本日5月31日は、調べてみるとMEGA-G(& T.TANAKA名義)の「JUSWANNA IS DEAD」のリリース日で(2012/05/31)。※CDのリリース日
本作は、日本語ラップ・シーンにファンド形式のリリースを持ち込んだCPFことCREATIVE PLATFORMのリリース第1弾作品で、後期カタログにおいては何かと物議を醸したレーベルではあるものの、当初は「アーティストの作品のみならず、制作工程の体験を含めパッケージして出資者に届ける」って試みがフレッシュだったし、作品のクオリティーも出資額相応(もしくはそれ以上)で、非常に満足度の高い内容だったからこそ、カタログ末期のレーベル運営としてのグダグダ感は本当に残念だったわけで。
ただ、(個人的にも早くから懸念してた)「ファンド形式で一般に流通されない中で一部にのみ限定リリースされた作品が、その後アーティストのディスコグラフィーにおいてどんな扱いになるのか?」という問題をクリアしていない中で走り出してしまったのか(?)、正にそんな課題が表面化したようなI-DEA「DEATMOSPHIA」の件だったり、SEEDAやDOWN NORTH CAMP作品の度重なるリリース遅延もあって、アイデアは良かったんだけど少し詰めが甘かったな、と。
まあ、CPFのそっち系の話ではなくて、本日は「JUSWANNA IS DEAD」の件。
いやあ、アレからもう11年も経ちましたか…!
MEGA-G & T.TANAKA「JUSWANNA IS DEAD」
(BOOTBANG ENTERTAINMENT & CREATIVE PLATFORM/JPN CD/CPF-001)
01 – JUSWANNA IS DEAD
02 – IRON CHEF
03 – PEACE TO DA HARDCORE(feat. 仙人掌, KGE THE SHADOWMEN, DJ TY-KOH)
04 – TOKYO HEADLINE NEWS
05 – MYSTERY CIRCLE(未知との遭遇)(feat. JUBE, KILLAHBEEN, B.D.)
06 – WORLD IS COLD
07 – HOW HOW HIGH PT.2(feat. BES)
08 – イイトビユメキブン
09 – TOKYO TALKER
10 – TOKYO WALKER
11 – FAT FOR THE 00’S
ジャケはFABOLOUSの2010年ミックステープ「THERE IS NO COMPETITION 2」を引用、CDのフィジカルでは会員限定で600枚のみ(当初400名募集で即完、二次募集で200名追加)しか存在していない一枚。
その後にリリースされた「RE:BOOT」の扱いを見ていると、本作はT.TANAKAとの連名、あくまでミックステープという認識みたいなんですが、JUSWANNA殺しの戦犯として独り立ちの決意表明的な作品で、それが当初はファンに向けたファンド形式で作られたという背景も含めて激熱。
旧ブログで、店主もCPF会員の一人としてオンタイムで本作を耳にして、レビューしていたのでそちらを再掲します。
01 – “JUSWANNA IS DEAD”
「真っ黒な箱の蓋を閉めて休憩 今の俺の横にいない救世主」という象徴的なラインで幕を開ける”JUSWANNA IS DEAD”は、あくまで本作のプロローグ。
イントロ代わりの短編曲とは言え、ギョッとするようなワードを次々持ってくる言葉選びの妙は、三ツ星シェフの面目躍如。
不意に挿入される「ここに来て初のソロデビュー」の声ネタは、もちろんMURO”第三段落97ページ”の一節。
02 – “IRON CHEF”
T.TANAKAとのコンビを、自ら「くたばり損ない東京アンダーグラウンド・ヒップホップのゾンビ」と名乗る”IRON CHEF”は、確かにJUSWANNA作品を踏襲するようなアンダーグラウンド感が強くて、
MEGA-Gらしいパンチラインが連発されるフリースタイルなノリのセルフボーストもの。
フックの声ネタはKRS-ONE”STEP INTO A WORLD”からの「A DOPE MC IS A DOPE MC」、BOMBRUSH!”SPREAD DA SHINE”からの「一秒でも多く握るM・I・C」(ANARCHY)等。
03 – “PEACE TO THE HARDCORE”(feat. 仙人掌, KGE THE SHADOWMEN, DJ TY-KOH)
タイトル通り、ハーコーなヘッドバンギンビートで千人掌、KGE THE SHADOWMENとマイクリレーする、本作の文句無しのハイライト!
きっちりと仕上げるトリのMEGA-Gヴァースは、安定感すら感じさせる横綱相撲で、各MCを呼び込むホストのDJ TY-KOHも、”24 BARS TO KILL”(REMIX)よろしくのハマリ役になっています。
KRS-ONE”HIPHOP VS RAP”からの「GOING OUT TO THE HARDCORE HIPHOP」、NOTORIOUS B.I.G.”MACHINE GUN FUNK”からの「SO YOU WANNA BE HARDCORE」等の声ネタもドープ。
04 – “TOKYO HEADLINE NEWS“
両マイクリレーを繋ぐ箸休め的スキット、小休憩。
05 – “MYSTERY CIRCLE(未知との遭遇)“(feat. JUBE, KILLAHBEEN, B.D.)
MEGA-G~JUBE~KILLAH BEEN~B.D.とマイクがリレーされるポッセカットながら、”PEACE TO THE HARDCORE”とはまた違った味わい。
“PEACE TO THE HARDCORE”が「動」なら、”MYSTERY CIRCLE(未知との遭遇)”は明らかな「静」。
淡々としたマイクリレーはタイトル通り、読解不能な妖しげな雰囲気で、JUBEのヴァースに至っては歌詞カードにも掲載不可能…!
06 – “WORLD IS COLD“
タイトル通り、ひんやりした温かみのないビートで現行シーンのリアルをレポートするような一曲。
不意に飛び出す「ジーンズ、セールス、一層細くなるヒップホップなんて見たくねぇよ、ちっとも ただし、何でも時代のせいにする奴等とは明らかな違いを提示」なんて小憎いラインや、アウトロには本作にかけるMEGA-Gの気概が伝わってくるようで頼もしくもあり。
リリックの内容から言っても、本作の裏テーマ曲と言えるかも。
07 – “HOW HOW HIGH PT.2“(feat. BES)
BESを迎えて、彼のクラシックを更新。
前作はメシアTHEフライが参加していたというだけで面白い布陣だけど、抑揚を抑えた作りは前作よりも温度は低め、中毒性は高め。
ちなみに、会員への特典(フリーDL)だった同名曲は、同じリリックでMETHOD MAN & REDMAN”HOW HIGH PT.2″をビートジャックしたプロトタイプ的な内容でした。
08 – “イイトビユメキブン“
タイトルからしてクラシック、\”HOW HOW HIGH PT.2″でキマッた後は、ゆるゆるにチルして夢気分って感じか。
スターウォーズ、オバマ大統領、JANET JACKSON、CHRIS TUCKER、ICE CUBEの主演映画「FRIDAY」、CHEECH & CHONG等、一見無作為に並べられたような引用からMEGA-Gの生活感が滲み出ているようで、妙に親しみやすくて人懐っこい感じも。
ともかく、客演参加したPRIMAL”ブッダで休日”に続く、MEGA-Gのブッダ讃歌クラシックと言っていいはず。
09 – “TOKYO TALKER“
次曲”TOKYO WALKER”への助走的スキット。
10 – “TOKYO WALKER“
タイトル通りの東京賛歌!
かの「BASIC TRAINING」でECD”東京っていい街だなぁ”のリメイクが秀逸だったように、MEGA-Gの東京への想いは相当なもので、サラリと読み込んだSOUL SCREAM”TOU-KYOU”からの引用「目の前のお前に問う今日 地に足ついてるか、この東京」ってラインもクール。
11 – “FAT FOR THE 00’S“
トリを飾る”FAT FOR THE 00’S”はバック・イン・ザ・デイもので、無名時代からU.B.G.キャンプへの合流、JUSWANNAの誕生から死亡(復活も示唆?)までのストーリーを回想する内容。
本作を、ここまでのキャリアを総括したような楽曲で締め括る展開自体が胸熱ですが、特に自身が無名だった頃の1ヴァース目のリリックに心を打たれるリスナーは多いと思います。
せっかくなんで、一般発売されたインスト付きの2LP、CDのREMIX盤も紹介しておきます。
MEGA-G & T.TANAKA「JUSWANNA IS DEAD」
(BOOTBANG ENTERTAINMENT & CREATIVE PLATFORM/JPN 2LP/CPFSO-001)
A-1 JUSWANNA IS DEAD
A-2 IRON CHEF
A-3 PEACE TO DA HARDCORE(feat. 仙人掌, KGE THE SHADOWMEN, DJ TY-KOH)
A-4 TOKYO HEADLINE NEWS
A-5 MYSTERY CIRCLE(未知との遭遇)(feat. JUBE, KILLAHBEEN, B.D.)
A-6 WORLD IS COLD
B-1 HOW HOW HIGH PT.2(feat. BES)
B-2 イイトビユメキブン
B-3 TOKYO TALKER
B-4 TOKYO WALKER
B-5 FAT FOR THE 00’S
C-1 JUSWANNA IS DEAD(INSTRUMENTAL)
C-2 IRON CHEF(INSTRUMENTAL)
C-3 PEACE TO DA HARDCORE(INSTRUMENTAL)
C-4 TOKYO HEADLINE NEWS(INSTRUMENTAL)
C-5 MYSTERY CIRCLE(未知との遭遇)(INSTRUMENTAL)
C-6 WORLD IS COLD(INSTRUMENTAL)
D-1 HOW HOW HIGH PT.2(INSTRUMENTAL)
D-2 イイトビユメキブン(INSTRUMENTAL)
D-3 TOKYO TALKER(INSTRUMENTAL)
D-4 TOKYO WALKER(INSTRUMENTAL)
D-5 FAT FOR THE 00’S (INSTRUMENTAL)
タイトルに肖ってCDはジャケ違いで、2LPはDE LA SOULの2NDアルバム「DE LA SOUL IS DEAD」を(ラベルも含めて!)サンプリングしたアートワークが小憎い!
DE LA SOULは向日葵だけど、MEGA-Gはお供えによく使われる菊(白)に変更している点にも注意。
MEGA-G & T.TANAKA「JUSWANNA IS DEAD REMIX」
(BOOTBANG ENTERTAINMENT & CREATIVE PLATFORM/JPN 2CD/CPFSO-002)
01 – JUSWANNA IS DEAD(REMIX) REMIXED BY MUTA
02 – IRON CHEF(REMIX) REMIXED BY GRUNTERZ
03 – MYSTERY CIRCLE(未知との遭遇)(REMIX)(feat. JUBE, KILLAHBEEN, B.D.) REMIXED BY CARREC
04 – PEACE TO DA HARDCORE(REMIX)(feat. 仙人掌, KGE THE SHADOWMEN, DJ TY-KOH) REMIXED BY OMSB’EATS
05 – WORLD IS COLD(REMIX) REMIXED BY HUMUKI
06 – HOW HOW HIGH PT.2(REMIX)(feat. BES) REMIXED BY 熊井吾郎
07 – イイトビユメキブン(REMIX) REMIXED BY YOUNG-G
08 – TOKYO WALKER(REMIX) REMIXED BY 16FLIP
09 – FAT FOR THE 00’S(REMIX) REMIXED BY DJ OLDFASHION
10 – GAME MAKER(feat. ROYCE DA 5’9″)
限定1500枚リリース(うち、初回の予約注文700枚分のみ特典でインストCD付き)、豪華リミキサー陣を迎えて、スキットを除いた8曲全てのREMIXに加え、完全な新録としてT.TANAKA作のビートでROYCE DA 5’9″(!)と絡んだ”GAME MAKER”を収録。
オリジナル盤のCDはいくつか特典も付けてファンド形式で先に発表して、LPとREMIX盤(CD)を限定ながら一般発売するという展開は、今にして考えてもよく練られていて巧いな、と。
(当初の予定で)ファンド形式で400人集めて原盤の制作費さえ担保できれば、リミキサーのギャラのみでREMIX盤が出来て、その特典でも使ったインストを加えて2LPにする分にはコストはプレス代のみなんで、仕上げた音源をフル活用してうまく回してる感じ。
実際、作品の完成度込みでCPFの第1弾リリースは(恐らくビジネス的にも)大成功だったわけで、第2弾リリースも再びMEGA-Gがリリース形態ごと踏襲していく運びになるんですが、その辺りの検証はまた次の機会に…。
後日談として、ファンドでのリリースから10年を機に、2022年6月にサブスク解禁され、晴れてMEGA-Gとしても公式ディスコグラフィーに載った感じ(その後、翌7月にはREMIX盤もサブスク解禁)。
CPFというよりも出資者600人に対して、10年間は仁義を切ったMEGA-Gの義理堅さ(PRKS9経由で事前アナウンスも有り)も含め、本作に関しては良い思い出しかありません。
コメント