LB NATION – MOUSOU CREW V.A.【1】

本国で言えば、NATIVE TONGUESやGANG STARR FOUNDATION、JUICE CREW、G-UNIT、DEF SQUAD、HIT SQUAD、RUFF RYDERS、FLIPMODE SQUAD、TERROR SQUAD、DIPSET、MURDER INC.ほか、古くは80年代後半から生まれては消え、また生まれ…を繰り返してきた「クルー」という存在。
日本語ラップ・シーンにおいても同じく数々のクルーが存在してきましたが、クルー名義での作品まで残されたのは、パッと思い付くところでSCARS、雷(KAMINARI-KAZOKU)、走馬党、練マザファッカーぐらいか(MSCとかSD JUNKSTA、韻踏合組合、妄走族みたいなユニット活動中心のグループは除く)。
「あの時、あのタイミングでリリースされていたなら違った未来があったのでは…?」と思えるようなクルーV.A.を勝手に妄想します。

LB NATION(LITTLE BIRD NATION)
スチャダラパー … BOSE、ANI、SHINCO
TOKYO NO.1 SOUL SET … BIKKE、渡辺俊美、川辺ヒロシ
脱線3 … ロボ宙、MC BOO、KING 3LDK
TONEPAYS … かせきさいだぁ、ナイチョロ亀井、光嶋崇
ナオヒロック & スズキスムース … ナオヒロック、スズキスムース
JUDO
THREE ONE LENGTH … NAMA-ROY、HIRANO BROWN、DJ KAZ SUDO
A.K.I. PRODUCTIONS … A.K.I.、ILLICIT TSUBOI
CARTOONS … オモロマン、TAKEI GOODMAN、MATT-NY ほか

そもそも、集合写真すら存在していないという…クルーと呼ぶにはあまりにもユルい繋がり!
キリがないのでサブメンバーはもう割愛してますが、LB NATIONはスチャダラパーを中心に集まったメンバーで、直近でもサイプレス上野とロベルト吉野が加入する等、ユルい繋がりは実はまだ続いているようで。
ただ、今回妄想するのは上記の主要メンバー間で積極的にコラボし楽曲を発表していた90年代を軸に、SPOTIFYのプレイリストを作ってみました。
全20曲、解説と合わせて楽しんでいただければ幸いです。

01 – スチャダラパー”LITTLE BIRD STRUT”(LIVE)
スチャダラパー名義のクルーアンセム”LITTLE BIRD STRUT”は当然チョイスするとして、敢えてナイチョロ亀井の「DJ SHINCOにズームイン!」で幕開けるライブ・テイクは、オリジナル・バージョンよりも臨場感たっぷりでスリリング!
クルー総出、メンバーが入り乱れる大人数のポッセカットで元気良くスタートします。

02 – スチャダラパー”CARS-JOINT”
続いて、CARTOONSのMAT-NY、シャシャミン+スチャダラパーでの”CARS-JOINT”!
リリックにある5人というのは、スウィギン=スウィギン・シンコことDJ SHINCOも頭数に入れてて。
スチャダラパーのポッセカットものって、他のもDJ SHINCOも数に含んでいるとこに、DJへのリスペクトがあるグループだなと改めて。

03 – スチャダラパー”ジゴロ7″
“ジゴロ7″で言うところの7人は、BOSE(ボー様)、KING 3LDK(サンペー)、ロボ宙(ロボ郎)、SHINCO(シンの字)、TAKEI GOODMAN(ヨシヒト)、ANI(ニーヤン)、MC BOO(ブッダさん)。
ここでもSHINCOが7人の中に含まれていて、(ラップはしてないけど)スクラッチの声ネタでヴァースっぽく組み立てていて、それもちゃんと聴き所の一つになっているというのも良き。
チョクチョク、合間に差し込まれるKRYPTIC KREW/AFRIKA BAMBAATAA & THE JAZZY 5″JAZZY SENSATION”の使い方にもニヤリ!

04 – スチャダラパー”5TH WHEEL 2 THE COACH”
イントロのBLACKHEAT”RAPID FIRE”を使用したビートで煽るナオヒロックからして激アツ!
このノリが、後にクルーにも加入するサイプレス上野とロベルト吉野”ナオヒロック ON THE MIC”へと継承されたことでもお馴染みのはず。

05 – TOKYO NO.1 SOULSET”JIVE MY REVOLVER”
前曲から同ネタ繋がりで。
時系列ではスチャダラパー「5TH WHEEL 2 THE COACH」が1995年4月26日、TOKYO NO.1 SOULSET「JR.」が1996年8月21日のリリースでスチャダラパーのが僅かに早いんですけど、意図的にカブせたのか、偶然の一致か、この辺りはまだ語られていない気がします。

06 – 脱線3″B-BOY体操”
脱線3は、今にして思えばオモロラップの権化みたいな存在で、90年代後期にエレクトロに傾倒するまでの作品は、サウンド的にはけっこうマッチョな感じ(その上に乗ってくるラップはギャグ大盛りだけど)。
恐らくULTRA MAGNETIC MC’S”EGO TRIPPIN'”辺りを念頭に置いたであろう本作は、ストレートに格好良し!

07 – スチャダラパー”B-BOYブンガク”
B-BOY繋がりで、スチャダラパーからも一曲。
90年代中期、B-BOYをテーマに楽曲を制作すると脱線3もスチャダラパーも、けっこうストイックな聞こえになっていたというのは、何か時代を反映している気がして面白いような。
(名指しでこそないけど)本作ではバブルガム・ブラザーズを口撃していて、けっこうハードコアな側面を聴かせます。

08 – 脱線3″BOOソロ(ジャイアン・リサイタル)”
脱線3とスチャダラパーのサンドイッチで、今度は95年の2NDアルバム「XXX JAPAN」から。
タイトル通り、MC BOOのソロ曲で、副題にある通りの(疑似)ライブ仕立て。
ESTHER PHILLIPS”HIGHER AND HIGHER”を使用したホゲたビートもキャラにハマってます。

09 – スチャダラパー”0718 アニ ソロ”
続いて、まだBOSEの1MC体制(ANIは、ほぼ合いの手、掛け合い要員)だった頃の91年の2NDアルバム「タワーリングナンセンス」から。
ホゲたビートの雰囲気(DETROIT EMERALDS”YOU’LL GETTING A LITTLE TOO SMART”使用)、疑似ライブ仕立てってとこまで一致してるんで、後発の脱線3が敢えてナゾッたんでしょうね、多分。

10 – 脱線3″笑ってる場合ですよ”
脱線3とスチャダラパーのリンク具合を改めて確認したところで、(ノークレジットながら)LB NATIONクルーが乱入するポッセカットをここで。
ショートショートでメンバーが入り乱れる中、MICROPHONE PAGER”改正開始”の一節を拝借したロボ宙の「お笑いラップ、改正解散」はけっこうスリリングなパンチラインだと個人的には思っていて。
94年当時、MICROPHONE PAGERがその気になっていたら、これをきっかけにビーフが起こる世界線もあったのかな、なんて想像すると興味深い限り。
ラップしてる内容はともかく、BLACKHEAT”NO TIME TO BURN”を使用したビートは何気に渋い!

11 – 脱線3″ウルティメイト・ベシャリスト”
さらに、脱線3仕切りのポッセカットをもう一曲!
METERS”HANDCLAPPING SONG”を使用したビートに、LB NATIONからJUDO、ナオヒロック & スズキスムースはともかく、裏メンバー的だった(?)ホフディラン、さんぴんCAMP周辺とも親交が深かったSHAKKAZOMBIEや四街道NATURE等まで呼び寄せた贅沢布陣で大盛り上がり。
余談ですが、本作をきっかけに(?)、脱線3監修による芸人が歌う珍曲を集めたV.A.「ウルティメイト・ベシャリスト CLASSICS」なんて珍品もリリースされています。

12 – スチャダラパー”サマージャム ’95″(クボタタケシ・リミックス)
もはや夏の定番と言っていいオリジナル・バージョンではなく、LB NATIONの助っ人外人枠(?)、キミドリのクボタタケシによるREMIXの方で。
CAPTAIN BEEFHEART & HIS MAGIC BAND”OBSERVATORY CREST”を使用したビートの浮つき加減が、こちらも最高!

13 – かせきさいだぁ”じゃっ夏なんで”
浮つき加減では負けてない、スチャダラパー”サマージャム ’95″と並ぶ夏定番、説明不要。

14 – TONEPAYS”苦悩の人”
後に、かせきさいだぁが単独でもリメイクした本作は、やっぱりTONEPAYS名義のオリジナル・バージョンで(V.A.「CHECK YOUR MIKE」収録)。
かせきさいだぁバージョンと聴き比べると、フックとか大筋は一緒だけど、展開だったりユニゾン箇所がけっこう違います。
はっぴいえんど”風をあつめて”は、やっぱりいつ聴いても夏っぽい。

15 – かせきさいだぁ”冬へと走り出そう”
とか言ってる矢先に、季節は冬に向かって。
2012年の「ミスターシティポップ」でもっと洗練したセルフリメイクを披露していたけど、やっぱりLEON RUSSELL”BLUEBIRD”を使用した、まだ拙さの残るオリジナル・バージョンも最高!

16 – かせきさいだぁ”冬へと走り出そう・再び”
で、冬へと再び。
デビュー作「S.T.」の、出し直されたTOY’S FACTORY盤ではオーラス曲になっていた”冬へと走り出そう”のバージョン違い的一曲。
ビートはもちろん違ってますが、ラップ終わりのアウトロが壮大な雰囲気で(ちょっと長いけど)原曲と同じく最高!

17 – A.K.I. PRODUCTIONS”お前も今日から大衆だ”
若き日のILLCIT TSUBOIが在籍したA.K.I. PRODUCTIONSによる本作が、2021年になってILLCIT TSUBOIプロデュースの元、世代を越えてOMSBにまさかリメイクされようとは、世の中は何が起こるか分からんですな。
OMSB”大衆”とは違う、もっとダウナーな雰囲気の一曲なんですが、思ったよりも再評価の波が来なかった無念(?)を込めて。

18 – スチャダラパー”あんた誰?”
ちょっと暗くなったんで、気分を変えて。
谷啓を迎えた本作は、後に続いていく芸人客演曲の先駆けだったと思うんですけど、普通に楽曲として格好良いっていうのが大事で。
谷啓の口スクラッチも良き。

19 – スチャダラパー”何処か…どっちか”
94年のEP「スチャダラ外伝」より。
“あんた誰?”でのユルい調子に合わせて、ふざけ過ぎない良き空気感をキープするイメージ。
余談ですが、定番ブレイクのHONEY DRIPPERS”IMPEACH THE PRESIDENT”、なんとなく彼等はよく使ってそうなイメージがあるのに(店主だけ?)、実はちゃんと振り返ってみるとそんなには使ってないんです。

20 – スチャダラパー”GET UP AND DANCE”
オーラスはもちろん、LB NATIONクルーが揃い踏みするポッセカットで締め!
FREEDOMの同名曲を東京スカパラダイスオーケストラが再現した最高のお膳立てに、ANI~TONEPAYS~BIKKE~四街道NATURE~脱線3~JUDO~ナオヒロック & スズキスムース~キミドリ~BOSE~CARTOONS~渡辺俊美~THREE ONE LENGTHと続いていく、9分弱(!)にも及ぶ長尺マイクリレー!
元ネタはもちろん、大人数での長尺マイクリレーってとこまで踏襲して、サイプレス上野とロベルト吉野が同世代のメンツとリメイク(演奏は在日ファンク)したのも2013年で、早10年も昔の話か…!

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