岡林信康”ホビット” – 日本語ラップ以前【5】

岡林信康_金色のライオン_表
岡林信康_金色のライオン_裏

岡林信康「金色のライオン」
(CBS・SONY/JPN LP/SOLL 52)

A-1 あの娘と遠くまで
A-2 君の胸で
A-3 まるで男のように
A-4 ホビット
A-5 ユダヤの英雄盗賊バラバ
B-1 黒いカモシカ
B-2 見捨てられたサラブレッド
B-3 どうして二人はこうなるの
B-4 金色のライオン
B-5 26ばんめの秋

MURO & 猪野秀史曰く「恐らく、これが日本で最初のラップ」。

73年(昭和48年!)リリースの「金色のライオン」から。
かつてEYESCREAM誌のMUROと猪野秀史の対談企画で、「恐らく、これが日本で最初のラップ」と紹介されたことで知られ、当時の学生運動の熱を約7分半のストーリーテリングで語る実験的な内容。

フォークってプロテストソングも多いし、個人的には昔からレベルミュージックとしてヒップホップと近い精神性を持ってる気がしてるんですけど、サウンド面で一聴してカントリーっぽい聞こえだったりするから、一般的にはヒップホップとの距離感がどうしても遠く(レゲエとは親和性が高いけど)。
そんなことで、どうしても本カテゴリーでもコミックソングやニューミュージックの延長としてのラップ的作品を取り上げることが多いんで、今回はちょっと毛色が違う感じかもしれません。
改めて聴き返しても、単なる早口歌唱ってよりは、もっと打楽器的に音にハメてくる部分だったり、隙間に歌詞を詰め込んでくる部分もあったりして、確かにかなりラップ的なアプローチにチャレンジしているんで、70年代としては相当に先鋭的な楽曲だったかと。

ラップ(風)パートのみ抜粋すると、こんな感じ。

誰でもいいから会いたくなって、ふらりと外へ出た
ゴールデン街に出掛けるような、そんな気分で
うろつき廻っているうちにホビットの前に出た
ドアを開けると様子がおかしい、ワイワイのガヤガヤ
裸電球がいっぱい灯った店の中
男はみんなゲバ棒手に持ち、頭にゃヘルメット
何でも内ゲバ騒ぎで昨日店が襲われて
これから金沢大学に仕返しの殴り込み
ヘルメットに身を固めゲバ棒、肩に抱き
可愛い娘ちゃん等の黄色い声に送らぁれぇてん
どんより曇って薄ら寒い風の中を
金沢大学目指してみんな消えてった

ポツンと一人残された、男は俺一人
可愛い娘ちゃん等がモジモジしながら周りに寄ってきて
「岡林さんも行ってくれはると、ほんまに嬉しいわ
私らおにぎり作って、みんなの帰りを待ってるの」
恥ずかしそうに瞳をうるませ、鼻の穴広げ
俺等の顔をポーッと見ながら、みんなで言わはんにゃ
なぁんでわいはこのテの女に尊敬されるのか
それでもまあまあ悪い気になるわけもありません
ここで期待を裏切ることはなんだか可哀想
よせばいいのに生まれて初めてヘルメットを被り
可愛い娘ちゃん等に格好つけてお手々を振りながら
ホビットからゲバ棒担いで金沢大学へ

岡林信康”ホビット”(RAP 1VERSE)

歌詞の中に「岡林さん」とか「金沢大学」みたいな固有名詞が出てくるんで、フィクション(か、限りなくそれに近い架空の話)で当時の学生活動家の日常を歌ったストーリーテリングという感じか。
73年リリースだけに、韻の概念自体がまだなかった(?)時期かもしれませんが、単に自分視点で物語を時系列に追っていく作りなんで、改めて歌詞を読み返してどうこうっていうのはあんまりないかな。

ちなみに、タイトルの”ホビット”っていうのは当時、学生運動家の溜り場になっていたらしい飲み屋の名前らしく。
田我流と在日ファンクの浜野謙太の対談(LIQUIDROOM)でも話題に挙がったりして、何気に日本語ラップ~和モノの文脈でも無視できない一曲になってきたような気はします。
そんなこんなで和モノA TO Z誌でも紹介されてました。

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