ショップのリニューアルオープンより数日、ようやく落ち着いてきました。
前回の入荷情報記事はフランス人MC、NAPOLEON DA LEGEND(NDL)のレコードでしたが、今回は遅ればせながら国内で横浜184045、サ上とロ吉ことサイプレス上野とロベルト吉野の関連作品(多数!)。
サイプレス上野ご本人が当ブログを読んでいただいたそうで、氏の過去作品の記事についてSNS経由でコメントを貰ったのをきっかけに、店主が無理を言って過去作含め関連作品をこの度、取り扱わせていただく運びになりました(サイプレス上野さん、ありがとうございます)。




サイプレス上野とロベルト吉野「夏の扉の過ごし方」
(-/JPN CDR/-)
01 – 夏の過ごし方
02 – フレッシュ×3(夏の扉2006)
03 – 休日ダイヤ(33の5.5カラットいきなREMIX)
04 – 1PAC
往年の手焼きCDRスタイル(曰く、デズリー=手刷り)にまず涙…!
ジャケットに「ほぼUNRELEASED HYPE」とある通り(?)、自身のオリジナルアルバムには未収録のままになっていたV.A.やミックス作品提供曲、ライブ物販限定曲(後に自身のオンラインショップでも販売)に完全未発表デモ(!)まで集めた、夏っぽい全4曲収録。
中ジャケの「PEACE VINYL DEALER」の文字に号泣…!!

全曲レビュー
01 – “夏の過ごし方”
以前の記事で紹介済みなので楽曲の詳細はここでは割愛しますが、内輪の話で恐縮ながら、実はこの度のCDRへの収録は当ブログ記事がきっかけで。
元々はDJ 49の夏曲ミックス「GOOD TIMES MEMORY 01」にエクスクルーシブとして収録されていた楽曲ですが、サイプレス上野本人が存在を忘れてて(!)、音源も失くしてしまったそうでお持ちじゃなく。
そこで前記事で紹介したCDRはミックスされていない音源だったので、そちらをお送りして晴れて今回のリリースと相成りました(大汗)!
まさか、アーティストご本人に音源提供(返し?)する日が来るとは想像してなかったですが、ブログも書いてみるもんだし、いちファンとして大変貴重な経験をさせてもらった気がします。
ちなみに、僭越ながら当店の希望として、”夏の過ごし方”と次曲の”フレッシュ×3(夏の扉2006)”の両面夏曲で7″化を伝えたところ、今回のCDRの反響次第では、ひょっとしたらひょっとするやもしれないとのことなので、ただただ期待して待ちたいと思います…!
02 – “フレッシュ×3(夏の扉2006)”
こちらも前回記事で詳細は紹介してしまったので詳細は割愛しますが、元々サイプレス上野本人も気に入っていたという、2006年の横浜勢のV.A.「RE:YOKOHAMA」提供曲。
自身で、なんと一日で組み切った(!)というマッシュアップ感覚のネタ使い/ビートにニヤリ!
いかにもアイデア一発、という感じではありますが、逆にその粗挽き感覚がフレッシュで、若さ故の勢いが最高!
ネタ使いが危な過ぎるのは承知の上ですが、どうにか原曲をサンプリングしたオリジナル・バージョンのまま7″化まで突っ走ってほしい…!
03 – “休日ダイヤ”(33の5.5カラットいきなREMIX)
4曲中で唯一、今回が蔵出しという一曲ですが、内容の方は”LET’S GO 遊ぼうZE”のREMIX的(と言うか、コレがオリジナル・バージョン?)。
“LET’S GO 遊ぼうZE”はK-MOONこと現GRADIS NICEが手掛けたネアカでポップなビートが印象的でしたが、恐らくはサイプレス上野自身が手掛けたと思しきこちらは、もっとシンプルな装飾で、いかにもデモっぽい感触。
サイプレス上野本人曰く、実際かつてBLAST誌で連載されてたデモ紹介コーナー「HOME BREWER’S」でお馴染みの古川耕と磯部涼しか聴いていないデモ音源なんだとか…!
04 – “1PAC”
トリを飾る”1PAC”は元々ライブ会場の物販限定の1曲入りシングル(1COIN DEMO SINGLE!)で、タイトルは本国の伝説的MC「2PAC」、さらに「わんぱく(腕白)」とも掛かってる?
楽曲自体は2016年頃に出回ったものですが、昭和版の”ドラえもんのうた”を使用したビートはどこかキャリア初期の「ヨコハマジョーカーEP」や「ドリーム」辺りの作品を彷彿させ、他3曲と同じ流れで聴けるものの、しっかり時代に合わせたトラップ仕様なのがまた奇天烈なバランス。
なんと言うか、サ上とロ吉の型破りなキャラクター性は、これぐらいブッ壊れたビートで大きな化学反応が起こる印象があって。
メジャーレーベルのKING RECORD傘下、EVIL LINE RECORDS(ももいろクローバーZやヒプノシスマイク辺りとレーベルメイト!)所属ということでサンプリングは権利関係のハードルが高いでしょうが、本作のようなエッジが立った試みは(危なくない程度に)今後も続けていってもらいたいと思う次第。
ちなみに、原盤のシングルにはインストとアカペラも収録されていましたが、こちらはラップ入りバージョンのみ。
折角なので、この機会にサイプレス上野とロベルト吉野関連の特典やレア音源もいくつか紹介しておきます。

サイプレス上野とロベルト吉野”GET MONEY(借)”
自主制作の「ヨコハマジョーカーEP」とデビュー作「ドリーム」間に、カクバリズムからショットでリリースされた7″。
子門真人”およげ!たいやきくん”のソウルネスに着目してネタ使いするセンスに、同じくデビュー当初に”太陽にほえろのテーマ”を2枚使いしてみせたスチャダラパーを重ねざるを得ませんが、そんな両者が2010年代に入り、MELODY FAIRで同じ釜の飯を食うことになろうとはさすがに当時は誰も予想しなかったはず(しかも、同時期からサイプレス上野とロベルト吉野はめでたくLB NATION入りも果たしています)…!
フックにDOUBLE X(DOUBLE XX POSSE)”MONEY TALK”、そしてT.A.K THE RHYMEHEAD”偽装工作”(「行ってらっしゃい、帰ってこいよ」!)を使用した、USヒップホップと日本語ラップと和モノのチャンポン感覚は、彼等の今後の方向性をすでに示していたわけで、正にデビューシングルで原点と言える一曲かと。
裏には、ロベルト吉野のスクラッチが主役になる、後に続編もリリースされる”契り(外伝)”を収録していて、A/B面共に「ドリーム」には未収録でした。

サイプレス上野 WITH 謎・みっちゃん”サルト・モルタル2008″
サイプレス上野と、珍しく表に出てきたZZ PRODUCTIONの最終兵器、謎・みっちゃんによる一曲。
そもそも原曲が分からないんですが、”サルト・モルタル”の2008年版(?)ということで、タイトル通りのプロレスネタに分かる人はニヤリ、分からない人には多分一生分からないであろうリリックである意味、とても特典向きと言えるかも。
京都のレコード店、JETSETの10周年記念のノベルティーで制作されたEP「JETSET 10TH ANNIVERSARY BEST」にのみ収録された珍曲!
ちなみに、JETSETのクリスマス時期にこちらも制作されたノベルティーEP「HAPPY HOLIDAY OF JETSET」にも、(こちらは既発曲ですが)”ロメロスペシャル(つり天井)”を提供していたんで、JETSETとはプロレス技で縁がある(?)ということでしょうか。

サイプレス上野とロベルト吉野”サ上とロ吉”
続いて、こちらもJETSETのノベルティーで制作された7″で、2009年の2NDアルバム「WONDER WHEEL」のCDリリース時に購入特典として配布されたもの。
後にDISK UNIONからアルバム本編が2LP化したため、”サ上とロ吉”のオリジナル・バージョンそのものの旨味は薄れてしまいましたが、それでも7″はこの形のみ、インストの収録は貴重かと!
元々ジャケ無しの硬派な仕様もいかにもプロモっぽくて、ファンなら持っておくべき一枚だと思います。

DREAM RAPS「BEST OF DREAM RAPS」
サイプレス上野が高校生の時に組んでいたというグループ、DREAM RAPSのデモテープ音源集。
12曲 + 写真の2NDプレスにはボーナストラックを追加した全15曲(!)というフルサイズのボリューム感で、若さ故の粗削りながらも初期衝動のままに撮り切ったようなフレッシュさが青くもアツい!
野球ネタのリリックが面白い”眼球にブチ込む超魔球”(= “眼球にめり込む超魔球”!)はDA.ME.RECORDSのV.A.「月刊ラップ VOL.8」に提供されたりして、学生時代ながらも品質は保証付き。
個人的には、1STプレス盤のトリを飾ったボッサ調のビートで歌うようなリラックスしたラップが心地良い”DREAM HOLIDAY”が好みで、当時からよく聴いていた記憶があります。

ZZ PRODUCTION「184.045STYLE MAD SAMPLER 2006..」
2010年に惜しまれつつ閉店してしまった横浜のレコード店、DISC WAVEにて配布(?)されていたらしい、ZZ PRODUCTIONクルーのサンプラー的EP。
ここにはサイプレス上野とロベルト吉野として”アツメノお湯ソレハ熱湯”/”ロメロスペシャル”の2曲を提供していますが、両方共に「ドリーム」に収録されたことを思うと、そこまでの希少価値はないものの、その他のとりわけクルー内でも公式音源が少ないことで知られる(?)DEEP SAWERの”モグラ”、EPの「ORANGE & BLUE INVITATION」にも収録されなかったひそかに人気のソロマイカー、ORGANの”SMILE”はここでしか聴けない音源だったりして、クルー単位の作品としてはなかなかの貴重品と言えるかも。
もちろん、両曲共にZZ PRODUCTION名義の「ZZ」にも未収録でした(リリースされた2010年時点では、ORGANはクルーからも脱退していた模様)。


BLAST”未来は暗くない(THE NEXT)”
これはちょっと趣きが違うけど、かのBLASTの2007年5月に発刊された最終号に付属していた特典CD。
ANARCHY、SEEDA、COMA-CHI、SIMONと共にサイプレス上野が参加し、これからの日本語ラップシーンの未来を歌った記念碑的マイクリレーが感動的な一曲。
DJ CELORYのオフィシャル・ミックス「BEATS LEGEND 2」やDJ JINのオフィシャル・ミックス「THE GROOVEMENT – JAPANESE HIPHOP MIX」をはじめ、公式/非公式でいくつかのミックス作品には収録されたものの、フル尺のテイクは長らくこの形のみだったため一時はやや希少化していた気がしますが、2020年にR-RATED RECORDSのYOUTUBEチャンネルで公開されたのが話題に。
以降、オークション等での高騰は落ち着いた印象ですが、その後に動画は非公開になり、サブスクにも解禁されておらず、依然聴きにくい音源とは言えると思います。
サイプレス上野”サ上、死んだってよ。”
最後がディス曲なのはどうかと思ったんですが、もう時効だろうと(ドリーム開発のチャンネルにも公式でアップされてるし)!
当時REV3.11にフックアップされ、若手MCの有望株の一人だったDODOが突如ネットに公開した”サ上死ね”へのアンサーソングで、先のディス曲にしっかりとアンサーを返していくリリックにフリースタイルバトルでのサ上のスタイルとも通じるものがあって興味深い内容。
さらにDODOからもう一発アンサーが返ってきたけど、サ上からの返答は無しでバトルは終息。
まあ、”サ上、死んだってよ。”での横綱相撲を聴く限り、確かにこの一曲で十分だった気はします。
ただ、DEV-LARGEとK-DUB SHINEのディス以降、ネット上でバトルが勃発することは珍しくありませんが、大体終息したり和解したら公式チャンネルなんかからは外されることが殆どだけど、このラリーに関してはいまだにお互いの公式で聴けるという珍しいパターンで現在に至っています(DODOの方はYOUTUBE動画は削除されていますが、BANDCAMPは健在)。
後の2020年、「ニートTOKYO」で当時のことを振り返っている回があったので載せておきます。
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