シブがき隊”スシ食いねェ!” – 日本語ラップ以前【14】

欽ちゃんファミリー群は3枚で終了、今回からはアイドルによるラップ歌謡を。
アイドルと言えばジャニーズってことで、活動休止しちゃったけど嵐の櫻井翔(サクラップ!)以降、SIXTONESの田中樹、SNOWMANの岩本照、KAT-TUNの上田竜也(元々は田中聖)、NEWSの増田貴久、SEXY ZONEの菊池風麿など、今でこそ現役グループに1人はラップ担当が居るような状況になりつつあるけど、それ以前にもDEV-LARGEがプロデュース、ラップも指南した(!)V6の森田剛のソロ曲”DO YOU THANG”があったり、楽曲単位ではラップに接近したものがいくつか存在していて。
本作は、そんな試みの中でも最古のものだと思います。

シブがき隊_スシ食いねェ!

シブがき隊”スシ食いねェ!”
(CBS・SONY/JPN 7″/07SH 1737)

A-1 スシ食いねェ!
B-1 TOGETHER!SHIBUGAKI

これは早口言葉かラップか…!?ジャニーズラップの源流的一曲!

NHK「みんなのうた」絡みということで明らかに子供向けの楽曲なんで、この辺りもラップとするか早口言葉とするかが微妙なラインではあるんですが、ラップ歌謡という大らかな括り(?)においてはぜんぜんストライクゾーン!
田原俊彦”IT’S BAD”と共に、後に続くジャニーズラップの源流だと捉えるなら俄然意義深く聴こえてくる、86年(昭和61年)リリースのシブがき隊の18THシングル。

いとうせいこう & TINNIE PUNX「建設的」と同年にして、久保田利伸”TIMEシャワーに射たれて…”やC-C-B”ないものねだりのI WANT YOU”辺りとも同時期であることを踏まえると、80年代も中期に入るとラップというアートフォーム自体がそれなりに市民権を得ていたのかな、とも。
ラップというよりは、やっぱりドリフターズ”ドリフターズの早口ことば”的な感じですが、そちらがDIANA & MARVIN”DON’T KNOCK MY LOVE”を雛型にした、よりブラックミュージックを意識した作りだったのに対し、本作はイモ欽トリオ”ハイスクールララバイ”辺りからの影響も感じさせるテクノ的なアプローチなんで、パッと聴いた時の質感は随分違います。

後年、メンバーのフックン本人がブログで語った制作秘話が面白かったんで引用。

名古屋国際ホテルが、24年前にスシ食いねェ!の原曲が誕生した場所なのだ~!

コンサートツアーで名古屋入りしたシブがき隊、しかし、ヤックンはマジックショー番組で地上7~8Mからの落下事故で入院の為 欠席。1日目のコンサートでのトークがモックンと僕だけでは盛り上がらず…。
その日の夜、僕の部屋でシブ楽器隊のベースのKUZUと明日のMCの所で間繋ぎで歌う曲を作ろうということになった。

当時日本にRun-D.M.C.のラップというジャンルが入ってきたばかりだった「よし!ラップを作ろう!」っと言い出した布川青年。「ラップなら 音程外す俺にも歌えるし、日本人でまだ誰も歌ってない!」っと、KUZUと2人で曲作り。

MCの中でお遊び程度で歌うだけなので、かる~く作曲。さて続いて歌詞。ホテルのルームサービスで単品の寿司を頼んだ際のメモ用紙が布川青年の目に飛び込んできた~
「この注文した ネタ並べリャイイよぉ~、ラップなんだから、なんだっていけるだろ~!」ってな具合で超適当なラップ・スシ食いねェ!の原曲が誕生したのだ!

ふっくんの日々是好日「スシ食いねェ!が産まれた所!」 – https://ameblo.jp/fucknfuckn/entry-10214772860.html

元々はライブの隙間を埋めるためだけの箸休め的な遊びだった、というところなんでしょうけど、思いのほか反響が大きかったんで、NHKの「みんなのうた」に提供~紅白歌合戦にも出演~レコード化等々、あれよあれよという間に認知が広がったとのことで。
最初からRUN DMCを意識した(本人としては)本格的なラップ仕様だった、というのは(それがこうなるかという意味でも)驚き…!

ラップ(風)パートを抜粋すると、こんな感じ。

トロは中トロ、コハダ、アジ(ヘイ、ラッシャイ)
アナゴ、甘えび、締めサバ、スズキ(ヘイ、ラッシャイ)
ほたて、アワビに、赤貝、ミル貝(ヘイ、ラッシャイ)
カツオ、カンパチ、ウニ、イクラ(ヘイ、ラッシャイ)

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タコの頭は、まんまるで(ヘイ、ラッシャイ)
三角野郎は、イカの耳(ヘイ、ラッシャイ)
鯛にホレるは、子持ちのワカメ(ヘイ、ラッシャイ)
ヒラメのエンガワ、縁結び(ヘイ、ラッシャイ)

シブがき隊”スシ食いねェ!”(RAP 1+2VERSE)

フックンはRUN DMCをイメージしたのは分かったけど、まあ歌詞は完全に早口言葉の域(品目の羅列)ですぜ…。

2回目のサビの締め「寿司食いねッ!」(ヤックン?)後のBメロ(?)は、正直印象には残っていなかったんだけど、この辺は編曲で関わった鷺巣詩郎の仕事なのか、正に”ハイスクールララバイ”感覚で(ラップパートじゃないけど)普通にメロディーが良き。
ラップ歌謡大百科に掲載される以前から、日本語ラップの文脈を遡るような場面でちょくちょく名前が挙がる一曲なので、ラップ歌謡という括りでは押さえておくべきだと思います。

折角なので、この流れで英語バージョンの方も。

シブがき隊_OH! SUSHI

シブがき隊”OH!SUSHI”
(CBS・SONY/JPN 7″/07SH 1757)

A-1 OH!SUSHI(スシ食いねェ!英語ヴァージョン)
B-1 スシ食いねェ!(日本語ヴァージョン・カラオケ)

調子に乗って、ジャケ違いで赤の英語バージョン”OH!SUSHI”なんて珍品まで!
このレベルのリテイクをフィジカルでリリースしていたことが、逆に当時のシブがき隊の人気の高さを物語っている気もしますが、オリジナル歌詞を置き換えただけの中学生英語は意味不明を通り越して、もはやアバンギャルドの領域。
海外リリースを狙ったものとは到底考えられず、もうギャグとしか思えないレベルなんですが、オリジナル・バージョンのカラオケを収録しているのは、REMIX盤の仕様としては正しい気がします。

折角なんで、こっちのラップパートの方も一部抜粋しておきます。

TORO is medium toro, AJI is the taste
ANAGO, Sweet EBI, Shaco is a garage
Bird Shell, Red Shell, Look Shell, BAKA Shell,
KATSUO is a SAZAE’s brother,
How much? IKURA

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TACO’s head is round & round & round
Triangle Guy is IKA’s Ear
WAKAME is loving TAI, but she has a husband
HIRAME’s Veranda, God of marriage

シブがき隊”OH!SUSHI”(RAP 1+2VERSE)

見事なまでの中学英語!
令和だったら、と言うか平成でもこのレベルの歌詞を商品化しないだろうし、結果的に昭和時代の勢いと恐ろしさを思い知らされます…。

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