ネタはほぼ無いんで扱いが難しいけど、無理やり一曲挙げるなら99年のコレか。
まだデビュー前だったDABOをいち早くフックアップしたことで有名なんで、ビートも特別仕様に切り替わり、タイトル通りの第三の勢力として降臨するかのようなDABOの3ヴァース目の格好良さにどうしても耳が惹かれますが、その前のMAKI THE MAGICヴァースの冒頭「俺は直球勝負、投げる球カーブ」は、短いながらもキエるマキュウのグループとしてのスタンスを端的に示したパンチライン!
後年、MAKI THE MAGICを追悼したV.A.「MAGIC MAGIC MAGIC」に収録された、RHYMESTER & KOHEI JAPAN”MAKI-IZM”のフックで使用されたことでもお馴染みかと。

ZEEBRA_FIELD OF DREAMS_PROMO

ZEEBRA”FIELD OF DREAMS”(BEAT PARK ANTHEM)
クラシック”STREET DREAMS”のDJ CELORY作のビートに乗って、ダブ的に作られたヤクルト・スワローズと神宮球場の応援歌という変わり種。
2005年、フリースタイルブーム以前の時期にプロ野球チームの公式応援歌をZEEBRAが歌っていたというのは、今となっては少し意外な気も。
リリックはほぼ全編書き直して、客演のG.K. MARYANと共に「9回裏でも信じればきっと勝つ」「バッター、ピッチャー、投げた、打った、ランだ」等、ちょい無理やり気味に野球ネタをブチ込んでいます(ちなみに、この「ランだ」は「乱打」と掛かってる模様…)。
ノベルティーソング的な意味合いもあるせいか、オリジナルアルバムに収録されていないため、けっこう忘れがちかもしれませんがプロモのみながら12″は存在しています。

A.K.I. PRODUCTIONS JAPANESE PSYCHO

A.K.I. PRODUCTIONS”素晴らしき日本野球”
ここからはCD/配信も少しだけ。
まだシーンの黎明期だった93年、超ハードコアなスタイルで登場したA.K.I. PRODUCTIONS(若き日のILLICIT TSUBOIが在籍)のデビュー作「JAPANESE PSYCHO」収録の一曲。
タイトルは皮肉で、古き良き野球界の伝統を強烈に批判するような内容なんで、関西ダービーに湧く今のムードとは最も縁遠い楽曲かもしれませんが、それでも一曲まるまるの野球ネタっていうのはそんなに多くないんで、まあ、こんなんも在ったよなと。

OZROSAURUS_THIS IS MY ERA

OZROSAURUS”THIS IS MY ERA”
横浜ベイスターズとのタイアップ曲!
元々は2017年のチームのスローガンだった「THIS IS MY ERA.」のイメージ動画のBGMのみで使用されるはずだったのが、反響を受けて一般にも配信リリースされることになったのだとか。
昔から横浜をレペゼンしてきたOZROSAURUSが、地元のチームである横浜ベイスターズと絡むのは何ら違和感が無く、「横浜ナメたら只じゃ済まさない」等のパンチラインも自然に響く感じ。
成り立ちが完全なノベルティーソングなんで、一般の日本語ラップ・リスナーにはやや印象が薄い気もしますが、当時はチームのホームである横浜スタジアムでもライブで披露される等、むしろ横浜ベイスターズのファンにお馴染み?

CREEPY NUTS_パッと咲いて散って灰に

CREEPY NUTS”パッと咲いて散って灰に”
2023年の春の選抜、高校野球の公式テーマソング!
ハッキリとした野球ネタじゃないけど、フックの「春の風吹き荒れる土壇場で」ってところだけで春の選抜のテーマソングになった?
まあ、若者の背中を押すような応援歌ではあると思います。

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