地上波のテレビ朝日~ABEMA TVで放送された「フリースタイルダンジョン」を起爆剤として、2010年代についに日本でも市民権を得たMCバトル/フリースタイル・ラップは一躍ブームになって、以降その人気は定着した感があります。
フリースタイル・ラップがトレンドとなって以来、芸人も沢山参戦していて、「フリースタイルダンジョン」の後継番組である「フリースタイルティーチャー」においては、ほぼほぼレギュラー枠として芸人が登場する等、日本語ラップとの結びつきは強くなる一方。
まあ、芸人ラッパーの是非については色々な意見があると思いますが、マスにアピールすれば、裾野が広がる中で色んなモノが混入するのは世の常だし、カルチャーとして根付かせるのに清濁を併せ呑むというプロセスは何も日本語ラップ~ヒップホップに限らず、どんなものでも避けて通ることはできないわけで。
個人的には、コレはコレでエンタメとしてはぜんぜんアリだと思っています。
フリースタイルティーチャー出演芸人
「フリースタイルティーチャー」に登場した芸人の一部をピックアップすると、こんな感じ。
改めてリスト化してみると、お笑いコンテストの常連だったり優勝者も多数! ※SEASON13まで
名前 | 登場回 |
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ゆりあんレトリィバァ | SEASON1, 5, 6, 7, 8, 9, 10 |
紺野ぶるま | SEASON1, 7, 13 |
ゆいP(おかずクラブ) | SEASON2 |
大地洋輔(ダイノジ) | SEASON5 |
久保田かずのぶ (とろサーモン) | SEASON5, 7, 8, 9 |
酒井貴士(ザ・マミィ) | SEASON5, 6, 7, 8, 9, 13 |
杉本青空(からし蓮根) | SEASON5(トーナメント優勝), 13 |
鈴木もぐら(空気階段) | SEASON5 |
森本晋太郎(トンツカタン) | SEASON5, 7, 13 |
ゆめっち(3時のヒロイン) | SEASON5, 13 |
淡路幸誠(きつね) | SEASON5, 6, 7, 8, 9, 10, 13 |
中山功太 | SEASON7, 8, 9, 10, 13 |
井口浩之(ウエストランド) | SEASON7, 10, 13 |
市川刺身(そいつどいつ) | SEASON7 |
せいや(霜降り明星) | SEASON7, 13 |
R藤本 | SEASON10, 13 |
桑原(トット) | SEASON10, 13 |
原田泰雅 (ビスケットブラザーズ) | SEASON10, 13 |
やす子 | SEASON10 |
酒井健太(アルコ&ピース) | SEASON13 |
尾形貴弘(パンサー) | SEASON13 |
みながわ (ネイビーズアフロ) | SEASON13 |
中川パラダイス (ウーマンラッシュアワー) | SEASON13 |
日本語ラップとゆかりが深い芸人
また、フリースタイル・ラップがトレンドになる以前にもテレビの企画などでスポットで絡んだり、関連のエピソードトークを繰り出したりとか、日本語ラップ好きを公言する芸人は他にも沢山居ます。
テレビで人気の芸人も、けっこう日本語ラップ好きが多い…!
名前 | 日本語ラップとのゆかり |
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有田哲平 (くりぃむしちゅー) | 2006~7年、ZEEBRAと共に「シュガーヒルストリート」というラップ番組を司会。プロレスと共に日本語ラップを深く愛する |
山崎弘也 (アンタッチャブル) | くりぃむしちゅー 有田と共に日本語ラップ好きで有名。スチャダラパーからライムスター”FOREVER YOUNG”(ザキヤマREMIX)に参加 |
レイザーラモンRG (レイザーラモン) | 「フリースタイルダンジョン」/「フリースタイルティーチャー」、「BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」、「アメトーーク!」の「ラップ大好き芸人」回など、日本語ラップ系のテレビ番組は皆勤賞。YOUTUBEチャンネルではD.Oとも共演 |
若林正恭 (オードリー) | MC WAKAとして、ラップで星野源やMIWA、梅沢富美男(!)と共演 |
くっきー! (野生爆弾) | 「BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」出演。YOUTUBEで対談したD.Oとはプライベートでも親交が深いとか |
品川祐 (品川庄司) | 「フリースタイルダンジョン」出演。2015年に行われた、芸人 VS ラッパーのイベント「ディスリスペクト」の司会を般若と共に務める |
松尾駿 (チョコレートプラネット) | DJ SAATとのYOUTUBEチャンネル「BOOMIN’ WORLD」に出演し、多くのDJ/MCと対談。「ニートTOKYO」にも出演したり、シーンでの交友関係は広い |
長谷川忍 (シソンヌ) | DJ SAATとのYOUTUBEチャンネル「BOOMIN’ WORLD」に出演し、多くのDJ/MCと対談。「BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」出演、「アメトーーク!」の「ラップ大好き芸人」回出演 |
渡部建 (アンジャッシュ) | MCバトルの司会も務める、25年来の日本語ラップファン。「アメトーーク!」の「ラップ大好き芸人」回出演 |
あばれる君 | 「アメトーーク!」の「ラップ大好き芸人」回出演。元ラッパーで、MCバトルにも出演経験有り |
アントニー (マテンロウ) | 「アメトーーク!」の「ラップ大好き芸人」回、「ニートTOKYO」にも出演 |
石田たくみ (カミナリ) | 「フリースタイルティーチャー」出演。KAMINARIからコンビ名を付けるほどの日本語ラップ好き。元々はブッダにしようとしていたとか。「アメトーーク!」の「ラップ大好き芸人」回、「ニートTOKYO」にも出演 |
竹内まなぶ (カミナリ) | KAMINARIからコンビ名を付けるほどの日本語ラップ好き。「アメトーーク!」の「ラップ大好き芸人」回、「ニートTOKYO」にも出演 |
中川剛 (中川家) | 練マザファッカーを世に送り出した「リンカーン」の企画から生まれた芸人ラッパー。幻になってしまったD.O”PLAY DA GAME”に参加 |
盛山晋太郎 (見取り図) | 多数のテレビ番組でフリースタイル・ラップを披露 |
角田晃広(東京03) | 自身も出演したドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌、STUTS & 松たか子”PRESENCE 3″でNENEと共演し、ラップも披露 |
とにかく明るい安村 | MC TONYとしてラッパーデビュー。1STシングル”PANTS”を配信リリース |
エンタメの世界では、「芸人・バラエティー」というジャンルはもう揺るぎない王道と言えるわけで、日本語ラップのシーン全体としても、そこと絡んでいくのはカルチャーとして広く根付かせるために必要な業だと思います。
かつてMICROPHONE PAGERが名曲”改正開始”で「お笑い臭いイメージを無くそう」と歌ったのも今は昔、もはやテレビとかエンタメの世界で芸人と絡むことをセルアウトと呼ぶ人はマイノリティーだろうし、シーンを潤わせて盛り上げるためにもキャッチーな入口は在った方が良いわけで、今や芸人との絡みがそんな役割になっていることも多いと思います。
日本語ラップ VS 芸人 プレイリスト + 解説
というわけで、芸人をフィーチャーした日本語ラップ曲でプレイリストも作ってみました。
本来ならD.O”PLAY DA GAME”(中川家 剛が参加!)も入れたいところですが、残念ながらお蔵入りとなったのでサブスク解禁されている範囲内での10曲 + 1!
2023年4月にリリースされた、十影”ラッパー、家を買う。”のリメイク的なとろサーモン 久保田こと#久保田”芸人、家を買う。”はボーナストラック的として。
ラップの巧さという意味では、もはや芸人の域を超えている気さえする、とろサーモン 久保田はもう別枠でいいと思ってます。
全11曲、解説と合わせて楽しんでいただければ幸いです。
01 – 餓鬼レンジャー”STILL 火ノ国SKILL”(feat. からし蓮根)
クラシック”火ノ国SKILL”を2022年版にアップデートした”STILL 火ノ国SKILL”には、餓鬼レンジャーと同郷熊本のからし蓮根が参戦!
杉本青空が「フリースタイルティーチャー」の第一回芸人界最強ラッパー決定トーナメントで優勝した後のタイミングだったんで、それを受けての抜擢でしょうが、トリを飾る杉本青空ヴァースは確かに巧いんだけど、むしろ耳当たりが良すぎてスムーズに流れていく感じ。
にしても、餓鬼レンジャーが敢えて自身のクラシックのリメイクで芸人をフィーチャーしたのは、なかなかインパクトがありました!
02 – 餓鬼レンジャー”チクショー!!”(feat. あっこゴリラ, コウメ太夫)
続いて餓鬼レンジャーから2曲目(2019年リリース)、”チクショー!!”には♀MC、あっこゴリラとコウメ大夫が客演!
こっちはコウメ大夫の持ちネタを大フィーチャーしてて、一曲まるごとギャグみたいな雰囲気なんで”STILL 火ノ国SKILL”とは全く毛色が違うんですが、普通は芸人が芸人として参加するとこんな感じになるかなあ、と。
元々、やりたい放題やりまくってる餓鬼レンジャーなんですが、最後はコウメ大夫と共にEDM風にまで展開する大散らかしっぷり!
ここでは、割とまともにラップしてるあっこゴリラがもはや霞んでます…。
03 – 餓鬼レンジャー”神の穴”(feat. ケンドー・コバヤシ)
さらに餓鬼レンジャーから3曲目(2015年リリース)!
タイトル通り(?)、TENGAでまるごと一曲作っちゃったド下ネタ曲で、ゆえにTENGA好きで有名な芸人、ケンドーコバヤシを招集。
ラップとかじゃなくて、語りとフックで「LOVE ME TENGA」を繰り返すってだけの出代だけど、インパクト大!
04 – SHINGO★西成”足痛いけど!”(feat. 村越周司)
3曲続いた餓鬼レンジャーゾーンを抜けて、前曲のケンドーコバヤシ繋がりで、元々はモストデンジャラスコンビを組んでた村越周司をフィーチャーした一曲!
2022年には芸人を引退してしまいましたが、リリースされた2012年時点ではまだピンのギャグ芸人として活動していた時期で、”足痛いけど!”も「足痛いけどノッてきた」っていう村越周司のギャグを軸に作られた感じ。
SHINGO★西成は大阪弁バリバリのラップで、元々関西色が強いけど、意外と(?)芸人との絡みは本作だけだったりします。
05 – L-VOKAL”ケペラギ”(feat. CK, DABO, レイザーラモンRG)
2015年に配信のみでリリースされたL-VOKALの”ケペラギ”には、CK、DABOに交じってレイザーラモンRGがあるあるネタ持参で参戦!
改めて調べてみると、オフィシャルの歌詞(?)にはRGのパートはまるまるカットされてる模様。
そりゃそうか、とも思いつつ、せっかく客演でもちゃんとクレジットされてるのに少し残念ですね…。
折角なので、プレイリストにはあるあるネタを引き伸ばして、RGも少しラップ的に乗せてくる”ケペラギ”(あるあるLONG VER.)をピックアップしてみました。
06 – L-VOKAL”ケペラギ2″(feat. CK, D.O, MCサーモン)
続いて、2017年にまたまた配信のみでリリースされた”ケペラギ”の続編は、CKは残留、新たにD.OとMCサーモンが参戦!
“ケペラギ”では、RGは持ちギャグをやってましたが、ここでのMCサーモンはきっちりとヴァースをキックしてて、DRAGON ASH”GRATEFUL DAYS”のZEEBRAヴァースの例のパンチラインを「オモロいヤツは大体友達、オカマなヤツは大体ホモダチ」と軽く引用してみせる横綱相撲を披露。
餓鬼レンジャー”STILL 火ノ国SKILL”に客演した杉本青空同様、芸人MCとしては最高峰と言えるパフォーマンスを聴かせています。
07 – AWICH”BAD BITCH 美学”(REMIX)(feat. NENE, LANA, MARI, AI, ゆりやんレトリィヴァ)
2023年5月にリリースされたAWICH、NENE、LANA、MARIによるサイファー曲のREMIXには、更にAIとゆりやんレトリィヴァが追加参戦!
「フリースタイルティーチャー」で磨いてきた、ゆりやんのラップスキルはいつかどこかで発揮されるんだろうなあと思ってたらココだったか、という感じで他のメンツに一歩も引かない余裕のマイク捌きを披露。
「まだおもんないとか言ってんの?文句があんならトロフィー見せろ」なんて一節は、THE Wを制した彼女だから言える痛烈なパンチラインだと思います。
08 – スチャダラパー”OFF THE WALL”(feat. 清水ミチコ)
2015年の12THアルバム「1212」に収録された、モノマネタレントの清水ミチコを迎えた”OFF THE WALL”は、それ以前にライブ物販で出回ったEP「6ピースバリューパック」にも収録されてた一曲。
序盤は長めの寸劇があるんで、てっきりEPのみの収録かと思ったら、後のアルバム本編にもちゃっかり収録されてて逆に驚いた記憶があります。
清水ミチコのモノマネレパートリー(井上陽水~ユーミン~杉本彩)をガッツリ入れ込んだ作りは、キャリア初期のオモロラップ時代を彷彿させるような。
3:30過ぎ辺りから、ようやくモノマネ抜きの本編が始まるんですが、それが普通にイイ曲だったりするんで、余計に聴き手が困惑する感じ…。
09 – スチャダラパー”あんた誰?”(REMIX)(feat. 谷啓)
というわけで、オモロラップ時代にバックアゲインして、94年リリースの”あんた誰?”(REMIX)を。
オリジナル・バージョン同様、谷啓が参加し、御大が持ちギャグのガチョーンを口スクラッチするパートも楽しい一曲。
ほんわかしたユルめのオリジナル・バージョンよりも、BOBBY BYRD”I KNOW YOU GOT SOUL”をもっさり使用したREMIXのがファンキーで、ピリッと締まるイメージ。
言うまでもなく谷啓の同名曲のラップカヴァーなんで、オリジネイターとの共演作になります。
10 – スチャダラパーからライムスター”FOREVER YOUNG”(ザキヤマREMIX)(feat. ザキヤマ)
スチャダラパーからライムスター名義でリリースされた”FOREVER YOUNG”は、RHYMESTER「OPEN THE WINDOW」に収録されたREMIXに、ザキヤマことアンタッチャブル 山崎弘也が参加。
LONNIE SMITH”NO TEARS TOMORROW”をベタ敷きした軽快なビートに、4MCが入り乱れる座組みのオリジナル・バージョンがすでに最高なんですけど、REMIXではそこにザキヤマの持ちギャグ「からの~?」連呼パートをフックまでのブリッジとして配置してて、コレが完全に蛇足と言うか、戯れと言うか。
RHYMESTERとザキヤマの、ラジオの共演が縁で実現した客演(声だけ、ラジオのスタジオで撮ったんだとか)らしいけど、敢えてこの曲じゃなくても良かったのに、それがまた「気が利いてるでしょ」感がまた…!
RHYMESTER名義で7″化するのはオリジナル・バージョンじゃなくて、こっちなのはちょっと残念かな。
11 – #久保田”芸人、家を買う。”
トリは、2017年にリリースされた十影”ラッパー、家を買う。”(そもそも、タイトルの元ネタは2010年のドラマ「フリーター、家を買う。」)をリメイクしたとろサーモン 久保田/MCサーモンこと#久保田”芸人、家を買う。”!
タイトルからコンセプトからフックまで、リメイクと言うかもはやビートジャックに近いノリですが、普段フザけまくりの十影が真摯なメッセージを打ち出した原曲と同じく、芸人の世界でも破天荒な芸風で知られる久保田が歌ったという意味でも、なかなかに面白い背景ではあります。
L-VOKAL”ケペラギ2″然り、テレビで披露してるMCサーモンのフリースタイル・ラップは、基本的に早口でまくし立てるスタイルが多いんで、メロウなビートで語りかけるような乗り方も新鮮かも。
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