日本語ラップにおいて、クラシック認定されるものは数あれど、エポックメイキングな作品/楽曲と括ってしまうと、そこまで多くはないと思います。
ザッと挙げていくなら、さんぴんCAMPを興すきっかけの一つとなったBUDDHA BRAND”人間発電所”、作品としては一回こっきりで終わってしまった伝説のユニット、大神の”大怪我”、今をもって金字塔的作品と言えるKING GIDDRA「空からの力」、後年になってMOUSOU PAGERという最高のファン作品(?)を生んだMICROPHONE PAGERの”改正開始”/「DON’T TURN OFF YOUR LIGHT」、いわゆる第2世代のパワーが結集したようなNITRO MICROPHONE UNDERGROUND「S.T.」、伝説的グループの唯一のアルバムとなったキミドリ「S.T.」、後に映画化もされた00年代を代表する一枚と言えるSEEDA「花と雨」辺りが思い浮かぶところですが、そんなクラシックの中でも単にリリースだけでなくリメイク、アンサーソングなどの亜流も含めて、とりわけ「語れる」ほどのバージョンが存在しているのが、LAMP EYE”証言”。
LAMP EYE自体はご存知、RINO(後年のRINO LATINA2)、GAMA(後にしれっと脱退?)の2MCと、DJ YASの3人組ながら、この”証言”に至ってはカミナリ一派からTWIGY、YOU THE ROCK、G.K. MARYANに加え、ZEEBRA、DEV-LARGEまでが参戦したポッセカット仕立てで、当時の未成熟で不遇だったシーンへの怒りをそれぞれがブチまける内容が痛快。
楽曲自体は、分かりやすいフックがあるでもなし、フル尺だと6分にも及ぶ作品でキャッチーな要素は皆無だけど、ヒップホップそれ自体がカウンター・カルチャーであるが故に、こういうトピックはそもそもリリックにしやすい兼ね合いもあり、フリースタイル的にビートジャックされることもしばしば。
そんな日本語ラップの金字塔的名作、”証言”のCDが店頭に並んだ本日11月25日、これまでに発表されてきた日本語ラップの”証言”の数々を、まとめてご紹介します。


LAMP EYE”証言”
(えん突つRECORDINGS/JPN 12″/SF001)
A-1 証言(REMIX)(feat. YOU THE ROCK, G.K. MARYAN, ZEEBRA, TWIGY, DEV-LARGE)
B-1 証言(A CAPELLA)
B-2 証言(BREAK BEATS)
まずは、言わずもがなのオリジナル”証言”(ジャケ付き/赤ラベル)!
定番ブレイク、LAFAYETTE AFRO ROCK BAND”HIHACHE”にQUINCY JONESが手掛けた、もの悲しげなボサノバ曲、ASTRUD GILBERTO”WHO NEEDS FOREVER?”のイントロ部分を合わせたシンプルなビートに、初期の雷メンバー+ZEEBRA、DEV-LARGEという当時のシーン最高峰のMC陣が、初期衝動を荒削りなままにブツけ合ったような強力なマイクリレー。
その後、アウトロのみに差し込まれるRAMSEY LEWIS”MAIDEN VOYAGE”の美しいピアノ・リフで大団円を迎える、日本語ラップ史に燦然と輝くクラシック!
当初、レコーディングの為のスタジオ代やレコードのプレス代などをECDが用立てたという話も、今となってはもはや語り草…。
12″は初期プレスが青文字ラベル(2000枚)、2NDプレスが赤文字ラベル/ジャケ有り(6000枚)で、後のCDや7″とはYOU THE ROCKのマジンガーZの替え歌箇所はもちろん、冒頭のRINOのヴァースも内容が大きく異なっています。
正しくMCが主役の楽曲で、アカペラの収録も手伝ってか(?)、スクラッチのネタとしてもこれまでかなり使われてきています。
RINO LATINA2″R.L. 2″では、ビートが一瞬だけ顔を出すパターンもありました。


ラベルはこんな感じ。

LAMP EYE”証言”
(POLYSTAR/JPN CD/PSCR-5547)
01 – LAMP EYE”証言”(feat. YOU THE ROCK, G.K. MARYAN, ZEEBRA, TWIGY, DEV-LARGE)
02 – RINO”第二戦”
03 – GAMA”マンホール”
04 – LAMP EYE”証言”(BONUS BEATS)
05 – RINO”第二戦”(REMIX)(SECRET TRACK)
12″リリースは95年で、こちらのCDは翌年の96年。
CD化にあたりRINOのヴァース変更、YOU THE ROCKヴァースのマジンガーZの替え歌箇所が消されており、12″/7″とは異なるテイクで収録(後に、DJ YASのSOUNDCLOUDでは”証言 VER.2″というタイトルで公開)。
ちなみに、何気に12″/7″にも収録されていないRINOのソロ曲”第二戦”/”第二戦”(REMIX)、GAMAのソロ曲”マンホール”はCDのみ。
“証言”と比べてしまうとさすがに分が悪いですが、”下克上”からの流れで撮り切ったような勢いのある仕上がりで、それぞれのメンバーの後年のソロ作と比較すれば相当に内容良し。
“証言”のあまりの眩しさに割を喰ってる感が否めません…。

LAMP EYE”証言”
(KP RECORDS/JPN 7″/KPR009)
A-1 証言(MAIN VERSION)(feat. YOU THE ROCK, G.K. MARYAN, ZEEBRA, TWIGY, DEV-LARGE)
B-1 証言(BREAK BEATS)
B-2 証言(A CAPPELLA)
2016年、オリジナル・リリースから20周年を記念して7″も公式リリース。
元々は、DJ YASが自身用の延長で50枚のみダブプレートで販売した7″でしたが、その反響を受け(?)、DJ YAS自身がリ・マスタリングも行って自身のKP RECORDSから、KAZZ ROCKが手掛けたCDのジャケ付きでプレス。
リリックの方は、いわゆるオリジナル・アナログ・バージョンが採用され、アカペラ/ボーナス・ビートを収録しており、正しくオリジナル12″をジャケ付き45でリメイクしたような作りになっています。

DJ YAS「DUB & BEATS」
(KEMURI PRODUCTIONS/JPN MIXTAPE/THBTHRCT-0001)
A-1 HIGHER
A-2 JUNGLE
A-3 START
A-4 HUSTLER
A-5 ELEPHANT DUB
B-1 陽炎
B-2 CHILL
B-3 DUB JUICE
B-4 WATER
B-5 証言(INSTRUMENTAL)(SECRET TRACK)
B-6 キマッ!テル ダブ
DJ YASのKEMURI PRODUCTIONSから2007年にリリースされたインストEP「DUB & BEATS」に、ノークレジットでひっそりと収録された”証言”のインスト!
何気に、これまで12″にもCDにも、ボーナス・ビートとして短尺のメインループのみしか収録されていなかったものの、こちらは(短尺ではあるものの)後半の美しいピアノ・リフまで収めた正真正銘のインスト。
この溝のおかげか(?)、同時期に出た対になるような黒ジャケのインストEP「DEADLY BEATS」よりも、当時から断然こちらが人気!

V.A.「えん突つサンプラー VOL.1」
(えん突つRECORDINGS/JPN 2CD/BNCE-8〜9)
<DISC 2>
01 – 雷”カミナリ”(PRODUCED BY DJ PAT→504)
02 – 雷”カミナリ”(PRODUCED BY DJ YAS)
03 – 雷”夜ジェット”(PRODUCED BY DJ PAT→504)
04 – 雷”夜ジェット”(PRODUCED BY DJ YAS)
05 – LAMP EYE”証言”(ORIGINAL ANALOG VERSION)(feat. YOU THE ROCK, G.K. MARYAN, ZEEBRA, TWIGY, DEV-LARGE)
カミナリ周辺メンバーのカタログを持つえん突つレコーディングのレーベル・ショウケース的一枚。
とは言え、刃頭やDELI率いるチカチカ病院みたいな正規メンバー以外も参戦しており、カミナリ本隊名義の新録も無いため、当時からそこまで大きなインパクトは無かったような…。
そんな中、2枚目のディスクに満を持して収録されたLAMP EYE”証言”のオリジナル・アナログ・バージョン。
以後、幾度もデジタル音源化されることになるものの本盤が初のCD化だったらしく、同テイクの一般層への浸透には一役買った作品と言えるかと。

V.A.「ENTOTSU MIXSHOW 2」
(えん突つRECORDINGS/JPN MIXCD/DDCE-5002)
ENTOTSU DJ’SはDJ AMEKEN+DJ MISSIE、共にバトルDJ上がりの凄腕で当時はセットでも活躍した2人が、えん突つ音源を使用した2007年のオフィシャル・ミックス・シリーズ第2弾。
すでに手垢に塗れていた感があるクラシック群の中で、エクスクルーシブとして収録された”証言”は、オリジナル・ビートにSEEDA(!)がフリースタイルを披露!
当時、まだ「CONCRETE GREEN」シリーズも続行中で、SEEDAがシーンのど真ん中に居た時期の抜擢だっただけに、それ聴きたさに本盤を購入したリスナーも多かったはずですが、肝心の内容の方は割とソツなくこなしていて肩透かしを喰らった記憶。
まあ、公式が認めたビート・ジャックということで歴史的な意義は深いか…。

RINO & DJ YAS「LAMP EYE FLAVA」
(HIBACHI/JPN CD/CCRK-0004)
01 – LAMP EYE FLAVA
02 – DROOPY DRAWERS
03 – 響言(VERSION 2)
04 – ある愛の行方
05 – SIGN
06 – OPEN YOUR 3RD EYE
07 – THE WORD TOUR
08 – INTERLUDE
09 – D.D.D.(DA DEADLY DRIVE)
10 – 日本語ラップ IS DEAD?(DJ YAS REMIX VER.2)
11 – 証言(ORIGINAL ANALOG VERSION)(feat. YOU THE ROCK, G.K. MARYAN, ZEEBRA, TWIGY, DEV-LARGE)
GAMA抜きのRINOとDJ YASのデュオ体制での、2009年の実質的リユニオン作。
“証言”のセルフリメイクと言っていい”響言”は、カミナリ直系のSHINNOSK8、妄走族の剣桃太郎ほか、次世代MCを呼び寄せ、新たな”証言”を狙ったのは明白なんですが、今となっては誰も話題にすらしない黒歴史かも…。
安易にオリジナル・ビートを使わなかったのはむしろ良かったけど、さすがにメンツがイマイチか…。
CDに先駆けてリリースされた12″の反響も微妙でしたが、CDにはまさかの”証言”のオリジナル・アナログ・バージョンが改めて収録されてて、さすがにズッコケた思い出…!

DJ REO「戦国合戦絵巻(THE BEST OF UZI)」
(UBG RECORDS/JPN MIXCD/UBGR-002)
40 – UZI”証言9″(BONUS TRACK)
今は無きURBARIYAN GYMクルーのUZIの、2000年代までのキャリアを総括したような2009年のベスト・ミックスながら、目玉はオーラスでボーナス・トラック扱いで初出となったUZIソロの”証言9″!
当時を振り返る本人の発言を見返すに、在ると噂されていた幻の”証言”の9ヴァース目(UZI THE 9MMの「9」)で、当時リリック自体は確かに「在った(準備はしてた)」そうですが、結局はレコーディングに呼ばれなかったために録音はしていなかった、というのが真相だそうな。
というわけで、この”証言9″も当時の未発表ヴァースなどではなく、新たに録音したもので少し拍子抜けではありますが、参加メンバーとの距離感などから考えても限りなくオフィシャルに近い録音物の一つではあります(実際、後年でライブに居合わせた際にはオリジナルメンバーと共に披露することも)。
1ヴァースのみではさすがに淋しいと思ったのか(?)、イントロにE.G.G. MANのシャウトが入っており、この形でしか存在していない一曲(?)となっています。


LIBRA”暴言”
(LIBRA RECORDS/JPN PROMO 12″/UBGR-002)
A-1 暴言(ORIGINAL)
B-1 暴言(A CAPELLA)
B-2 暴言(INST)
“証言”の亜流では、ダントツで2006年の本作が最高峰!
当時はまだLIBRAとの関係が良好だった漢率いるMSC周辺の、JUSWANNAや志人、韻踏合組合、SHINGO★西成辺りが本気でリメイクに臨んでいて、正しく次世代の”証言”が完成しています。
LIBRA発のV.A.「天秤録音」の抽選配布のみ、たった100枚しか存在しないという12″がそもそも貴重過ぎる!
「天秤録音」本体にも収録されず、当初よりプロモーション目的でのみ録音されたこともあり、漢のヴァースでは(名指しでこそないものの明らかに)BLAST誌を、メシアTHEフライのヴァースではDA.ME.RECORDS勢をディスり、その辺りの姿勢にもオリジナル”証言”マナーを正しく倣っていてリスペクトを感じます。
原盤の青ラベル版の再現度の高さも含め、アンサーソングとしては完璧な一枚。
ビートはT. TANAKA作で、原曲同様にASTRUD GILBERTO”WHO NEEDS FOREVER?”を使用しているものの、ビートジャックではなく新たに同ネタで組み直したもの。
ちなみに、マイクリレーの順番は、太華(口スクラッチ)〜ERONE〜SATUSSY〜HIDADDY〜MEGA-G〜メシアTHEフライ〜SHINGO★西成〜漢〜O2〜PRIMAL〜志人となっており、12″にはアカペラも搭載!
余談ですが、時系列で振り返ると本家LAMP EYEの”響言”は、この”暴言”を受けて録音されたものと考えられますが、出来としてはこちらに及ばなかったということかと。

V.A.「HARD TO THE CORE」
(BAD NEWS/JPN 3LP/DBC-026)
E-1 KAN, PRIMAL, O2, 太華, SHINGO★西成, MEGA-G, メシアTHEフライ, SATUSSY, ERONE, HIDADDY, 志人”暴言”
故DEV-LARGEことD.Lが生前に監修した日本語ラップV.A.三部作の一つ「HARD TO THE CORE」に、同作の目玉としてオリジナル”証言”ビートとブレンドした”暴言”を特別仕様で収録!
“証言”ビートを使用し、”証言”/”暴言”メンバーの(擬似)マイクリレーがDJプレイで再現が可能ということでしたが、そもそも”暴言”のプロモ12″のあまりのレアさで当時は大きな反響を呼びました。
漢やJUSWANNA作品にプロデューサーとして参加する等、生前は関係が良好だったであろうDEV-LARGEとLIBRA、それもまだ所属メンバーとレーベルが揉める前のこの時期だったからこそ実現した特大級のサプライズ。
元々、内容の危なさとプロモ配布のみを想定した作り(V.A.「天秤録音」未収録)だった上に、今となっては参加メンバーとLIBRA間の修復不能な摩擦も手伝って、さらに本テイクにおいては監修したDEV-LARGEも亡くなったとあってはオリジナル・バージョンのみならず、本作収録のバージョンも今後サブスク解禁の芽はまず無いと思われます…。

MEGA-G, MUTA, DJ 49「BASIC TRAINING」
(BOOTBANG ENT./JPN 2MIXCD/BBENT-002〜003)
<DISC 1(ILL SIDE)>
11 – MSC, I.F.K., 志人”暴言”
業界内では当時、大きな物議を醸した日本語ラップ・クラシックのリメイク・ミックス「BASIC TRAINING」に収録された”暴言”は、本編の趣旨に倣ってオリジナル”証言”ビートに差し替えた上、イントロ代わりにRINOがシャウト、太華(口スクラッチ)〜遊戯(新ヴァース)〜ERONE〜SATUSSY〜HIDADDY〜MEGA-G〜メシアTHEフライ〜SHINGO★西成〜漢〜TABOO1(新ヴァース)〜O2〜PRIMAL〜志人と展開する、オリジナル”暴言”超えの贅沢仕様で、この形でしか存在していないものの”暴言”の完成版とも言われる一曲!
すでに本盤自体がなかなかにプレミア化していますが(内容が内容だけに、サブスク解禁も再発も絶対に考えられない…)、”暴言”の収録もそんな現象に一役も二役も買っていると言えるはず。


ECCY「BONUS DISC」
(SLYE RECORDS/JPN PROMO CD/HRSY-097)
01 – CRISP
02 – AI NO SHOUGEN(feat. MCSUNDAM, あるぱちかぶと, 抹, BUTTER DOGG, TAC-CHAMPER, #0, SIMBA)
03 – SILK
ECCYは、SHING02を迎えた”ULTIMATE HIGH”でデビューしたプロデューサーで、雷周辺や”証言”に参加したレジェンドMC達とは接点が薄い世代ですが、2007年の1STアルバム「FLOATING LIKE INCENSE」の初回盤の特典CDとして自分達の世代からのアンサーソング的に”AI NO SHOUGEN(愛の証言)”を残していました(複数の特典付きのSKUが存在するので分かりにくい…)。
オリジナル”証言”ビートをジャックし、当時MCバトルなどにも参加しながらネットでラップを無料公開したり、客演仕事を重ねることで売り出し始めていた抹やあるぱちかぶとなどの若手MC陣をフックアップ。
今よりもずっとアングラでディープだったネットラップの「当時」を切り取ったような座組み(実際、当音源もフィジカル化する前に抹のブログで無料公開されていた)そのものを面白がれるかどうかで本作の評価も大いに変わってくるような。
実際、マイクリレーするMCにはスキルにばらつきがあるのは否めませんが、それも含めて味と捉えられるなら一聴の価値は確実にあります。
本作の存在自体は知っていても、実は(特典ながらも)フィジカルでCDが存在しているのはあまり知られていないかもしれません。

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