日本語ラップの起源を、いとうせいこうやTINNIE PUNXとすれば、「建設的」がリリースされた86年から実に40年近くが経とうとしているわけだけども、そんな長い歴史においても本国USヒップホップ作品に日本語ラップのアーティストが招かれるケースっていうのは、まだまだ数えるぐらいしかなく。
00年代以降、日本発の国内企画盤だったり、日本語ラップ・アーティスト作品にゲストで向こうの誰かが参加するってケースは増えたんだけど、こと「USアーティストの作品に参加(国内盤のみのボーナストラックは含まず)」という縛りにしちゃうと本当に少ないんですよね。
本国でヒップホップ生誕50周年とされる2023年、そんな角度から日本語ラップとUSヒップホップとの邂逅を掘り下げます。
アナログで聴く、日本語ラップ VS USヒップホップ!

DE LA SOUL”LONG ISLAND WILDIN'”(feat. スチャダラパー, 高木完)
93年の3RDアルバム「BUHLOONE MINDSTATE」のスキット扱いの短編曲ながら、スチャダラパーと高木完がラップを披露。
90年代は、アルバムにはスキットを入れる構成がトレンドだったこともあって、GANG STARR”WORDS FROM~”シリーズ等、親交の深いアーティストや自身のクルーの新人を紹介するショーケース的な役割も持っていたんですが、本作も恐らくはそんな流れから彼等と親交の深かったスチャダラパーと高木完が参加する経緯になったものと思われます(そんな縁か、同作の国内盤CDのライナーノーツにはスチャダラパーも寄稿)。
BOSEが13時間掛けてニューヨークの彼等のスタジオで録ったとラップしてて、「ラップしてみろ」と言われて指定の時間にスタジオに行ったらメンバーは誰もおらず、5時間後にようやく現れた(!)という経緯をフリースタイル風に聴かせてくれます。
欲を言えば、やっぱりDE LA SOULメンバーと絡んでほしかったけど、PRINCE PAULとDE LA SOULが手掛けたビート(DUKE PEARSON”GROUND HOG”使用)に乗って日本語でラップを披露、(スキットでも)彼等の公式アルバムでそれを世界に発信したという意味では、途轍もない偉業だと思います。
3RDアルバム以降のキャリアは、それ以前までの華々しさと比べれば確かに地味に映りがちなDE LA SOULですが(実際「BUHLOONE MINDSTATE」のLPは当時USではプロモのみで、正規リリースは無し)、それでもその功績が目減りすることは一切ありませんね。
ついでに、「BUHLOONE MINDSTATE」の国内盤CDとライナーノーツも!
テキストはスチャダラパー名義になってるけど、まあBOSEでしょうね多分。
自身が参加してる”LONG ISLAND WILDIN'”の裏話も書いてあって、最後の締めの一文「このアルバムがあまり好きじゃないという人とは友達になれないような気がする」っていうのもナイス!



この縁は、2000年のスチャダラパー”5W1H”にDE LA SOULメンバーのTRUGOY THE DOVEが客演参加する等、その後も続きます。

MYSTIK JOURNEYMEN”REVENGE OF THE GOLDFISH”(feat. RINO)
オークランドのデュオ、MYSTIK JOURNEYMENの97年のEP「ESCAPE FOREVER」からの一曲。
LIVING LEGENDSの中心メンバーとして知られるLUCKYIAM.PSC、SUNSPOT JONZの2人と共に、ドープなビートの上で相変わらずのラップ巧者振りを披露。
よく聴くと、LAMP EYE”証言”の「もはや射程圏内だぜ、お前の既知に忍び寄る影は未知」、「超バッド、ウザッたい現状打破」なんてラインを再利用したり、”夕陽のタンガンマン”を彷彿とさせる「グータラ野郎に打ち込むタンガン」というラインで締めていたりと、既発曲を匂わせるリリックに日本語ラップのヘッズはニヤリとさせられるはず。
ちなみに、同EPにはYOU THE ROCKのラジオ番組「HIPHOP NIGHT FLIGHT」に出演した際のやり取りをそのまんま収録したスキット”JAPAN FM”なんて珍品も収録されてます。
余談ですが、オークランドはキングギドラのK-DUB SHINE、SHING02が学生時代に留学していたりと、日本語ラップ・シーンとは何かと縁のある場所。
その後、MARY JOYが(SHING02経由で?)LIVING LEGENDS周辺と繋がり、そこからV.A.「TAGS OF THE TIMES」シリーズに発展していくことを思えば、その辺の後の流れの起こりの時期に実現した楽曲と考えると腹落ちしやすいかもしれません。
MYSTIK JOURNEYMENとRINOの繋がりが先なのかは分かりませんが、SHING02の未発表曲集「絵夢詩ノススメ」に収録されたスキット”クワダテル二人”にRINOが参加していたりもして交流もあったようなんで、この辺りも深堀りすると面白いかも。

FIVE DEEZ”SEXUAL FOR ELIZABETH”(feat. SHING02)
FIVE DEEZはオハイオのシンシナティ出身、FAT JONやPASE ROCK等を擁するヒップホップアクトですが、同郷のLONE CATALYSTSだったり、国内ではNUJABES主宰のHYDE OUT PRODUCTIONSと接近したりとかで、一時期は日本でも割と知名度が高かったグループ。
そんな彼等のCOUNTER FLOWからの2001年のデビュー作「KOOLMOTOR」からのシングル”SEXUAL FOR ELIZABETH”にSHING02が参加。
リードMCのPASE ROCKが後にHYDE OUTに合流することもあり、SHING02とはすでに繋がっていたのかもしれませんが、グループ名義の本作ではSHING02が目まぐるしく展開するビートで3分半頃から日本語でキックしています。
「緑黄色人種」よろしくのスタイルでラップしてるんで、知らないで不意に聴くとけっこう驚くタイプの一曲だと思います。

WARREN G”LET’S GO”(feat. KRS-ONE, LIL’ AI)
2003年に本国で上映されたドキュメンタリー映画「BEEF」のO.S.T.からの一曲には、LIL’ AIなる日本人♀MCが客演参加していました。
東西のビーフを追いかけた映画の性質上ということなのか、O.S.T.には東西を問わないアーティストの楽曲が軒を連ねていましたが、そんな中で西海岸の大物、WARREN Gと東海岸のレジェンド、KRS-ONEの共演曲になぜか立ち会ったLIL’ AIは、調べてみるとダンサーとしても活躍する両刀使いのMCらしく(もちろん、シンガーのAIとは別人)、彼等に続く3ヴァース目、堂々とした立ち振る舞いで日本語でラップしています。
この勢いでUSからデビューとならなかったのは残念でしたが、海外MCとの共演(かつ本国からのリリース)という条件下だと、恐らく本作以上にインパクトを持った楽曲は今後もなかなか出てこないのでは、と思います。
何気に、LIL’ AI本人も登場するMVも存在しています。

GRANDMASTER FLASH”WE SPEAK HIPHOP”(feat. AFASI, KASE-O, MACCHO, ABASS, KRS-ONE)
レジェンドDJ、GRANDMASTER FLASHの2009年のリーダー作「THE BRIDGE(CONCEPT OF A CULTURE)」の目玉曲”WE SPEAK HIPHOP”には、スウェーデンのAFASI、スペインのKASE-O、セネガルのABASS、USのKRS-ONEに並んで、日本代表としてOZROSAURUSのMACCHOが堂々参戦!
タイトルからして掲げた「世界共通文化としてのヒップホップ」というコンセプトよろしく、各国のMC陣を迎えてるんですが、本国からQ-TIP、BUSTA RHYMES、SNOOP DOGG等のビッグネームもちゃんと参加しているのは、御大のプロップスの高さを感じさせるような。
話を戻して、”WE SPEAK HIPHOP”ではBOOGIE BOYS”FLY GIRL”を使用したタフなビートに乗って、各国のMCが母国語でそれぞれヴァースをキックしてて。
GRANDMASTER FLASHの古典的クラシック”SUPERRAPPIN'”の名フレーズを引用し、大トリで登場するKRS-ONEが大人げなく全部持ってっちゃった感がしないでもないですけど(ヴァースも長いし)、日の丸を背負ったMACCHOがきっちりと日本語ラップの格好良さを示してくれたのは、同じ日本人として誇らしい限り。
リリースがドイツのSTRUTだったせいか(?)、当時あまり騒がれてなかった記憶なんで、知らない人も多い?

LL COOL J”QUEENS IS”(REMIX)(feat. DABO)
最後は少し変化球。
元々LL COOL Jの2000年の8THアルバム「G.O.A.T.」の、日本盤CDのみのボーナストラックですが、なぜかDEF JAMのドイツ支部、DEF JAM GERMANYのお披露目的V.A.「DEF JAM UNSTOPPABLE」に収録され地味にLPに滑り込んでいたのは、あまり知られていないと思います。
00年代のDEF JAMのワールドワイド展開で、ほぼほぼ日本支部 = DEF JAM JAPANと並行して進行していたドイツ支部の立ち上げ時、2001年リリースの同V.A.にはDEF JAM GERMANY所属のSPEZIALIZTZ、KONKRET FINN、PYRANJA、DEEMA、BINTIA他、現地のヒップホップ/R&B勢に加えて、USの本隊からJAY-Z、LL COOL J、JA RULE、DRU HILL等、ビッグネームの楽曲も収録することでドイツ支部の封切りを祝うような全18曲。
そもそも、DABOのLL COOL J「G.O.A.T.」日本盤ボーナストラックへの参加自体がDEF JAM JAPAN所属の特典みたいなもんだったと思うんですが(実際、契約の第2弾アーティストだったS-WORDもCHRISTINA MILLIAN作品の日本盤ボーナストラックへの参加)、時期的なことなのか(?)、本V.A.に収録されたのはLL COOL J”QUEENS IS”(REMIX)のみでした。
肝心の内容といえば、原曲はHAVOCがプロデュース、客演にPRODIGYを迎えた同郷3人体制(LL COOL Jも少年時代からクイーンズで生活)のクイーンズ勢による地元賛歌なんですが、REMIXはHAVOCのビートはそのままにPRODIGYと入れ替わる形でDABOが参戦。
3回目のフック~3ヴァース目をしっかりと日本語でキックしているのはイイんですが、東京と自分自身をレペゼンするリリックは、元々のテーマからは少し趣旨が違ってる気も…。
PRODIGYパートを切り貼りしただけのお手軽な作りも相まって、正直大きな化学反応は起こってないけど、まだまだ第一線級だった頃のLL COOL Jと公式音源で絡んだことを思えば、やはり快挙には違いありません。
国内盤CDのみならず、DEF JAM GERMANYを経由してEUから世界に向けて日本語ラップが発信されたという事実が重要!

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