ZEEBRA「THE RHYME ANIMAL REMIX EP」 – VINYL DEALER的日本語ラップ追究【27】

追究 … 未知のものや不明の事柄を調べて明らかにしようとすること

前回から全く脈略は無いんですが、無理やりなこじ付けでZEEBRAのバースデーバッシュってことで(1971/04/02)!
キングギドラでの活動休止を経て、満を持してのソロデビューとなった98年の「THE RHYME ANIMAL」は、グループでの「空からの力」ほどではないにしても、90年代の数ある日本語ラップ作品の中でもアルバム単位での完成度が非常に高くて、アルバム制作のお手本的名盤の一つとしていまだに愛され続けているのは事実かと。
そもそもLP化もしてて、2020年には(念願の!)CDジャケ仕様での2LPも再発されたりと、日本語ラップのアナログ派には何かと馴染み深い作品なんですが、意外とそういう層もスルーしてるのがREMIX EPの存在なのでは、となんとなく思った次第…!

ZEEBRA_THE RHYME ANIMAL REMIX EP1

ZEEBRA「THE RHYME ANIMAL REMIX EP 1」
(POLYSTAR/JPN CD/PSCR-5723)

01 – ORIGINAL RHYME ANIMAL(MR. DRUNK REMIX)
02 – I’M STILL NO.1(NUMERO UNO RE-RECORDING)(feat. TONY TOUCH)
03 – I’M STILL NO.1(ORIGINAL VERSION)
04 – 未来への鍵(OSAWA’S REALIZED MIX)(feat. AKEEM DA MANAGOO, BIRD)

「THE RHYME ANIMAL」からほぼ半年、98年の年末にリリースされた1枚目のEPは”ORIGINAL RHYME ANIMAL”/”I’M STILL NO.1″/”未来への鍵”の3曲を題材した4曲のREMIXを収録。
2枚目に比べると、リミキサーもヒップホップ寄りなメンツを招集しています。

全曲レビュー

01 – “ORIGINAL RHYME ANIMAL”(MR. DRUNK REMIX)
「THE RHYME ANIMAL」でのソロデビュー以前に、MAKI & TAIKI”末期症状”やDJ HASEBE”ICE PICK”、DOHZI-T(童子-T)”流儀”辺りでコンビネーションを聴かせてきた盟友、MUMMY-Dをリミキサーとして迎えた”ORIGINAL RHYME ANIMAL”で幕開け。
こちらも、本編ではイントロだった”密林都市入口”を除けば実質的に1曲目だった同曲からスタートするというのは、なかなかにニクい演出だと思います。
ココでのMUMMY-Dはラップは無し、ビートの方は恐らくはJUNGLE BROTHERS”HOW YA WANT IT WE GOT IT”を踏まえたNORMAN CONNORS”THE CREATOR HAS A MASTER PLAN”をブツ切りにしたビートを提供しています。
原曲のINOVADERS仕事ほどではないにせよ、不穏な空気感はそれ譲りな仕上がり。
長らくこの「THE RHYME ANIMAL REMIX EP 1」でしか聴けなかったものの、後にキャリア初のベスト盤「THE FIRST STRUGGLE」に収録されたんで、どうやらけっこう気に入ってた様子。

02 – “I’M STILL NO.1″(NUMERO UNO RE-RECORDING)(feat. TONY TOUCH)
続いてはBOOGIE DOWN PRODUCTIONSの同名曲のカヴァー的な一曲”I’M STILL NO.1″のREMIX。
KRS-ONEが呼べなかった、ということなのか(?)、(なぜか)ニューヨークからDJ/MCの二刀流で知られるTONY TOUCHを迎え、TONY TOUCH作のビートの上で、TONY TOUCHのラップにZEEBRAが英語と日本語の二ヶ国語で絡むラップが聴きもの。
サブタイトルはもちろん、BOOGIE DOWN PRODUCTIONSの原曲を意識したものですが、さすがにそっちと同じくTITO PUENTE & HIS ORCHESTRA”JUMPIN’ WITH SYMPHONY SID”とは同ネタではないので、あしからず。

03 – “I’M STILL NO.1″(ORIGINAL VERSION)
で、3曲目にはなぜか”I’M STILL NO.1″を「THE RHYME ANIMAL」からそのまま再録…。
“I’M STILL NO.1″(NUMERO UNO RE-RECORDING)とA/B面で12″を出してる流れもあるんでしょうけど、このREMIXとの対比は別に要らなかったような…。
GROVER WASHINGTON JR.”TELL ME ABOUT IT NOW”に、MOHAWKS”THE CHAMP”を塗したビートに、フックにKRS-ONEの声ネタを乗せた派手な作りは分かりやすくて、確かにシングル向きでした!

04 – “未来への鍵”(OSAWA’S REALIZED MIX)(feat. AKEEM DA MANAGOO, BIRD)
1枚目のEPのトリを飾るのは、MONDO GROSSOの大沢伸一の仕事で、AKEEM DA MANAGOOに加えて、新たにフックにBIRDを迎えた豪華REMIX!
BERNARD WRIGHT”MUSIC IS THE KEY”を使用したオリジナル・バージョンに通じる質感ではありますが、BIRDのフックのパートが追加されたことでだいぶ印象は違っててR&B調。
こちらも”ORIGINAL RHYME ANIMAL”(MR. DRUNK REMIX)同様、後に「THE FIRST STRUGGLE」に収録されました。

ZEEBRA_THE RHYME ANIMAL REMIX EP2

ZEEBRA「THE RHYME ANIMAL REMIX EP 2」
(POLYSTAR/JPN CD/PSCR-5737)

01 – 未来への鍵(SKULL CUT MIX)(feat. AKEEM DA MANAGOO)
02 – I’M STILL NO.1(THIS IS THE JOURNEY INTO THE FUTURE SOUND MIX)
03 – SMOKIN’ AT THE LOBBY(YOUR TURN)(MAGIC MASHROOM MIX)
04 – 真っ昼間(REMIX)

続いて、年を跨いだ99年に届いた2枚目のEPは、”未来への鍵”/”I’M STILL NO.1″/”SMOKIN’ AT THE LOBBY”/”真っ昼間”の4曲をそれぞれREMIXした4曲入りで、より他ジャンルとの異種格闘技を意識した内容。
90年代後半~00年代は、ZEEBRAが日本語ラップのアイコン的に異ジャンルとのコラボレーションにも精力的だった時期なんで、そんな流れの延長線上の一枚と考えると納まりが良いかと。

全曲レビュー

01 – “未来への鍵”(SKULL CUT MIX)(feat. AKEEM DA MANAGOO)
DJもこなすZEEBRAなんで確実に意図的だと思うんだけど、1枚目からの続きで”未来への鍵”のSUPER BUTTER DOGの竹内朋康によるREMIXからスタート。
綺麗めに仕上げていた大沢伸一REMIXやオリジナル・バージョンとは全く違うロッキッシュな仕上がりですが、コレはコレでなかなかの力作!
竹内朋康にとっては、後のMUMMY-Dとのマボロシ結成に繋がっていくんだろうし、ZEEBRAにとってはDRAGON ASHとの合体を予見させる動きの一つでもあるという意味で、今にして考えると深い顔合わせだったりするのかなと。
アクセント的に入ってくるALPHONZE MOUZON”FUNKY SNAKEFOOT”のドラムのフィルは、BEASTIE BOYS”SHAKE YOUR RAMP”を踏まえたものなんだろうし、そんなイメージで再構築したんだろうと思われます。

02 – “I’M STILL NO.1″(THIS IS THE JOURNEY INTO THE FUTURE SOUND MIX)
すでにお腹いっぱい感がしないでもない”I’M STILL NO.1″ですが、続いてはベテランDJの小林径によるREMIX。
「THE RHYME ANIMAL」のスキット”視点”のビートを素材に、ブレイクビーツ化したような作りはちょっと謎なんですが、ラップ入りながら隙間に多彩な展開とオカズを挟み、オリジナル・バージョンから2分も引き伸ばした6分弱の長尺曲に再構築しています。
副題にもある通り、GEOFFREY SUMNER”TRAIN SEQUENCE”の声ネタを使用してるんで、恐らくはERIC B & RAKIM”PAID IN FULL”(SEVEN MINUTES OF MADNESS)のCOLDCUT仕事を意識していたんでしょうね。
惜しむらくは、流れで聴くとGEOFFREY SUMNERの声ネタ使いが前曲と被ってることか…!

03 – “SMOKIN’ AT THE LOBBY(YOUR TURN)”(MAGIC MASHROOM MIX)
3曲目は、「THE RHYME ANIMAL」本編ではラップ無しのスキットだった”SMOKIN’ AT THE LOBBY(YOUR TURN)”をBOREDOMSのヤマタカEYEがREMIX!
OSCAR PETERSON TRIO”THE GIRL FROM IPANEMA”を使用したオリジナル・バージョンから、南米辺りに迷い込んだかのような副題のタイトル通りのトリッピーな仕上がり。
ラップが無い分(?)、一番ムチャクチャにできた感じかと…!

04 – “真っ昼間”(REMIX)
2枚のEP展開のトリを飾るのは、STEADY & CO.の前身となるKJこと降谷建志とDJ BOTSによる”真っ昼間”のREMIX!
STEADY & CO.メンツではコレが初仕事だったようなんで、ここからDRAGON ASH”GRATEFUL DAYS”での蜜月からパクリ騒動に発展した”SUMMER TRIBE”、そして最終的にはキングギドラ”公開処刑”での決別にまで至ることを思うと、”SUMMER TRIBE”以前のエピソード0的な意味で、この邂逅こそが全ての始まりだった気さえ。
で、内容がまたDRAGON ASH”GRATEFUL DAYS”の明らかに前哨戦的で、同じくSMASHING PUMPKINS”TODAY”を(こちらは恐らく弾き直しで)使用してるっていうのが、また因縁めいてて(“SUMMER TRIBE”のパクリ元も”真っ昼間”だと言われてるし)。
ZEEBRAのKJディスをいまさら詳しく掘り返すつもりはないですが、DRAGON ASH”GRATEFUL DAYS”はいつか7″とかで再発してほしいんで、そのためには出来たら和解してほしい…。
2020年代に入って、ZEEBRAからKJへの歩み寄りもみられ、ZEEBRAサイドの”真っ昼間”(REMIX)はサブスク解禁されてるわけだし、あとはDRAGON ASHサイドが応えてくれれば、もしかしたら…!

改めて、キングギドラ”公開処刑”に至る経緯を調べたら、それまでにZEEBRA側は警告するような意味合いでDJ OASISに客演した”ハルマゲドン”辺りでもサブリミナルに何度かディスしてたみたい。
当時この辺りの音源はリアルタイムに追ってたはずだけど、全く気付かなかった…。

ZEEBRA_THANX_OFFICIAL BOOTLEG REMIXES

ZEEBRA「THANX(OFFICIAL BOOTLEG REMIXES)」
(POLYSTAR/JPN PROMO TAPE/XI-2013)

A-1 真っ昼間(KARIANG MIX)
B-1 未来への鍵(REMIX)(feat. AKEEM DA MANAGOO)

最後にオフィシャル・ブートレグ(?)と銘打たれた、98年のプロモテープの方も!

全曲レビュー

A-1 真っ昼間(KARIANG MIX)
“真っ昼間”のREMIXはクレジットこそZEEBRA名義ではあるものの、レゲエのKARIANGレーベル(=N.K.M=NAKAMA RACING CREW絡みか?)のサポートを受けたであろう、思いっきりレゲエに振り切った仕上がり。
MONTY ALEXANDER”LOVE AND HAPPINESS”の一瞬のフレーズを使用した、DJ KEN-BO作のオリジナル・バージョンもどこかルーディーなビートだったけど、派手さはなくてもこっちの方が「BOB(MARLEY)の歌かなんか口ずさみ~」なんてリリックはハマッて聴こえる感じ。
ZEEBRA名義でのベスト盤「THE FIRST STRUGGLE」への収録は見送られたものの、FUTURE SHOCKの5周年記念V.A.「SHOCK TO THE FUTURE 97-01」にひっそりと収録されてデジタル化してるんでアレですが、それ以外ではスルーされてきています。
ジャパレゲ勢との絡みも多いZEEBRAですが、自身のソロでレゲエに仕立てたこちらは、初出がプロモテープだったせいか、意外と知られていない気がします。

B-1 未来への鍵(REMIX)(feat. AKEEM DA MANAGOO)
REMIXED BY INOVADER!
ZEEBRA自身の手によるオリジナル・バージョンに、大沢伸一、竹内朋康に加えて、実は盟友INOVADERもひっそりとREMIXしていたという事実…!
恐らくはいまだ、このテープのみで終わってるREMIXなんですが、確かに聴けばそれも分かる、前述のバージョンと比べると、いやINOVADERの仕事の中でも相当地味な仕上がりなんで、ベスト盤とかで他のバージョンを蹴ってまで収録するのは確かに違うかもと、入れ所が無かったのもどこか理解できるような…。
ただ、ビートはシンプルだけど、フックではT.A.K THE RHYMEHEAD”銀河探検鬼”のパンチライン「掴んだら、放すなマイクロフォン」を擦ってたりして、中毒性の高い燻し銀の仕上がりではあると思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました