MICROPHONE PAGER「DON’T TURN OFF YOUR LIGHT」 – #np 2023.07.25

本日7月25日は、調べてみるとMICROPHONE PAGERの1STアルバム「DON’T TURN OFF YOUR LIGHT」のリリース日で(1995/07/25) 。※CDのリリース日
後の「S.T.(MICROPHONE PAGER)」は編集盤なので、TWIGYとの2トップ体制で再結成した第2期と言える2009年リリースの「王道楽土」と共に、MICROPHONE PAGERの数少ないオリジナルアルバムという扱いになっています。
95年と言えば、さんぴんCAMP開催よりも前の時期で、単独名義でアルバムを出せるアーティストがまだまだ限られていた時代でしたが、そんな中で翌年リリースのキングギドラ「空からの力」やYOU THE ROCK「THE SOUNDTRACK ’96」辺りと共に、90年代中期の日本語ラップ名盤として歴史に刻まれたクラシック。
TOWER OF POWER「EAST BAY GREASE」を流用したジャケはLPサイズがあったら最高過ぎたんですけど、残念ながらLPはプロモすら存在せずCDのみのリリース(ちなみに、イラストはTWIGYが描いたんだとか)。
曲数が少なくて、本作からカットされた2枚の12″にほぼ全曲入っちゃうんで、そもそもLPの存在意義が薄かったせいでしょうけど、残念ながらレーベルとしてもそこまで力は入れてなかったってことなのかもしれません。

MICROPHONE PAGER_DON'T TURN OFF THE LIGHT

MICROPHONE PAGER「DON’T TURN OFF YOUR LIGHT」
(FILE/JPN CD/25FR-027D)

01 – 病む街
02 – 七転八倒
03 – 東京地下道(feat. RINO, GAMA)
04 – GIVE YA CHILL
05 – RAPPERZ ARE DANGER
06 – 夜中の番長と君
07 – DON’T TURN OFF YOUR LIGHT(89TEC9 MIX)
08 – DON’T TURN OFF YOUR LIGHT
09 – RAPPERZ ARE DANGER(MICHIEVOUS MIX)
10 – DON’T TURN OFF YOUR LIGHT(INST)

“DON’T TURN OFF YOUR LIGHT”と”RAPPERZ ARE DANGER”はオリジナル・バージョンとREMIX(更に前者はオリジナル・バージョンのインストも)が収録されていて、どうにかアルバムサイズに間に合わせた感のある、実質的には全7曲のEPサイズ。
92年の結成当初に在籍していたP.H. FRONはすでに脱退、その他メンバーのMASAO、DJ GOは当時はまだ在籍していたとも抜けていたとも言われてて真偽の程は定かではないですが、リリース当時にはグループ自体がほぼ活動休止状態だったらしいんで、タイトな収録内容はその辺りの事情が絡んでいると思われます。
ただ、収録曲はいずれもクラシック揃いで、本作と「S.T.」に収められた90年代の音源を聴けば、彼等が伝説的グループと言われる所以がきっと分かるはず…。

全曲レビュー

01 – “病む街”
DJ MAKI THE MAGIC(DJ MAKI名義)が手掛けた、SHAMEK FARRAH”FIRST IMPRESSIONS”を使用した真っ黒いビート、阪神大震災の神戸をイメージしたというリリックも含めた不穏な雰囲気が、正に90年代中期頃らしい空気感。
第1期のMICROPHONE PAGERと言えば、やはり”改正開始”のイメージは強いですが、次点はこの”病む街”という人が多いのでは。
後に続編となる”病む街 PT.2″は、MURO、TWIGY、RINOの3名がそれぞれのソロ作で展開、続いてPT.3ではなく”病む街 3000″をOMEN44がリリースしたりと、いまや”病む街”という看板がMICROPHONE PAGERを離れて一人歩きしている状況になっています。
ちなみに、本作には未収録ながらMUROの盟友、LORD FINESSEによるREMIXも存在していますが、やはりオリジナル・バージョンの出来には及んでいないと思います。
細かいんですが、”病む街”のみコ・プロデュースがグループ名義ではなくて、MUROとTWIGYというクレジットになっているんで、プロデュースもメンバーのDJ GOでなくDJ MAKIだし、恐らくは本編の楽曲の中でも後期に制作されたであろうことが予想できます。

02 – “七転八倒”
ビートはDJ GO、MASAOをヴァースもあるんで、本編において4人体制のMICROPHONE PAGERとして実質的な一曲目。
ノークレジットながら、GIL SCOTT-HERON & BRIAN JACKSON”WE ALMOST LOST DETROIT”を使用したイントロでRINOがTWIGYを呼び込んで、MCCOY TYNER”IMPRESSIONS”を使用した不穏なビートへと雪崩れ込む展開が渋い!
TWIGY~MURO~MASAOへとマイクがリレーされ、アウトロではDEV-LARGEやMASTERKEY、キングギドラ、LAMP EYE、G.K. MARYAN、DJ KRUSH、DJ YAS、DJ HAZU、DJ WATARAI等、錚々たる面々の名前をシャウトアウト。
たまたまかもしれませんが、よく聴くと先行のTWIGYはMC中心、後攻のMUROはDJ中心に名前を挙げているのも、MUROがDJ活動に注力していく後のキャリアを考えると少し興味深い気がします。
CDのブックレットは誤植で、クレジットが”東京地下道”と入れ替わっているんですが、現在展開されている各社サブスクサービスでは誤った内容で公開されています…残念。
スクラッチはDJ WATARAIの仕事。

03 – “東京地下道”(feat. RINO, GAMA)
続く3曲目は、LAMP EYEからRINOとGAMAを迎えた実質的MUROのソロ曲。
とは言え、プロデュースはDJ GOなんで、グループ活動の延長線上の楽曲ではあるものの、RINOが1ヴァース目から自身等の”暗夜行路”なんかの曲目も読み込みながら、キレまくったラップを披露していて、主役のMUROが喰われちゃってる気も…。
締めのGAMAも頑張ってるんで、どちらかと言うとLAMP EYEが目立ってる東京賛歌。

04 – “GIVE YA CHILL”
MICROPHONE PAGERと言うと、どうしてもMUROとTWIGYの2トップが目立ちがちなんですが、個人的には本作や”一方通行”でド頭から勝気なヴァースをキックするMASAOのイメージも強くて。
本作でも「止まれ、壊れたダンプカー」という名フレーズを残していて、あまり言及されていない気がするけどECDが”TOKYO TOKYO”で引用したのも恐らくはここから。
冒頭からDJ WATARAIが擦る、BIZ MARKIE”NOBODY BEATS THE BIZ”の「COME ON AND ADMIT YOU WAS THRILLED, CHILLED」のフレーズもハマり過ぎ。
MASAO~TWIGY~MUROへと展開するマイクリレー、合唱/ガヤ系のフック、スクラッチネタのチョイスも含め、完璧に90年代中期的イメージで最高!

05 – “RAPPERZ ARE DANGER”
浮つきまくりのDONNY HATHAWAY”LITTLE GHETTO BOY”を使用したDJ GO作のビートで、MURO~TWIGY~MASAOと回るマイクリレーがタイト。
TWIGYヴァースに一瞬入って、また戻るような展開もスリリングだし、MASAOヴァース後に飛び出す空耳フック(超えろ = GO AND ON)も含めて、”GIVE YA CHILL”と共に第1期のグループの魅力が詰まった一曲だと思います。
“七転八倒”よろしく、再びアウトロで当時のシーンの面々へのシャウトアウトが入るんですが、その前のメンバーの部分で、ちゃんとP.H. FRONの名前も挙がっているのが泣けます…。
余談ですが、DJ MASTERKEYがV.I.P. INTERNATIONALと組んだミックステープ「V.I.P. HI-POWER 5TH ANNIVERSARY」で、DEV-LARGEとSUIKENがカヴァーしていたのはあまり知られていないかもしれません。

06 – “夜中の番長と君”
“GIVE YA CHILL”~”RAPPERZ ARE DANGER”の流れが本作最大のハイライトになっているのは間違いないと思うんですが、続くのはTWIGYの実質的ソロ曲。
BEAT KICKSとしてデュオを組んでいた名古屋時代からの盟友DJ HAZU作の、BPM70台のもっさりとしたビートでTWIGYのトリッキーな自由形フロウが堪能できます。
ここまで遅いビートで、逆に倍のリズムで乗らずに5分半も持たせてしまうTWIGYのラップ巧者振りは流石。

07 – “DON’T TURN OFF YOUR LIGHT”(89TEC9 MIX)
タイトル曲は、STRETCH ARMSTRONG作のREMIXから。
ジャジーな落ち着いたビートに乗って、MASAO~TWIGY~MUROと回すマイクリレーに、「灯り消すな!」と繰り返す合唱系フックは紛うことなきMICROPHONE PAGER節なんですが、個人的には本編の他の楽曲と比べると飛び抜けて出来がイイってほどではない気がしてて。
ただ、やっぱりこの時期にSTRETCH ARMSTRONGのビートでやることの価値を感じさせるように(?)MASAOヴァースではわざわざ名前をシャウトしていたりもするんで、D.I.T.C.勢やDJ PREMIER等と組んだNEXT LEVELのV.A.「NEXT LEVEL RECORDINGS VOL.1」、スチャダラパーのREMIX盤「CYCLE HITS」辺りと共に、90年代の残された日米合作曲として歴史的に意義深い作品には違いありません。

08 – “DON’T TURN OFF YOUR LIGHT”
続いて、DJ GOが手掛けたオリジナル・バージョンを収録。
こちらもジャジーなビートではあるけど、MASAOヴァースは無しでマイクリレーもTWIGY~MURO、ラップ自体も撮り直してるんで「灯り消すな!」のフックのみで、もはや別の楽曲と言えるかも。
何気に、12″化したのはREMIXの方のみで、こちらのオリジナル・バージョンはCDのみ(12″のセンターレーベルのクレジットにREMIXと書いてないんで、ちょいややこしい)。

09 – “RAPPERZ ARE DANGER”(MICHIEVOUS MIX)
“RAPPERZ ARE DANGER”の、SOULS OF MISCHIEF/HIEROGLYPHICSメンバーとして知られるA-PLUSによるREMIX。
こちらは基本的に途中までラップはオリジナル・バージョンと一緒なんですが、MASAOヴァースの後半からREMIXだけの展開で一瞬だけMUROとTWIGYも再登場、加えてイントロ/フックは恐らくA-PLUSとSOULS OF MISCHIEFの面々がラップ/ガヤを担当してて聴き比べると面白いんだけど、さすがにオリジナル・バージョンが良過ぎたか。
地味にタイトルよろしく、KRS-ONE”RAPPAZ R.N. DAINJA”でお馴染みの”O.C.”TIME’S UP”の「RAPPERS ARE IN DANGER」のフレーズが擦られているのはREMIXだけだったりします。
こちらのスクラッチはDJ WATARAI仕事じゃないみたいなんで、恐らくSOULS OF MISCHIEF周辺メンバーが担当してると思われますが、本国では(この時期に)このテーマであればやっぱりコレだろって感じだったのかな、と。

10 – “DON’T TURN OFF YOUR LIGHT”(89TEC9 MIX)(INST.)
STRETCH ARMSTRONG作のREMIXのインスト。
90年代中期頃は、STRETCH ARMSTRONGがBOBBITOとのコンビで、ラジオでまだブイブイいわせてた時期なんで、STRETCH仕事のREMIXならインストも入れとくかって感じか?
だったとしたら、日本での当時のSTRETCH人気が伺えるような気もするんですが、せめて本編の10曲目の締めがインストの新曲だったら聴き終わりの印象は少し違ってたんだろうけど、コレをアウトロにお開きにする構成には、やっぱり曲数稼ぎの間に合わせ感が拭えないような。
ただ、12″はEP仕立てでラップ入りのみだったんで、インストの収録はCDのみ。

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