本日8月3日は、調べてみるとANARCHYの3RDアルバム「DIGGIN’ ANARCHY」のリリース日で(2011/08/03) 。※CDのリリース日
今となれば、次作でフリーダウンロード作品となった「DGKA(DIRTY GHETTO KING ANARCHY)」を除くと、ソロ名義では古巣R-RATED RECORDSからの最後のフィジカルリリースにして、外部アーティストのアルバムのフル・プロデュースはMUROもキャリア初だったということで、何かとメモリアルな一枚だと思います。
その後、自身が使用した元ネタのみでミックスした人気シリーズ「DIGGIN’ MURO」も、(趣旨は違えど)明らかに本作を意識したものだったで、MUROにとっても思い入れが強い作品なのかもしれません。


ANARCHY「DIGGIN’ ANARCHY」
(R-RATED RECORDS/JPN 2LP/RRVL-0010)
A-1 INTRO
A-2 SIDE B
A-3 K.I.N.G.
B-1 BROKEN MEMORY(feat. RUDEBWOY FACE)
B-2 CAPTURE THE FLAG(feat. RYUZO, CHOZEN LEE)
B-3 GRAND THEFT AUTO
C-1 DEVILMAN(feat. RINO LATINA 2 & DABO)
C-2 MAGIC HOUR(feat. PUSHIM)
D-1 GO JOHNNY GO!(feat. NAUGHTY)
D-2 6 FEET DEEP(feat. OZROSAURUS)
D-3 PLAYING IN THE GHETTO
アルバムのコンセプトはタイトル通り、ANARCHYの深堀り、彼の10の顔(ラップ入り全10曲)を見せるというもので、スキットやアートワークまでANARCHYとMUROがガッツリ共作したんだとか。
R-RATED RECORDSのYOUTUBEチャンネルに、MUROが制作秘話を語ったインタビューが残っていたんで、MUROから見たANARCHYの印象だとか、実現に至る背景などはそちらで。
さすがにMUROと組むとなればLP化は当初から計画していたようで、LPアートワークを盛り込んだCDアートワークも粋な計らい。
結果的に、ANARCHY名義の作品としてはR-RATED RECORDS期からAVEXでのメジャーデビュー~離脱後、2021年に自身のレーベル、THE NEVER SURRENDERSからリリースした8THアルバム「NOISE CANCEL」に至るまでで、現時点では唯一LP化した作品になっています。
全曲レビュー
01 – “INTRO”
イントロは短編インストで、正しく物語の序章という感じ。
DJ XXXLとして和モノ・ミックス「NIPPON BREAKS & BEATS」シリーズを開幕したのが2005年頃で、制作時にはMUROがすでに和モノを積極的にネタとして盛り込んでいた時期と考えられるんですが、1曲目にして早くもそんな雰囲気。
02 – “SIDE B”
イントロに続く実質的1曲目は、冒頭からMUROとのコンビをシャウトする強烈なヘッドバンガー。
目立ったところだと、中盤に突如差し込まれる「耳鳴りが、耳鳴りが、誰かに妨害されて耳鳴りが」は、言うまでもなくMUROの客演仕事、MAKI & TAIKI”バスドラ発~スネア行”からの引用。
楽曲の印象はだいぶ違うけど、ドラムが極太で自然と首が振れる感じは共通してるかも。
あと、サラリと読み込んでる「楽しもう、今日も誰かのバースデー」ってラインは、50 CENT”IN DA CLUB”も意識してると思われるんで、ANARCHY流の直球なパーティーチューンという感じ。
03 – “K.I.N.G.”
早くもANARCHY節が炸裂する3曲目は、それ以前で言うところの”GROWTH”だったり”MY WORDS”辺りに近い雰囲気で、もの悲しげなビートの上でRYUZO、LA BONOとの出会いやRUFF NECKメンバーとの思い出を過去回想。
ただ、ALEX RICHMAN”IT DOESN’T HAVE TO BE WRONG”の中盤のフレーズを早回しにしたネタのチョイスは流石にMUROという感じ。
ちなみに、後に13000円アルバム(!)として限定リリースされた「THE KING」にも”THE KING”という似たタイトルの楽曲が収録されてましたが、KING OF DIGGIN’ことMUROと組んだ”K.I.N.G.”の方がリリースは先でした!
04 – “BROKEN MEMORY”(feat. RUDEBWOY FACE)
リリースが真夏だったせいか(?)、ジャパレゲ勢の参加が目立つ本作ですが、まずは横浜からRUDEBWOY FACEが参戦!
HENRI-PIERRE NOEL”SIMBI”の美し過ぎるピアノリフを基調にした、こちらはいかにもMUROっぽいビートだと思うんですが、ANARCHYの生い立ちを歌い込んだリリックは悲しいのに楽曲自体の印象はそっちに引っ張られるでもなく、RUDEBWOY FACEが伸びやかに歌うフックも手伝って、聴くほどに不思議な世界観の一曲。
ジャパレゲ感は薄め。
05 – “CAPTURE THE FLAG”(feat. RYUZO, CHOZEN LEE)
続いて、同じく横浜はFIRE BALLからCHOZEN LEEと、兄貴分のRYUZOを迎えた一曲。
アグレッシブなビートの上で凄味を利かせるR-RATED勢は戦闘モード、CHOZEN LEEも畳みかけるようなフックで高揚感を煽る前ノメリな仕上がり。
前曲然り、ジャパレゲ感は薄いんだけど戦意を高める雰囲気作りとして、CHOZEN LEEの配役がハマッていると思います。
06 – “GRAND THEFT AUTO”
戦闘モードはそのままに、続くANARCHYのソロ曲では、ギアをシフトチェンジするように突然ブッ込んでくるファストフロウが印象的。
よく聴くと、薄っすらとCERRONE”ROCKET IN THE POCKET”を被せてたり、銃声なんかのSEを細かく入れてたりするMUROのプロダクションの妙も聴きもの。
07 – “DEVILMAN”(feat. RINO LATINA 2 & DABO)
戦闘モードで3連発とばかり、RYUZOの兄貴分にあたるRINOとDABOを迎えた重量級の布陣で、DIAMOND D & THE PSYCHOTIC NEUROTICS”BEST KEPT SECRET”よろしく、TANYA “SWEET TEE” WINLEY”VICIOUS RAP”を使用したイントロからして熱い展開。
タイトル通り、「デビルマン」になぞらえたリリックでのマイクリレーかと思いきや、ANARCHYとDABOはクラブの話、RINOは思いっきり「ベルセルク」をイメージしてるんだけど、一方でビートを手掛けたMUROはラストに、タイトルに忠実にO.S.T.「デビルマン」のBGMを持ってくる辺りの仕掛けも小憎い!
マイクリレーものとしての格好良さは言わずもがなだけど、ここでの立ち振る舞いはどこか各人のキャラクターや性格が表れている気がして、それも含めて興味深く聴けます。
08 – “MAGIC HOUR”(feat. PUSHIM)
RINOとDABOを迎えたマイクリレーで最高潮を迎えたテンションを、ここで一旦クールダウン。
タイトルの”MAGIC HOUR”は、日本では2008年公開の三谷幸喜映画「ザ・マジックアワー」以降に一気に世の中に認知が広がった印象ですが、「日没後および日の出前に数十分程体験できる薄明の時間帯」を指す言葉で、アニメMVよろしく、そんな魔法みたいな時間を彼女と過ごすラブソング。
実際、映画公開以降には日本語ラップ・シーンでもRHYMESTER”MAGIC HOUR”、STUTS, BIM, RYO-Z”マジックアワー”と同タイトルで楽曲がいくつか発表されていたりもするんで、歌いやすいテーマと言えるかもしれません。
そんなムーディーな一曲に、MUROはWILLIE TEE”ANTICIPATION”を使用したビートで、客演のPUSHIMはTEENA MARIE”OOH LA LA LA”を引用したフックで華を添えています。
09 – “GO JOHNNY GO!”(feat. NAUGHTY)
オーラスに向けて再度エンジンをふかすように、地元の盟友、RUFF NECKメンバーからNAUGHTYを迎えた一曲!
冒頭から両者の掛け合いでグイグイ引っ張る展開はRUFF NECK曲を彷彿とさせるもので、「ONE FOR THE MONEY, TWO FOR THE SHOW~」の歌い出しと、同フレーズを擦ったスクラッチと絡むフック含め、正にブーンバップ・マナーのパーティーチューン。
10 – “6 FEET DEEP”(feat. OZROSAURUS)
O.S.T.「野良猫ロック セックス・ハンター」のBGMを使用した、やさぐれた劇画タッチのビートでOZROSAURUSのMACCHOを迎えた強烈な一曲!
客演でOZROSAURUSとあるのは、スクラッチをDJ SN-Zが担当しているためで、ANARCHYとMACCHOそれぞれの声ネタをフックにキッチリとハメ込んでいます。
冒頭のANARCHYのマイクチェックからヴァース、DJ SN-Zのタイトな擦りも入ってくるフック、MACCHOヴァース、熱い掛け合いでのラストまで一切聞き逃せないスリリングな仕上がり!
11 – “PLAYING IN THE GHETTO”
締めは「DIGGIN’ ANARCHY」のリードトラック的だった”PLAYING IN THE GHETTO”!
MICROPHONE PAGER”RAPPERZ ARE DANGER”よろしく、DONNY HATHAWAY”LITTLE GHETTO BOY”を使用したビートで、京都は向島で過ごした少年時代を過去回想するブルージーな一曲。
ANARCHY自身のルーツを振り返るのと同時に、MICROPHONE PAGER = MURO曲のオマージュにもなっているという、本編の締め括りとしては完璧な構成。
その後、(フリーダウンロード作品の「DGKA(DIRTY GHETTO KING ANARCHY)」を省くと)本作とクルーでのRUFF NECK「RUFF TREATMENT」をもって、メジャーのAVEXに移籍してからは若干の路線変更で、ここまでストイックな路線が減ったこともあり、R-RATED RECORDS入り前から追いかけてきたような古参のファンには特に人気の一曲だと思います。
ちなみに、MVは自身が過ごした向島団地で、実際に撮影された模様。

コメント