
表紙 – RAKIM
表紙はRAKIM、1997年12月号!
もちろん、ERIC Bとのコンビを解消して初のソロ作となった97年の「THE 18TH LETTER」のリリースのタイミングで実現したRAKIMのインタビューがメイン!
正直、そんな長尺じゃないのが残念なんだけど、それを補う意味なのか(?)、元相棒のERIC B(!)、RAKIMの魅力を語るってことでMUROとDEV-LARGEの対談(!!)が掲載されてて、読み返してけっこうビックリする感じ。
余談だけど、ERIC Bにシレッと「RAKIMとのリユニオンは有り得るか?」で聞いてて、「ないね」とバッサリ切り捨てられてるの悲しいすね…。
確かに2025年をもって実現してないし、今後もないんでしょうな。
特集 – RAKIM THE MICROPHONE FIEND
というわけで、ERIC B & RAKIM時代の4枚のアルバムと関連作品をピックアップ。
その流れで、特集ってわけじゃないけどオールドスクーラー繋がりで、EPMDの当時のリユニオンを受けてERICK SERMONのインタビュー、その中の「COMMONはドープだけで闘うには十分じゃない」という発言(話の流れで名前が出ているだけでディスではない)を受けて、COMMONの3RDアルバム「ONE DAY IT’LL ALL MAKE SENSE」を読み解くコラムが続く紙面構成がニクい…。
こういうミックステープ的と言うか、連想性みたいなことはフィジカルでやる方が更にブーストが掛かる気がして。
ウェブメディアでもリンクで繋いでいくのはもちろん可能だけど、そっちだと当たり前過ぎて感動は薄いし。
で、続いてBUSTA RHYMES、LL COOL Jと大物のインタビューを経て、DJ SPINNAとDJ CELORYの対談も!
当時DJ SPINNAとDJ CELORYは親交が深くて、お互いのグループをプロデュースし合ったりもしてて、日本語ラップグループが海外プロデューサーのビートを貰うケースはあっても、海外グループに日本人プロデューサーのビートが採用されるケースはほぼ無かったから(今でも少ない)、五分の付き合いをしてる感じがして、妙に誇らしかったのを覚えてて。
余談だけど、それだけにDJ SPINNAが2019年にリリースしたお蔵入りビート集「1997 BEAT TAPE」に、SOUL SCREAMに提供した”VIBE”のビートを、普通にタイトル変更して”MOOG LUST”として収録してたのは、ちょっと驚いたな…(もう提供したこと自体を忘れちゃってたのか、日本限定リリースだったから世界的には未発表と判断して敢えて出したのかは謎だけど)。
で、気になる彼等の出会いは、紙面によればDJ CELORYの初期仕事としても知られるO.C.”WORD…LIFE”(REMIX)がきっかけだとか。
元々、同REMIXはO.C.の1STアルバム「WORD…LIFE」の日本盤CD(MARY JOY発!)のボーナストラック扱い、12″も国内盤のみだったから海外には殆ど届いていなかったと想像するんだけど、その手腕に興味を持ったDJ SPINNAの方からのアプローチだったことが明かされています。
対談の最後、JIGMASTAS”ALL DAY”のリリース予定がアナウンスされていたりして、こういうのは話が盛り上がっても結局はリップサービスで実現しないケースも当時多かっただけに、実際にリリースもされたことが、結果的に彼等のリアルな関係性を示していた気がして嬉しかったんすよね。
ちょっと長くなっちゃったけど、これは今でも読み応えのある良い対談かと。
続いて、DJ KRUSHとDJ VADIMの対談も。
この頃は、まだまだ国内と海外の距離が遠く、アーティスト間の繋がりも希薄だったはずだから、当時紙面を通して数々の対談や引き合わせ(インタビュアーとか)を積極的に行っていたFRONTのシーンへの貢献は、やはり大きいと感じます。
さらに、”天運、我に有り”でトヨタのCMを勝ち取った(!)BUDDHA BRAND(すでにNIPPSは脱退済み)、続いてT.A.K THE RHYMEHEADのインタビューまで!
後者は”表裏一体”のリリース記念なんだけど、思えばT.A.K THE RHYMEHEADのキャリアで最も多作だった時期が95〜98年頃だったのでは、と。
いや、和モノばかりを集中的にネタ使いしたコンセプチュアルな「CITIZEN OF THE WORLD」(T.A.K THE RHHHYME名義)や、RIMA GREEN作品は置いといて、あくまでT.A.K THE RHYMEHEADとして。
最初のソロEP「THE WORDS」、続く「韻力」、そして「表裏一体」に周辺アーティストへの客演参加、T.O.P RANKAZ作品ほか、この時の勢いでもしもアルバムまでリリースしてくれていたなら、間違いなく玄人筋が唸る作品になっただろうから悔やんでも悔やみ切れないわ…。
自身の作品をほぼほぼセルフプロデュース、高確率でジャズの良いネタを使っててセンスが良過ぎた人だけに、正直ライト層へのウケはあまり良くなかったから、このインタビューも貴重な気がします。

本号は広告はリリースの谷間だったのか、ほぼ無し。
当時、チョクチョク見掛けたSPELLBOUNDのレーベル広告が表紙裏に!
DEV-LARGE連載 – THE WORLD OF BUDDHA BRAND
DEV-LARGEの連載「COREすぎるコワすぎるズルムケな男の世界(毎回タイトルがけっこう違う!)」の本号のロゴはこんな感じ(豪華に2つもあるのは11月号で原稿を落としたから、でしょうな…)。


本号では(11月号の原稿を落としているせいか)「質」をテーマに濃密にアツい意見を書かれていて。
正直この頃ともなると月1連載の執筆すらかなりタイトだったようなので、これぐらいの濃ゆい内容が読めるのならむしろ2ヶ月に一度で良かった気もするけど(今更過ぎだが)、とは言え、やはりDEV-LARGEの連載が読めたのは本当に貴重だったな…。
個人的に今また刺さる一節を引用させていただきたい。
これはレコードの話なんだけど。俺はOne for all, All for oneだと思うんだ。何かしら出したもんがワックだったら、それ全体が落ちると思うんだ。今そういう事をキッチリやんなきゃいけない時期だと思う。
(中略)
質の低いレコードのリリースは全体の足を引っ張ってると思うし、出したアーティストの為にもならないと思う。ブームに乗ってまだまだな奴が今出すより、あと何年か鍛えてモノホンになってから出る方が双方の為になる、と俺は思う。今時は犬でもネコでもレコードを出せる勢いだ。レーベル側の人間もよく吟味しな、とか言っとくぜまったく。
またしてもレコードがトレンドとなっている2020年代、嫌な感じでリリース数が増えている状況に当時を重ねる部分もあって、妙に引っかかる話題で。
SDGsな時代、売らんかな精神は時代錯誤だとも思うし、そもそも続かない気がするから、皆が「質」を今一度考える時期に来ているのでは、とも。
うーむ、考えさせられる…。
裏表紙はVICTORのMDコンポだけど、その中面はなんとT.A.K THE RHYMEHEAD「表裏一体」!
くどいようだけど、T.A.K THE RHYMEHEADのアルバム、やっぱり聴きたかったよ…。


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