小沢健二「LIFE」 – #np 2024.08.31

本日8月31日は、小沢健二の2NDアルバム「LIFE」の、まさかのLP再発リリース日(2024/08/31)!
そもそも30年前の94年の今日がCDリリース日なんだけど、30年越しでまさかオリジナルのアナログ・マスターテープからリマスタリングして再発されることになろうとは…!
30年、音楽を好きでいて本当に良かった、そんな思いでリマインドします!

小沢健二_LIFE_LP_表
小沢健二_LIFE_LP_裏

小沢健二「LIFE」
(UNIVERSAL MUSIC/JPN LP REISSUE/PROV-7015)

A-1 愛し愛され生きるのさ
A-2 ラブリー
A-3 東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー)
A-4 おやすみなさい、仔猫ちゃん!
B-1 ドアをノックするのは誰だ?(ボーイズ・ライブ PT.1:A CHRISTMAS STORY)
B-2 今夜はブギー・バック(NICE VOCAL)(feat. スチャダラパー)
B-3 いちょう並木のセレナーデ
B-4 ぼくらが旅に出る理由

言わずもがな、90年代を席巻した(?)渋谷系のド真ん中、オザケンこと小沢健二のクラシック!
そもそも渋谷系というジャンルと言うか、そこにカテゴライズされる人達は、やはり小沢健二と小山田圭吾によるフリッパーズ・ギターやピチカート・ファイヴの印象が強いけど、広義では(?)スチャダラパーとかTOKYO NO.1 SOUL SET辺りも含まれていたわけで。
小沢健二とスチャダラパーがジョイントした”今夜はブギー・バック”の他にも、同時期にMUROのソロ初期シングル”STREET LIFE”をピチカート・ファイヴの小西康陽が手掛けていたりだとか、渋谷の宇田川町のレコード文化と共に在った日本語ラップとは親戚だったと言っても過言ではないかなと。
というわけで、ラップでこそなくても、ビートの方はとてもヒップホップ的だった「LIFE」は、日本語ラップのヘッズからしても当時から注目すべき一枚だった、はずで。
まだ10代だった店主も、”今夜はブギー・バック”を入口に、しっかりリアルタイムで通ったのを思い出します。
ちなみに、ジャケはもちろんSLY & THE FAMILY STONEの同名作のデザインを引用してます。

全曲レビュー

A-1 “愛し愛され生きるのさ”
イントロのJOAN ARMATRADING”BAREFOOT AND PREGNANT”から引用したカッティングギターのリフからして勝負有り!
確実にヒップホップ的なアプローチを意識しつつも、ブラックミュージックだけをネタにしてるわけじゃないから、必ずしも黒い仕上がりじゃないとこも、(特に90年代だと)ヒップホップ漬けだった店主には聞こえが新鮮で。
不意に飛び出す「10年前の僕等は胸を痛めて、”いとしのエリー”なんて聴いてた」というラインは当時から印象的で、サザンオールスターズへのリスペクトが込められてるんだとか。
サザンオールスターズも子供の時から好きで聴いてた店主には、それも含めて刺さった思い出。

A-2 “ラブリー”
“今夜はブギー・バック”と共に、本作「LIFE」の象徴にしてオザケンにとっても代表曲と言える一曲!
当時、MARY J. BLIGE”REAL LOVE”のREMIXの方ばかり聴いてた店主は、この特徴的なギターのリフが同じくBETTY WRIGHT”CLEAN UP WOMAN”を引用していたことに気付かず、少し後になってハッとした思い出。
カラオケで歌う際には7分超え(!)の長丁場になるので注意されたし。
“ラブリー”は当時12″でもリリースされてて、「LIFE」のLPほどではないにせよ、そちらも久しく人気盤!

A-3 “東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー”
フックのコーラスこそGILBERTO GIL”DE BOB DYLAN A BOB MARLEY, UM SAMBA PROVOCACAO”を引用していますが、演奏はオザケンとの関わりは深い東京スカパラダイスオーケストラによるもの。
ラテンっぽいリズムに、いかにも渋谷系という感じのヴォーカルの立ち振る舞いがクール。

A-4 “おやすみなさい、仔猫ちゃん!”
CDでは実質的にラストに収録されていた一曲だけど、LPではオリジナル同様にA面トリに配置(多分、片面の収録時間の兼ね合いかと)。
1STアルバム「犬は吠えるがキャラバンは進む」収録の”天使たちのシーン”を彷彿させるようなミディアムでそっちの13分強(!)には劣るものの、こちらも7分半の長尺曲。
MFSB”SMILE HAPPPY”を引用しています。

B-1 “ドアをノックするのは誰だ?”(ボーイズ・ライフ PT.1:A CHRISTMAS STORY)
ヴォーカルのメロディーでJACKSON 5″I WILL FIND A WAY”を引用しているのは有名ですが、ビートの雰囲気はERIC KAZ”COME WITH ME”に似てるという話も。
どこかキラキラした雰囲気は確かにクリスマスっぽいんだけど、春夏秋冬の一年を通してラブソングで、大サビのクリスマスに「たぶん、このまま素敵な日々がずっと続くんだよ」と歌う展開にもグッときます。
ちなみに、タイトルはMARTIN SCORSESEの長編映画から。

B-2 “今夜はブギー・バック”(NICE VOCAL)(feat. スチャダラパー)
EAST END + YURI”DA.YO.NE”と共に、お茶の間に日本語ラップを響かせた大クラシック!
EN VOUGUE”GIVE IT UP, TURN IT LOOSE”とコード進行が一致しているため、一時期はネタ説が根強かったものの、後にスチャダラパーのANIが否定してるんで真相は…?
明確なネタというよりは雰囲気ですが、同時にNICE & SMOOTH”CAKE & EAT IT TOO”風とかも言われてて、NICE VOCALとSMOOTH RAPという2バージョンの名前の付け方からして、こっちは確信犯的なところかと(小沢健二のNICE & SMOOTH好きは有名)。
小沢健二とスチャダラパー、当時同じマンション(ブギーバックマンション!)に住んでいたという両者が、邦楽で言うところの郷ひろみ”林檎殺人事件”なんかを意識して、「コラボ珍曲」を狙ったという”今夜はブギー・バック”が歴史に残る一曲になった、というのがなんとも彼等らしい気もして、そんな逸話も含めて最高!
日本語ラップにカテゴライズされる楽曲としては、現在に至るまでダントツでカヴァーされまくってきて、それはある意味で数多くのアーティストからのラブコールでもあったと思うんですが、オリジナルから30年の時を経てリリースされた公式の続編”ぶぎ・ばく・べいびー”の存在も記憶に新しいところ。

B-3 “いちょう並木のセレナーデ”
タイトルからして原由子の同名曲のオマージュ。
アコースティックな雰囲気もそのままに、一部の歌い回しも意図的に寄せてるんで、そこら辺含め如何にオザケンがサザンオールスターズをリスペクトしてたかが窺い知れるかと。
CDにはオルゴール(?)でメロディーをなぞったREPRISEバージョンがアウトロ代わりに収録されていましたが、LPでは省かれています。

B-4 “ぼくらが旅に出る理由”
LPでラストを飾るのは、PAUL SIMON”YOU CAN CALL ME AL”と”LATE IN THE EVENING”をダブル使いした”ぼくらが旅に出る理由”!
自分自身のターニングポイントや人との別れなどのタイミングで耳にしたなら涙すら禁じ得ない切ない一曲だけど、ただ悲しいだけじゃなくて最後にはちゃんとポジティブな気持ちに着地させてくれるのがまた良き。

最後に。
今なおオザケンの代表作として語られることも多い「LIFE」、もちろんクラシックだし、故に30年を経ての今回の再発があったわけだけど、今回また聴き返して、渋谷系の良い部分だけを切り取ってパッケージしたような、そんな奇跡的なバランスと改めて感じた次第。
恐らくはオザケン自身も(スチャダラパーとの邂逅も経て)ヒップホップ的な手法に最も積極的だった時期、渋谷系そのものの盛り上がりと若さ故の勢いほか、タイミングも含め様々なエッセンスが重層的に盛り込まれたが故に名盤と成り得たのだなと。
たった2年後、96年の3RDアルバム「球体の奏でる音楽」で、もう飽きたとばかりヒップホップ的アプローチを一切捨ててしまったのは当時残念に思ったけど、同じアプローチで「LIFE」以上の作品はもう作れないと思ったとすれば、まあ納得できなくもないか。
それでも、サンプリングのクリアランス問題もまだそこまでじゃなかった96年なら、もう一度「続・LIFE」的な作品がもしも在ったらどんなだったのか、興味は尽きないですが。
個人的には「プレ・LIFE」的な作品と位置付けている1STアルバム「犬は吠えるがキャラバンは進む」は未LP化作品のままなんで、いつかこっちもリマスターしてLP化してほしいもんですな。
BOOKER T & THE M.G.’S”MELTING POT”を引用した”カウボーイ疾走”や、CURTIS MAYFIELD”TRIPPING OUT”を引用した”天使たちのシーン”をLPで聴ける日を待っています…。

折角なので、”今夜はブギー・バック”(12″)と、今年にその続編としてリリースされた”ぶぎ・ばく・べいびー”(CD)も載せておきます。

スチャダラパー & 小沢健二_今夜はブギー・バック

スチャダラパー & 小沢健二”今夜はブギー・バック”
(SONY MUSIC/JPN 12″/15FR-017)

A-1 BOOGIE BACK(SMOOTH RAP)
A-2 BOOGIE BACK(LIVE AT BIG EGG?)
A-3 BOOGIE BACK(SMOOTH INSTRUMENTAL)
B-1 BOOGIE BACK(NICE VOCAL)
B-2 BOOGIE BACK(MEANWHILE BACK AT THE PARTY)
B-3 BOOGIE BACK(NICE INSTRUMENTAL)

「SPECIAL LIMITED VINYL EDITION」と銘打った12″は、CDではそれぞれの名義で別でシングルになったスチャダラパー版の”今夜はブギー・バック”(SMOOTH RAP)と、小沢健二版の”今夜はブギー・バック”(NICE VOCAL)の2テイクを収録した両A面仕様!

スチャダラパー & 小沢健二_ぶぎ・ばく・べいびー

スチャダラパー & 小沢健二”ぶぎ・ばく・べいびー”
(UNIVERSAL MUSIC/CDS/TYCT-30145)

01 – ぶぎ・ばく・べいびー
02 – ぶぎ・ばく・べいびー(INSTRUMENTAL)
03 – おまけのおしゃべり30分

“今夜はブギー・バック”から実に30年、当時は原曲がここまでのクラシックになる本人達も思ってなかっただろうし、当然続編をリリースすることになるのも想像すらしてなかったはず。
数ある”今夜はブギー・バック”カヴァーをはじめ、やけのはらと七尾旅人”ROLLIN’ ROLLIN'”、PUNPEEが客演したORIGINAL LOVE”グッディガール”等、この30年間「”今夜はブギー・バック”的」と呼ばれるものは沢山在ったけど、以降は楽曲で直接絡むことは無かった本家のスチャダラパーと小沢健二が再びタッグを組んだ正統な続編は、やはり特別感が段違い…!
「”ブギー・バック”かかるナイトクラブで~」とか「あの頃だって、あの頃はって言っていた~」とか歌うオザケンの歌詞もイイけど、スチャダラパーは1ヴァース目は90年代、2ヴァース目には70/80年代の名曲やらヒット曲を多数歌い込んだ技有りのリリックをキック。

この元ネタ探しがすでに楽しいんで、(サブスクで見つかる範囲のみですが)プレイリストも付けておきます。

7″でも12″でも何でもいいから、コレは絶対にアナログ化してほしい案件…!
こっから30年と言わず、”今夜はブギー・バック”から30年目の2024年中に、どうかお願いします!

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