日本語ラップ VS【夏歌】

2023年も夏本番、お盆直前ってことで、いかにも夏らしい定番曲のプレイリストを用意しました。
芸人のラップとか、妄想したクルーV.A.とかってよりは軽いタッチなんで、お盆休みのBGMにしてもらえたら幸いです。

アナログで聴く、日本語ラップ VS 夏歌

STRUGGLE FOR PRIDE_EP_表
STRUGGLE FOR PRIDE_EP_裏

01 – やけのはら”SUMMER NEVER END”
ソロ名義での2010年のデビュー作「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」は、アルバムまるごと「あの夏」みたいなテーマで終始ノスタルジックな一枚なんでハッキリ言って全曲挙げたいぐらいなんですが、イントロ代わりの冒頭曲はかつてSTRUGGLE FOR PRIDE名義で2006年に12″でリリースされた”SUMMER NEVER END”(REMIX)のリメイク。
やけのはらはラップではなくポエトリーリーディングでの参加ですが、それがまたノスタルジック…。
「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」バージョンはCAROLYN FRANKLIN”SUNSHINE HOLIDAY”を使用したドリーミーなビートはそのままに、原曲に忠実に再録したようなテイクになっています。
いつ聴いても「あの夏」に戻れる気がする最高のイントロ。

太陽の残像 夏の匂い 当たらない天気予報 真夜中のショウタイム 現れた正体
奪われた俺の退屈 真っ赤な目をした友達 夜飛ばして 奥を走って どうにか辿りついたぜ
過去も未来も 見れなければ見上げるかうつむくか
思い出は熱いトタン屋根の上 アイスクリームみたいに溶けていった 
俺達が見ている景色が夢だとしたら 最高にアホらしくて笑えて スリル満点の夢にしよう
一瞬のまやかしだとしても 錯覚や幻想だとしても 信じていたいと思える何かを見つけたんです
この夏はきっと終わらないって なんとなくそう思った
YOU WON’T CRY AT THE SUMMER END, SUMMER NEVER END まだ寝ません

やけのはら”SUMMER NEVER END”

余談ですが、「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」からは12″でEPが2枚出たのみでLP化はしていないため、そっちのテイクのアナログは存在してないんで、写真はSTRUGGLE FOR PRIDE盤を。

かせきさいだぁ_じゃっ夏なんで

02 – かせきさいだぁ”じゃっ夏なんで”
日本語ラップで夏歌って言ったら、90年代からスチャダラパー”サマージャム ’95″か本作は絶対入ってくるんで、もうずいぶん前から食傷気味なはずなのに、それでもイントロや中盤に入ってくる虫たちの鳴き声のSEを聴くと、今でも「あの夏」に一気に引き戻される気がします。
「遠くから聞こえる祭囃子」「キミの浴衣姿」「祭りに向かう人並みの中」「カランコロン鳥居潜り」とか、学生時代にクラスメイト達と行ったあの頃の地元のお祭り感がひたすらノスタルジック。
なぜか、長らくGROVER WASHINGTON JR.”JUST THE TWO OF US”ネタというガセ情報が定着してましたが、GARY BURTON & STEPHANE GRAPPELLI”BLUE IN GREEN”を(早回しで)使用しています。
ソロデビュー作「かせきさいだぁ≡」頃の話をENDURAのウェブインタビューで語っていたので、一部抜粋。

ファーストアルバムの『かせきさいだぁ』ははっぴいえんどのヒップホップ版に挑戦した作品です。セカンドアルバムの『SKYNUTS』はティン・パン・アレーのヒップホップ版を作りたかった。シティポップスをヒップホップで表現できるかに挑戦しました。周りもすごい!と言ってくれて。
ところが、売れなかった。レコード会社に「かせきさいだぁはもう終わった」と言われるほど。これはちょっともう無理だなと。僕のやろうとしていることを誰もわかってくれていない。サードアルバムの話も出たんですけど、わかるわけがないだろうと。セカンドでわからなかったのにもっと進めるつもりよ?と思って。一応デモテープも作って、レーベルの人がいろんなレコード会社に持ち込んでくれたんですけど、どこにもこんなの出せない、って言われたそうです。本当に諦めましたね。

ENDURA – INTERVIEW「間違ったことをやればいい – かせきさいだぁ #ヒップホップアーティスト」 – https://www.endura.tokyo/interview/739

V.A._CHECK YOUR MIKE_PROMO LP

03 – TONEPAYS”苦悩の人”
メンバーのかせきさいだぁが95年のソロデビュー作「かせきさいだぁ≡」でも再演してますが、ここでは敢えてスチャダラパーのBOSEの実弟、光嶋崇ことFAKE-T、DJのナイチョロ亀井と組んでいたラップグループ、TONEPAYS名義での原曲の方を。
V.A.「CHECK YOUR MIKE」の正規盤LPには何気に未収録で、プロモLPにのみ収録されていました。
はっぴいえんど”風をあつめて”を使用しているのは再演版同様、実質的にかせきさいだぁのソロ曲なのも一緒なんですが、少しぎこちないFAKE-Tとのユニゾンが聴けたり、ナイチョロ亀井が手掛けたビートも展開が少し違っていたりして、こっちの方がアオハル感が強い気がします。
リリックは少し重たいんだけど、思春期特有の考えちゃう状態を歌詞にしたって言うか、キミドリ”自己嫌悪”的と言うか、そんな感じ。
「アビィ・ロード風に歩こう、アビィ・ロード風に歩こう、アビィ・ロード風に歩こう…」

RIP SLYME_白日

04 – RIP SLYME”真昼に見た夢”
DJ FUMIYAも加入前、RIP SLYMEのインディー時代のデビューシングル”白日”のB面曲。
メジャーデビュー以降も数々の夏曲を残した彼等は、デビュー当初から日本版PHARCYDEとも言われていたけど、「気だるい夏の日の白昼夢」をテーマにした本作も正にそんな感じ。
振り返ってみると本作然り、インディー時代の初期作「LIP’S RHYME」や「TALKIN’ CHEAP」にはお家騒動で脱退したPESがプロデュースしているものが多いんで、2022年のリユニオン以降はこの辺りの楽曲もライブでやらなくなってるのかなと予想。
まあ、PES楽曲に頼らなくても他に沢山曲はあるんで大きな影響は無いのかもしれませんが、インディー時代の楽曲も好きな古参ファンは多いと思うんですけどね。
作中、「終わるには早すぎる」と歌うPESヴァースが、後年の騒動を思うと妙に感慨深い…。

ZEEBRA_真っ昼間

05 – ZEEBRA”真っ昼間”
キングギドラを活動休止してソロデビューを果たしたZEEBRAの、98年の1STアルバム「THE RHYME ANIMAL」からの1STシングル。
その前にT.A.K THE RHYMEHEAD、UZIと共に実質的にURBARIAN GYMとしての初稼働となった”INNER CITY GROOVE”があったとは言え、ZEEBRAソロの一発目は意外にもルーディーなユルめのノリだったんで、当時少し驚いた覚えがあります。
MONTY ALEXANDER”LOVE AND HAPPINESS”を使用したINOVADER作のビートで、BBQがてらにラップするようなラフさ加減が良き。
余談ながら、”LOVE AND HAPPINESS”は冒頭をLARGE PROFESSORが”IJUSWANNACHILL”(96年リリース)で、1分弱ぐらいの部分をBEATNUTSが”LET OFF A COUPLE”(94年リリース)で、4分過ぎの部分をAPACHEがGANGSTA BITCH”(92年リリース)で使用され、LARGE PROFESSOR、BEATNUTS、Q-TIPという錚々たるディガーがそれぞれ異なる箇所を使用していることで知られていますが、それらの箇所を敢えて見送ってその後に出てくる一瞬のフレーズを掴まえたINOVADERの見事な選球眼に改めて唸らされるはず。

DRAGON ASH_SUMMER TRIBE

06 – DRAGON ASH”SUMMER TRIBE”
ZEEBRAとACOを迎えた”GRATEFUL DAYS”以降、ラッパ我リヤとの”DEEP IMPACT”と合わせて日本語ラップに急速に歩み寄っていた2000年リリースの一曲は、JOE SAMPLE”IN ALL MY WILDEST DREAMS”を使用し、当時物真似ラップと揶揄されて後のビーフ(キングギドラ”公開処刑”!)の引き金になったとされる”SUMMER TRIBE”。
改めて聴いてみても、やっぱり当時DMXやJA RULE辺りを踏まえたZEEBRAのガナるスタイルにKJはだいぶ寄せてる感じは分かるけど、”GRATEFUL DAYS”の後にZEEBRA”真っ昼間”のREMIX仕事もあったから聴き過ぎて似ちゃったんだなと。
その辺りの経緯もあって、2000年代には無意味にヒップホップ畑で虐げられてた気がする一曲なんですけど、今となれば普通に内容は悪くないし、むしろZEEBRA”真っ昼間”(か、そのREMIX)とセットで聴いて懐かしむべき一曲だと思います。

スチャダラパー_5TH WHEEL 2 THE COACH
スチャダラパーとEGO-WRARRIN_ミクロボーイとマクロガール

07 – スチャダラパー”サマージャム ’95”
08 – スチャダラパー”サマージャム 2020″
かせきさいだぁ”じゃっ夏なんで”と双璧を成す日本語ラップの夏歌、スチャダラパーの”サマージャム ’95″は、25年越しの続編”サマージャム 2020″と共に。
原曲はもはや説明不要としても、そのアウトロで使用されていたTHE MOMENTS”LOVELY WAY SHE LOVES”を使用したイントロからしてニクい2020年版は、正しくあの頃のノリそのままの夏のヨタ話。
聴き比べることで、色々とセルフリサイクルしてる部分がよく分かるはず。
写真は原曲を収録した「5TH WHEEL 2 THE COACH」のLPと、2020年版の7″。

RHYMESTER_THE R

09 – RHYMESTER”フラッシュバック、夏。”
そんなスチャダラパーと、結成30年超えのグループ同士の邂逅となった”FOREVER YOUNG”で共演を果たしたRHYMESTERの、2011年のサマーチューン。
DJ JINの課外活動、BREAKTHROUGHから繋がったのか(?)、DJ MITSU THE BEATSが手掛けた小洒落たビートに乗ってタイトル通り、あの夏の記憶を振り返るリリックは、正に日本語ラップ版「やれたかも委員会」!
彼等にとってもキャリア屈指の夏歌だけに、今からでも7″が出たら普通に売れそうな気がするんですけど、今のところはベスト盤「THE R」に滑り込んでくれてLPのみ。
夏特有の浮かれたキャッキャ感が最高過ぎるMVも、夏中は何度となくリピートしてほしい…!

やけのはら_THIS NIGHT IS STILL YOUNG EP1

10 – やけのはら”GOOD MORNING BABY”
11 – やけのはら”I REMEMBER SUMMER DAYS”(feat. 七尾旅人)
2010年のデビュー作「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」から2曲連続で。
“GOOD MORNING BABY”は、聴き終わりの清涼感と前曲RHYMESTERからのMVで連想しただけで深い意味は無いんですが、”I REMEMBER SUMMER DAYS”は、クラシック”ROLLIN’ ROLLIN'”を生んだ七尾旅人との再ジョイント曲なのに前述の通り、単独シングルは存在せずEPの中の一曲という扱いだったせいか、いまひとつ評価されていない気がしてて。
FUNKADELIC”GOOD OLD MUSIC”のバタついた極太ドラムブレイクもイイ味!

タカツキ_なつ(青い夏)

12 – タカツキ”なつ(青い夏)”
SMRYTRPSやSUIKAのメンバーとしても知られるウッドベースの吟遊詩人、タカツキの初期曲に12″が存在しているのは何気にあまり知られていないような。
学生時代には京都に住んでいたらしく、不意に「地蔵盆が明ける頃」なんてフレーズが不意に飛び出すところにも妙に親近感が湧きます。
ISAAC HAYES”HUNG UP ON MY BABY”の泣きのギターリフには、どこか懐かしい「あの夏」感があって、後には田我流もバック・イン・ザ・デイものの”BACK IN THE DAYS 2″で使用していました。

SOUL SCREAM_ひと夜のバカンス

13 – SOUL SCREAM”ひと夜のバカンス”
SEEDA & DJ ISSOの名V.A.「CONCRETE GREEN」シリーズに提供された”花火”もイイけど、残念ながらサブスク未解禁なんで”ひと夜のバカンス”の方を。
元々、キャリア初期から”黒い月の夜”(E.G.G. MANヴァース)なんかで、ワンナイトラブなリリックは歌ってた彼等ですが、本作は一曲まるまるそんな感じ。
RAY BARRETTO”PASTIME PARADISE”を使用した透明感のあるビートで、よく聴くとなかなかに際どい内容を歌ってる気がするんですが、そんなのも含めた夏、という。

STERUSS_真夏のジャム

14 – STERUSS”真夏のジャム”
2005年の3RDアルバム「白い三日月」のトリを飾った人気曲は、12年越しの2017年にまさかの7″化。
後に、本人を迎えた”尖”でのリアル共演を果たす和ジャズ界の大物ベーシスト、鈴木勲”EVERYTHING HAPPENS TO ME”を使用した軽やかなビートに、彼等らしい直球でポジティブなメッセージが乗って、中盤に入ってくるサイプレス上野、ロベルト吉野、DEEP SAWERのSTONE DAと希、マイク大将、三木祐司、DJ KENTA他、地元のZZ PRODUCTIONの面々のシャウトも熱い!

曽我部恵一_サマー・シンフォニー
曽我部恵一_サマー・シンフォニー_特典CD

15 – 曽我部恵一, PSG”サマー・シンフォニー VER.2″
MAL WALDRON”ALL ALONE”の使用、もの悲しげなフックもオリジナル・バージョンよろしく、PSGを迎えてもっとエモく仕上げたテイク2。
曽我部恵一はフックのみで実質的PSG曲と言っていいと思うんだけど、相変わらずフリッキーなフロウを聴かせるS.L.A.C.K.も、メロディアスに乗ってみせるPUNPEEももちろんイイが、一番夏を感じさせるのはトリのGAPPERヴァースだったりして、締めの「アイスクリームとろけるような 暑い暑い夏に アイスクリーム届けるつもり」まで聴き逃せません。
12″の特典CDにのみ、”サマー・シンフォニー VER.2″の方のアカペラを収録していたのは、なかなかニクい仕様でした。

RIP SLYME_TOKYO CLASSIC

16 – RIP SLYME”楽園ベイベー”
17 – RIP SLYME”花火”
ラストはRIP SLYMEの2連発で締め!
超軽快な四つ打ちビートで底抜けに明るい常夏気分のマイクリレーが最高な”楽園ベイベー”は夏歌の定番と言っていいでしょうが、同じく3RDアルバム「TOKYO CLASSIC」に収録された”花火”の方は、そこまで有名じゃないかもしれないけど忘れ難い佳曲。
彼等の数ある楽曲の中でも最長レベルの7分超え、夏の失恋を丁寧に描写してて悲しいんだけど、”楽園ベイベー”のノリではしゃいでたら、そりゃこういうこともあるよね、という気も。
個人的には、この2曲揃ってA/B面感があります。

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