追究 … 未知のものや不明の事柄を調べて明らかにしようとすること
2025年の夏、前々から暑くなるとは聞いてたけど、ここまでとは!
盆を過ぎてもお構いなく各所で観測史上最高気温を更新、危険な暑さが続く中、脳内BGMはおのずとルーディーなレゲエっぽいものに偏ってしまうのは店主だけではないと思います。
というわけで、今回は日本語ラップのヘッズも大好きな、あの日の三木道三がリリースしたテープ作品「MIKI-FM 1997ヘルス」を紐解きます。
現在もDOZAN11として活動する三木道三は、一般層にはやはり”LIFETIME RESPECT”の印象が強いと思いますが、それ以前の90年代後半頃には日本語ラップ勢とも積極的に交流するバリバリの現場叩き上げで、当時は唯一無二と言ってもいい珍しい存在。
そんな三木道三の当時の活動の軌跡を伺い知れるのが「MIKI-FM」シリーズで。

三木道三「MIKI-FM 1997ヘルス」
(SLOW CUT PRODUTION/JPN TAPE/-)
本来クレジットはありませんが、ザッと聴いた感じ、収録曲はこんな感じ。
A-1 -/INTRO
A-2 SHOUT OUT
A-3 三木 道三/I SAY(MY GODDESS)
A-4 INTERSEPTER DUB
A-5 MAD MEDIA DUB(JAPAN一番)
A-6 三木 道三/マカセナ
A-7 三木 道三 & SOUL SCREAM/FREESTYLE
A-8 カエルスタジオCM
A-9 BONAFIDE DUB(むちゃくちゃやんけ)
A-10 三木 道三/むちゃくちゃやんけ(REMIX)
A-11 RED SPIDER DUB(JAPAN一番)
A-12 三木 道三 & MAD TIGER PONE/FREESTYLE
A-13 三木 道三 & T.A.K THE RHYMEHEAD/FREESTYLE
A-14 GUIDING STAR INTERNATIONAL CM
A-15 SHOUT OUT
A-16 SAMURAI SUPER POWER DUB(JAPAN一番)
B-1 SHOUT OUT
B-2 JAM MASSIVE DUB(三木道三 & MACHAKO)
B-3 JAM MASSIVE DUB(JAPAN一番)
B-4 三木 道三/君はもみじまんじゅう
B-5 JUSTICE DUB(DOSURUNO?)
B-6 SHOUT OUT
B-7 三木 道三 & COOL TEMPO/FREESTYLE
B-8 三木 道三 & MUMMY-D/FREESTYLE
B-9 SHOUT OUT
B-10 三木 道三/マジシャン・ド・アホウ(feat. RYO THE SKYWALKER)
B-11 BIG BANG DUB(JAPAN一番)
B-12 KING RYUKYU DUB(JAPAN一番)
B-13 三木 道三/JAPAN一番(REMIX)
タイトル通り、自身がパーソナリティーを務める擬似FMラジオ形式で、自身の楽曲と全国各地のレゲエ・サウンド・クルーの紹介(ダブ披露)、合間には日本語ラップ勢のフリースタイル、各人のシャウトも交えた珍しい構成。
で、そのバランスもレゲエ6:ラップ4ぐらいのバランスで、ジャパレゲ畑から出てきたものとしてはその時点でかなり特異な作品と言えるはず(日本語ラップ勢との交流と言えばV.I.P.の印象が強いものの、彼等でさえここまで偏ったものはDJ MASTERKEY絡みのミックステープぐらいかと)。
RANKIN’ TAXIやCHAPPY、TAKAFIN、N.G. HEAD、PAPA BON(PAPA B)、CHOZEN LEE等のジャパレゲ勢に加え、RHYMESTERやらSOUL SCREAM、NAKED ARTZ、TOKONA-X、MC Q(ラッパ我リヤ)、SHING02(!)辺りの日本語ラップ勢までが駆けつけたシャウトのパートだけでも聴き応えがあります。
そこに至るには、大和レコーディングス主宰にしてDRUM METHOD名義で表舞台でも活躍したブレーン、関西シーンでは日本語ラップ~ジャパレゲ界隈の両方に顔が利いた山本克則氏の存在は大きかったはずですが、三木道三のジャパレゲ界隈において特に(いかにも日本語ラップ的な)韻を意識したスタイルと、異文化交流ウェルカムな姿勢が日本語ラップ・シーンでとにかくウケて、勢い余ってFRONT誌でも取り上げられた程。
パーソナリティー風のMCパートでも放り込んでくる駄洒落感覚の韻遊びは楽曲内でももちろん披露されてて。
他のジャパレゲ作品でも韻を踏むのは一般的だけど、90年代後半から日本語ラップ勢と積極交流して韻マナーを吸収、持ち帰って自身のスタイルにまで高いレベルで昇華していたのは、やはり三木道三が唯一無二だったかと。
ある意味、ヒップホップ以上に(盛り上がれば)何でも有りなレゲエらしいアプローチとも言えるし、それがどっちの界隈でも受け入れられたのだから、当時としてはやはりかなり特殊なケースだった気がします。
折角なので、当時の三木道三の特徴的なパンチラインもいくつか抜粋しときます。
「獣のように、動くだけだもの、ラクラクチンチン(犬の鳴き声)、ええやん」
“いいじゃん”(セクハラミックス)「笑う門に男来たる、水も滴る俺楽しましたる、三木に任せてみるかお嬢さん、君を泣かせやしないぜ道三」
“キミにミキ”「褒めてあげる、寄せて上げる、ブラジャーしてるって俺は知ってる、騙したってムダじゃー」
“マカセナ”「あー、また鼻垂れた、しかし言葉は放たれた」
“花粉症ビートボックス”「三木道三は待望の風来坊、サイボーグのような脳細胞、解剖してみ俺の内臓、財宝出るかもしれないぞ」
“三木道三スタイル ’96″(2001年版でも再利用)
時系列で関連作品を遡っていくと、かなり韻が堅い時期とそうでもない時期があって。
やっぱり日本語ラップ勢の積極的に絡んでた時期(97〜00年ぐらい?)に目立っていた印象だから、そこで韻の面白さに気付いたり、日本語ラップ界隈のファン層を獲りにいったのかなと(実際、”LIFETIME RESPECT”の大ヒット以降は韻が目立つ楽曲はほぼ無し)。
ただ、この時期はまだ韻重視の日本語ラップ勢もT.A.K THE RHYMEHEADやラッパ我リヤ(奇しくも両者共に「MIKI FM」の97/98年版に皆勤)が居たぐらいで、韻踏合組合やICE BAHN辺りはまだ第一線ではない頃。
実際、同郷・奈良のEVISBEATSは明らかに(当時の)三木道三からの強い影響を感じるし、自身のソロ曲”DO THE HIPHOP”で三木道三の声ネタをフックに据えてたり、”ギャーテーギャーテー”/”ちょうどYEAH!”では直接リリックも提供してもらっていたりと、2010年代以降にもその遺伝子を感じることができるような。
今でこそMCバトルでジャパレゲ勢が参戦するのも珍しくないですが、90年代後半はまだそれぞれのシーンは別々に存在して、クロスオーバーすることがまだ少なかったからこそ三木道三は特別な存在だったわけで(もちろん、もっと遡ればV.A.「CHECK YOUR MIKE」があったり、個別の交流は単発では存在していましたが)。
“LIFETIME RESPECT”はジャパレゲの裾野を広げた一曲として確かにエポックメイキングではあったにせよ、そんなヒットが生まれておらず、一時の活動休止もなかった世界線が在ったなら、三木道三が今頃は一体どんな存在になっていたのかは興味深いところ。
その後にリリースされたCD(試験放送と1998MEGAヘルス)の方も紹介しておきます。

三木道三”いいじゃん”(MIKI FM 試験放送)
(FLYING HIGH/JPN CDS/FLH-5)
01 – OPENING
02 – いいじゃん(セクハラミックス)(feat. 歌丸, T.A.K THE RHYME HEAD)
03 – いいじゃん(女喰いミックス)(feat. 歌丸, T.A.K THE RHYME HEAD)
04 – むちゃくちゃやんけ ’98
05 – いいじゃん(セクハラミックス)(INST)
06 – いいじゃん(女喰いミックス)(INST)
97年に12″でリリースされたRHYMESTERのMC SHIROこと歌丸(宇多丸)とT.A.K THE RHYMEHEADを迎えた下ネタソングのCD(写真は2000年の再発)。
“いいじゃん”の両テイクに関しては、後の「MIKI-FM 1998MEGAヘルス」に収録されているものと基本的に同じなので特に言うことはありませんが、CDのオープニングで少しだけFMスタイルを披露してるのと、その入りがK-DUB SHINE「現在時刻」まんま(と言うか、オリジナルはもちろん映画「BLACK RAIN」の松田優作のセリフ)だったりと、ちょっとだけど確実にあの「MIKI-FM」をやってるんで揃えて損はないかと。
ちなみに、以降に定番化してる”むちゃくちゃやんけ”の98年版(曰く、上半期の内容のみ)は、7″などでも存在せず、後のアルバムにも収録されなかったレアなバージョンで。
リアルタイムで世相を斬る”むちゃくちゃやんけ”は時事ネタなんで、正直一生できるフォーマットなんですが、2025年時点で公式に複数のバージョンがリリース(公開)されており。
“むちゃくちゃやんけ ’96”
“むちゃくちゃやんけ ’98”
“むちゃくちゃやんけ ’01”
“むちゃくちゃやんけ ’14”
“むちゃくちゃやんけ 2020”
時系列で聴いていくと、(自身を取り巻く環境などのことも多少関係しているのかもしれませんが)オケも歌詞もどんどんシリアスになっていくのが分かります(2020年はYOUTUBE公開のみでコロナの話なので、ちょっと扱い違うけど)。
まあ、この30年間がいかにむちゃくちゃな世の中だったかを改めて象徴している気もして。
ヒップホップ界隈でいくと、似た感じで思い出すのはSKILLZ”RAP UP”シリーズだけど、それが始まったのが2002年だということを踏まえると、”むちゃくちゃやんけ”がいかに早かったかが分かると思います。
話を戻すと、98年版には後半に不意に「自殺してもうた伊丹十三、俺の心の痛み言うぞう、もう観られへんねんなあ、泣いたり笑ったりする彼の映画、もっと他に世間には死んだ方がイイ奴居るのになあ」なんて強烈な(正に)殺し文句が放り込まれてきたりするんで要注意。

三木道三「MIKI-FM 1998MEGAヘルス」
(BANZAI MUSIC/JPN CD/APCA-217)
01 – INTRO
02 – キミにミキ(feat. REENA)
03 – いいじゃん(セクハラミックス)(feat. 歌丸, T.A.K THE RHYMEHEAD)
04 – むちゃくちゃやんけ ’96
05 – 君はもみじまんじゅう
06 – へべれけでいけ
07 – いいことあるかも(feat. MAMA COOK)
08 – JAPAN一番 ’96
09 – いいじゃん(女喰いミックス)(feat. 歌丸, T.A.K THE RHYMEHEAD)
10 – 三木道三スタイル ’96
11 – マジシャン・ド・アホウ(feat. RYO THE SKYWALKER)
12 – I SAY(MY GODDESS)
97年のテープ版、試験放送と間髪入れず、MEGAヘルスとしてCD化した98年版も基本的にはタイトル通り、擬似FMスタイルは踏襲。
ただし、今回は全国各地のレゲエ・サウンド・クルーのダブではなく、三木道三自身の楽曲を総浚いした実質的ベスト盤的作りで、合間に入れてくるシャウトもテープ版から引き続いてのRHYMESTERにSOUL SCREAM、T.A.K THE RHYMEHEAD、MC Q、TOKONA-X辺りからZEEBRA、YOU THE ROCK、K-DUB SHINE(!)、DEV-LARGE(!!)等までも新たに呼び込み、さらにパワーアップしています。
恐らくは「MIKI-FM 1997ヘルス」が日本語ラップ界隈でウケたことを意識し、こちらはかなり日本語ラップの市場にアピールした作りで、(なぜか)FRONT誌の編集部とのやりとり(?)が長々と収録されていたり、生粋のジャパレゲ層からすると?な部分もあると思うのですが、ミックステープ的な感覚でこれまた日本語ラップのヘッズにウケていた印象があります。
ただ、早々に廃盤になって、後年に実質的にFM要素だけを抜いたほぼ同選曲のベスト盤「三木道三スタイル 1995-1998」をリリースしてて。
後年に自らSNSで、参加者で揉めて追加プレスできなかった事実を暴露しているので、そういうことか、と…!
そんな後日談的な業界の闇をさておき、作品そのものはテープ/CD共に最高で、日本語ラップ/ジャパレゲ界隈をシームレスで繋ぐ、本シリーズにしか無いアイリーな世界観があると思います。
しかし、7″のみで存在してるキャリア初期の下ネタソング”マカセナ”をCD版ではキッチリ外してる辺り、歌詞の内容に加えて、替え歌の権利関係も考慮したのだと思われますが、微妙にテープとCDで収録曲をズラしてる(結果的にズレただけ?)のが後の大ブレイクにも影響を与えているであろうことを考えると、今となってはその辺りも含めて興味深く聴けますな。


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