本日8月31日は、かせきさいだぁの記念すべきデビュー作「かせきさいだぁ(S.T.)」のLP(初!)リリース日(2024/08/31)!
奇しくも、当時(広義では)同じ渋谷系とカテゴライズされた小沢健二の傑作「LIFE」の再発と同日リリースという、90年代に思春期を過ごしたベテラン勢はその背景だけでグッとくるであろう感動の一枚。
最初にリリースされたNATURAL FOUNDATION盤は95年11月20日、出直したTOY’S FACTORY盤(“さいだぁぶるーす”/”近未来をぶっとばせ”/”冬へと走り出そう”の3曲追加で曲順/ジャケ違い!)は96年9月1日リリースってことで、そこにはいまいち掛かってない(強いて言うなら後者のメジャー盤と同日リリースしたかったけど日曜日だったから前倒した?)んだけど、8月最終日に日本語ラップ史上屈指のサマークラシック”じゃっ夏なんで”を含む1STアルバムがLPで聴けるなんて、これこそ”夢の夢の夢の夢”…!
というわけで大興奮の中、リマインドします(本日2枚目)!
かせきさいだぁ「かせきさいだぁ(S.T.)」
(AWDR/LR2/JPN LP/DDJB-91250)
A-1 ディグ・ダグ・プーカ(feat. TAKE1)
A-2 土曜日のかせきさいだぁ
A-3 HAPPY END
A-4 苦悩の人
A-5 夢の夢の夢の夢
B-1 相合傘
B-2 TONEPAYS GUITAR
B-3 冬へと走り出そう・再び
B-4 水色のいろおぜ
B-5 じゃっ夏なんで
今となっては編集されたTOY’S FACTORY盤仕様でLP化して欲しかったというのが本音ですが、そこは大人の事情なのか(?)、ジャケも含めてNATURAL FOUNDATION仕様。
正直、この内容だと”じゃっ夏なんで”収録のEPや”苦悩の人”(TONEPAYS名義)が収録されたV.A.「CHECK YOUR MIKE」のプロモLP(通常LPには未収録)を所持しているマニアには、そこまで美味しくないんですけど、まあね…。
全曲レビュー
A-1 “ディグ・ダグ・プーカ”(feat. TAKE1)
NATURAL FOUNDATION盤の幕開けを飾る”ディグ・ダグ・プーカ”は、LB NATIONクルーのCARTOONSメンバー、TAKEI GOODMANことTAKE1を迎え、ニュースクール風味のキャッチーなビートでハンドクラップを促すパーティーチューン!
景気付けとばかり、ILLICIT TSUBOI(!)が擦るBEASTIE BOYS”FIGHT FOR YOUR RIGHT”の「KICK IT」のパンチラインは、盟友スチャダラパーが一寸早く”KICK IT, JAWS”で使用していたことでもお馴染みのはず。
(なぜか)インストのみEPに収録されていました。
A-2 “土曜日のかせきさいだぁ”
キャリア最初期に、かせきさいだぁが在籍したTONEPAYSの忘れ形見!
後の”苦悩の人”や”TONEPAYS GUITAR”然り、当時はTONEYPAYS時代の楽曲も入れちゃえ的な感じだったんでしょうけど、STEVE JORDAN”PURA JALEA”(ヴァース部分はMILLENNIUM”TO CLAUDIA ON THURSDAY”)を使用した陽気なビートがキャッチーで、コレはまあ完成してたら作品として出したかったであろうことも分かる!
LPにも付いてる、本人よる曲解説からも一部抜粋します。
この曲は’93年に”TONEPAYS”(ボクが”かせきさいだぁ”の前に在籍していたバンドで’93年12月30日の浜松LB祭りのステージ後解散)が作った最後の曲で、そのトラックを木暮さんに新しく作ってもらったものです。
木暮さんとは、HICKSVILLEのバンドマスターでフィッシュマンズやORIGINAL LOVEのサポートメンバーとしても活躍するギタリスト。
後に、かせきさいだぁとはトーテムロックを結成する旧知の仲。
A-3 “HAPPY END”
自身のはっぴいえんど愛が爆発した、タイトルまんまな”HAPPY END”は、TRACY CHAPMAN”ALL YOU GONNA GO MY WAY”を使用したインスト曲。
決して大ネタと呼ばれるほど使用例があるわけじゃないMAGICTONES”GOOD OLD MUSIC”のドラムブレイク使いは、やっぱりJUNGLE BROTHERSを意識した?
ナイチョロ亀井、’92年”TONEPAYS”唯一のインスト曲。傑作。ボクもみんなも大好きな曲なので、このアルバムに入れました。
A-4 “苦悩の人”
続いて、はっぴいえんど愛爆発!
先だってV.A.「CHECK YOUR MIKE」にTONEPAYS名義で提供していた一曲で、今度はモロに、はっぴいえんど”風をあつめて”のギターリフを使用。
「CHECK YOUR MIKE」が92年リリースなんで、そっちを聴く限り、その時点でほぼほぼ完成していたことが分かります。
’90年”TONEPAYS”の最も初期の作品。歌詞も曲もアレンジも、当時のデモテープのまんま!決定版です。元”TONEPAYS”の光嶋崇も参加。
ちなみに、光嶋崇は、日本語ラップ史に残るドキュメンタリービデオ「さんぴんCAMP」のディレクターにして、スチャダラパーのBOSEの実弟でもあります。
A-5 “夢の夢の夢の夢”
ドラムマシーン一本で組んだようなチープな電子ビートに、かせきさいだぁの歌心が発揮された一曲。
後にはアルバムまるごとアニソンカヴァーな作品もリリースするかせきさいだぁなんですが、デビュー当時からその予兆は十分確認できたわけで。
いかにも宅録っぽい質感ですが、後述する蔵出しされたデモテープ音源には入ってなかったんで、デビュー作の制作にあたって新たに録音されたものだったのかな。
プロデュースも歌詞も、ホフディランのワタナベイビーこと渡辺慎によるもの。
B-1 “相合傘”
裏返してB面の頭も、はっぴいえんど愛爆発!
はっぴいえんど曲からいただいたタイトルに、メンバー鈴木茂の”ウッドペッカー”のギターリフを拝借した一曲(プロデュースはTOKYO NO.1 SOULSETの川辺ヒロシ)。
フックにはSTEVE MILLER BAND”GOING TO THE COUNTRY”のホーンを差し込み、和洋折衷の塩梅がなんとも、かせきさいだぁらしいバランス。
クレジットはありませんが、プログラミングは光嶋崇の仕事なんだとか。
B-2 “TONEPAYS GUITAR”
恐らくはTONEPAYS時代の一曲ですが、ド頭からTAKING HEADS”ONCE IN A LIFETIME”を使用した勢いのある作り。
歌い出しの「二十歳を過ぎた自慰行為」というフレーズは後の”冬へと走り出そう”でも再利用されるんですが、デモテープ音源の段階から確認できるんで、TONEPAYS時代から気に入ってた使ってたパンチラインだった模様…!
ブツッと突然切れたように終わるのは、デモテープ音源から同じなのね。
’91年の”TONEPAYS”の曲。苦悩の人の次の次に作った曲でこれもかなり初期の作品。
B-3 “冬へと走り出そう・再び”
何気に初アナログ化となる、本LPの個人的目玉曲!
“冬へと走り出そう”はEPに収録されてましたが、こっちはCDのみで長年歯ぎしりしてたのは店主だけではないと信じたいんですけど、LEON RUSSELL”BLUEBIRD”を使用したビートが最高に爽やかで、冬に向かう秋口のBGMに最適。
言うまでもなく、LB NATION揃い踏みのポッセカット”GET UP & DANCE”のTONEPAYSヴァースと重複するラインも多数有り、そんな背景も含めて御馳走…!
「スチャダラ外伝」の中の”GET UP & DANCE”という曲でラップした詞が気に入っていたので1年前に書き足して完成した曲です。原曲の”冬へと走り出そう”は、ホフディランの渡辺くんに作ってもらった曲で、今回はアナログ(EP)の方に収録してあります。
B-4 “水色のいろおぜ”
こちらもチープな電子ビートで、”夢の夢の夢の夢”をスローダウンしたような仕上がりで、はっぴいえんど”外はいい天気”から着想を得たような歌詞も良き。
こちらはホフディランの小宮山雄飛プロデュース。
B-5 “じゃっ夏なんで”
恐らくは、はっぴいえんど”夏なんです”に独自解釈でアンサーしたであろう、スチャダラパー”サマージャム ’95″と双璧を成す日本語ラップ屈指のサマーアンセム!
ネット上では(なぜか)GROVER WASHINGTON JR.”JUST THE TWO OF US”の組み替え説が流布されていましたが(違うけど、確かに雰囲気は似てる)、正しくはGARY BURTON & STEPHANE GRAPPELLI”BLUE IN GREEN”。
静岡県中川根のお祭りをモチーフにした曲です。’95年、最近の曲。
自身の解説がビックリするほど淡白…!
かせきさいだぁ自身もこれほどのサマーアンセムになるとは思ってなかった、ということでしょうかね。
余談ですが、編集されたTOY’S FACTORY盤はリマスタリングされて、2013年に再発しているんですが、その時の特典としてキャリア最初期のデモテープ音源の「淡水魚水族館にて」(白盤CDR)で付いてて。
個人的には特典に釣られて即買いしたんですが、(少なくても日本語ラップ界隈では)殆ど話題にならなくて、かなり驚いた記憶があり。
完全にTONEPAYS時代の音源でしょ、とコレはお宝だと店主は確信してたのに、けっこう色々残念だったんで(作品の内容が、という意味ではなく)、折角なのでそちらも載せておきます。
かせきさいだぁ「淡水魚水族館にて」
(-/JPN CDR/-)
01 – いんとろ
02 – 土曜日のかせきさいだぁ
03 – 相合傘
04 – 土曜日のかせきさいだぁ
05 – INTRO
06 – TONEPAYS GUITAR
07 – 毎日泳ぐ
08 – 苦悩の人
09 – 苦悩の人
10 – 宇宙の法則
11 – 風力
スキットを含めた全11曲ですが、”いんとろ”/”INTRO”という2曲があるんで、2本分のデモテープをまとめて収録したとか、そんなんかな。
再発当時から現在に至るまで、「デビュー前のデモテープ「淡水魚水族館にて」から11曲を収録した特典CDR」としか説明が無く、本人の口からも語られてないんで詳細が分からず。
ただ、”土曜日のかせきさいだぁ”ではBUFFALO SPRINGFIELD”FOR WHAT IT’S WORTH”を使用してたり、いまだ未発表曲のままになっている”毎日泳ぐ”ではBOB JAMES”TAKE ME TO THE MARDI GRAS”の上でラップしてたり(逆に2枚使いしてないのが妙に新鮮…!)、2NDアルバム「SKYNUTS」に収録された”宇宙の法則”(SLY & THE FAMILY STONE”(YOU CAUGHT ME)SMILIN'”使用!)も収録されてたり、”苦悩の人”ではデモの時点でほぼほぼ完成形が聴けたりだとか、この時点ですでに只ならぬセンスが確認できます。
コメント