キングギドラ「空からの力:20周年記念デラックス・エディション」 – #np 2023.06.17

本日6月17日は、調べてみるとZEEBRAのソロデビュー作「THE RHYME ANIMAL」(1998/06/17)と、キングギドラの「空からの力:20周年記念デラックス・エディション」のリリース日で(2015/06/17)。
今回取り上げたいのは後者で、言わずもがなキングギドラの1STアルバムにして日本語ラップ史に残る金字塔的名作「空からの力」の、リリース20周年記念の再発/編集盤。

キングギドラ_空からの力:20周年記念デラックス・エディション

キングギドラ「空からの力:20周年記念デラックス・エディション」
(P-VINE/JPN CD+DVD/PCD-18788・9)

01 – 未確認飛行物体接近中(急接近MIX)
02 – 登場
03 – 見まわそう
04 – 大掃除(feat. T.A.K THE RHYMEHEAD)
05 – コードナンバー0117
06 – フリースタイル・ダンジョン
07 – 空からの力(INTERLUDE)
08 – 空からの力 PT.2
09 – 星の死阻止
10 – 地下鉄
11 – スタア誕生
12 – 行方不明
13 – 真実の弾丸
14 – コネクション(OUTRO)
15 – 空からの力(MIND FUNK REMIX)
16 – 行方不明(DJ KENSEI’S SMOOTH MIX)
17 – 真実の弾丸(FLUTE MIX)
18 – 見まわそう(ORIGINAL DEMO VERSION)
19 – 空からの力 PT.1(ORIGINAL DEMO VERSION)

全曲レビュー

01 – 未確認飛行物体接近中”(急接近MIX)
名盤の冒頭を飾るのは、言わずもがなV.A.「BEST OF JAPANESE HIPHOP VOL.2」に提供したSAGA OF K.G.名義での”未確認飛行物体接近中”のテイク違い。
オリジナル・バージョンの仰々しいまでのイントロは、フルートの音色がこれはこれで怪しいUFO(= UNIDENTIFIED FLYING OBJECT)感を醸すHERBIE MANN”PARADISE MUSIC”に差し替わり、それに伴いビートの方も丸っこい鳴りのO’JAYS”GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT”のドラムブレイクを使用。
プロダクションはZEEBRAによるもので、この辺りのネタ選びだったり、仕上がりの質感は確かに、後のZEEBRAのソロ作「THE RHYME ANIMAL」と地続きの感触。

02 – 登場”
2曲目にして、イントロ的なスキットは当時、西麻布YELLOWで行われていたRIKO主催のイベント「HIPHOP JUNGLE」のライブ映像から持ってきたものだそうな。
UZIやT.A.K THE RHYMEHEADも出演していたことから、何気に作詞には彼等の名前もクレジットされています。

03 – “見まわそう”
説明不要のクラシック!
MASTA ACE”TAKE A LOOK AROUND”の日本語ラップ版をイメージしたという、当時PUBLIC ENEMYみたいな社会派アクトを目指していた彼等らしい切り口でラップ。
BOB JAMES”BLUE LICK”を使用したビートはやっぱりZEEBRA作で、薄く鳴らしているのもBOB JAMES”NAUTILUS”。
ちなみに、K-DUB SHINEの2ヴァース目の中盤に後ろの方でアクセント的になってるのは、JOE COCKER”WOMAN TO WOMAN”で、これに関してはデモ・バージョンで使用していた名残りかと。
スクラッチのネタは以前に別記事で解説済みですが、A.T.C.Q.”PUSH IT ALONG”の「THIS SOCIETY OF FAKE REALITY」をフックで、終盤にはBOOGIE DOWN PRODUCTIONS”MY PHILOSOPHY”の「IT’S NOT ABOUT A SALARY IT’S ALL ABOUT REALITY」なんてラインを擦ってます。

04 – “大掃除”(feat. T.A.K THE RHYMEHEAD)
12”では前述”見まわそう”の裏に収録されていた、こちらも言わずもがなの(年末)クラシック!
ピアノを基調に組み立てたZEEBRA作のビートは、JOHN COLTRANE QUARTETの長尺曲”AFRICA”の中盤のフレーズのいくつかを繋ぎ合わせたもの。
盟友、T.A.K THE RHYMEHEADも参加していますが、印象的なのはやはりK-DUB SHINEが巧みに1から10までの数字を同音異義語を使って読み上げるラインで、いまだに語り草。

05 – “コードナンバー0117
タイトルの「117」は、(リリックにもある通り)時報のダイヤルであると共に、キングギドラのイニシャルのKGのアルファベットでの順番を示す数字で、平たく言うとセルフボーストもの。
GEORGE BENSON”ONE ROCK MAKE NO BOULDER”を使用したビートは、ここまでの流れでZEEBRAっぽい気がするけど、実はDJ OASIS作。
フックで入ってくるピアノリフは、もちろんISSAC HAYES”IKE’S MOOD”。

06 – “フリースタイル・ダンジョン
実質的なZEEBRAのソロ曲は、もちろん2010年代に人気を博したABEMA TVの某番組のタイトルの元ネタ。
そもそも、このタイトル自体もNAS”N.Y. STATE OF MIND”の冒頭の語り部分「STRAIGHT OUT THE FUCKING DUNGEONS OF RAP」という一節から着想したそうで、それが95年に海を越えてZEEBRAがインスパイアされ、それが20年後の2015年にテレビ番組の冠になるんだから分からないもんです。
おどろおどろしいビートのフックは、RHYMESTER”口から出まかせ”の自身のヴァースの一節をのっぺりと流用。
プロデュースもZEEBRA自身によるもの。

07 – “空からの力(INTERLUDE)
アルバムのタイトルを据えた短めのインタルードは、LONNIE LISTON SMITH & THE COSMIC ECHOES”GODDESS OF LOVE”を使用。
元々、同曲のデモ・バージョンにあたる”空からの力 PT.1”で使われていたビートからのスキット的な意味合いで流用したものと思われます。
DJ OASIS作で、この辺りの制作背景も含めたプロダクションはDJならでは、かも。

08 – “空からの力 PT.2
インタルードを経て、PT.2と銘打たれた本編へ。
METERSの定番ブレイク”HERE COMES THE METER MAN”の終盤のドラムブレイクを下敷きに、GEORGE BENSON”GONE”をメインに、アクセント的にMILES DAVIS”MOOD”を使用したビートへ展開。
フックで執拗に擦られるのは、PUBLIC ENEMY”BLACK STEEL IN THE HOUR OF CHAOS”の「GOIN’ OUT WITH A BANG, READY TO BANG OUT, BUT POWER FROM THE SKY AND FROM THE TOWER SHOTS RANG OUT」を長々と流用。
PUBLIC ENEMY曲は数あれど、渋い目の付け所は流石バイリンガルグループと唸らされる感じ。

09 – “星の死阻止
95年の時点で環境破壊に警鐘を鳴らした、分かりやすいテーマのコンシャスラップ。
イントロはHUBERT LAWS”MIDNIGHT AT THE OASIS”で、手掛けたDJ OASISはさぞニヤリとしながら作ったんだろうなと(?)。
本編にはGEORGE BENSON”GONE”を使用していて、実際DJ OASIS自身も(当時の)プロダクションで特に気に入っているというSNSでの発言も確認。
いかにも適当にチョイスしたっぽい擦りネタは、ERIC B & RAKIM”IN THE GHETTO”の「PLANET」ってフレーズ。

10 – “地下鉄
元々は”コードナンバー0117”のデモ・バージョンで使っていたというGIL SCOTT-HERON & BRIAN JACKSON”1980”を使用したスキットはDJ OASIS作。正規バージョンではボツにしたけど、勿体無いから使おう、みたいな感じとか。

11 – “スタア誕生
ご存知、K-DUB SHINEのソロ曲で、テーマ的にはCOLLEGE BOYZ”HOLLYWOOD PARADOX”をイメージしたらしく。
AUDIO TWO”TOP BILLIN’”を下敷きに、(フィクションながら)都会の闇と性を絡めたストーリーテリングは、(テーマはぜんぜん違うけど)K-DUB SHINEの後の”追いつめられて(都知事人質)”や”理由なき犯行(中学生日記)”辺りに昇華されていくイメージ。
フックで擦られるERIC B & RAKIM”IN THE GHETTO”の「IT SHOULDN’T HAVE TO BE LIKE THAT」の一節は、K-DUB SHINEの曲中での決め台詞(?)にもなっている「こんな風じゃなくても良かった」の英訳っぽい感じか?
意外にも(?)ビートはZEEBRA作。

12 – “行方不明”
作中、唯一のK-DUB SHINE作ビートは、BILLY COBHAM & GEORGE DUKE BAND”DO WHAT CHA WANNA”を絶妙にまったり使用したもので、12”の”行方不明”(DJ KENSEI’S SMOOTH MIX)の印象が強いせいか(?)、オリジナル・バージョンのネタ使いに言及される場面はこれまであまり無かったかも?
フックの擦られるのも、例のA.T.C.Q.”EXCURSIONS”の冒頭フレーズではなく、SLICK RICK”HEY YOUNG WORLD”の「GO FOR YOURS, ‘CAUSE DREAMS COME TRUE」で、REMIXの方とは意味合いやニュアンスが違っているのもポイント。

13 – “真実の弾丸”
シンプルな骨格のビートはDJ OASIS作で、炸裂するようなRED ZEPPELINの定番ブレイク”WHEN THE LEVEE BREAKS”のボトムスの方が目立ってる印象。
イントロから擦られるのが、BEASTIE BOYS”PAUL REVERE”の「GET READY ‘CAUSE THIS AIN’T FUNNY」で、聞こえのアグレッシブなフロウとは裏腹に(?)、リリックはなかなかにコンシャス。
言うまでもなく、次作「最終兵器」には続編の”真実の爆弾”が収録されていました。

14 – “コネクション(OUTRO)”
90年代の作品らしく、本編のアウトロは仲間たちへのシャウト・アウトで締め。
短尺ながらも、キハことT.A.K THE RHYMEHEADやDJ KEN-BO、UZI、INOVADER等、制作に参加した周辺メンバーはもちろん、地元の仲間達への感謝。

15 – “空からの力”(MIND FUNK REMIX)
20周年記念のデラックス盤に追加収録された、”空からの力”のREMIXはINOVADER作。
後にはDJ HASEBEが”いとしさの中で”で爽やかに使用したANITA BAKER”MYSTERY”を一足早く、同ネタとは思えないほどにおどろおどろしく使用したビートがいかにもINOVADERらしい怪しい雰囲気。
オリジナル・バージョンよりも、ずっとアンダーグラウンド感が強いドープな仕上がり。

16 – “行方不明”(DJ KENSEI’S SMOOTH MIX)
20周年記念のデラックス盤に追加収録された、”行方不明”のREMIXはDJ KENSEI作。
CAL TJADER”SOMEWHERE IN THE NIGHT”を薄らと敷いた美しいビートで、これみよがしに擦られるのは、A TRIBE CALLED QUEST”EXCURSIONS”のQ-TIPの同曲のド頭の「BACK IN THE DAYS WHEN I WAS A TEENAGER」で、正にZEEBRAの歌い出し「中坊の俺は〜」とリンク。
”EXCURSIONS”の同フレーズは、ILLEGAL”BACK IN THE DAY”で93年には流用されて注目されていたパンチラインですが、日本語ラップだと”行方不明”の本REMIXの印象が強いはず。

17 – “真実の弾丸”(FLUTE MIX)
20周年記念のデラックス盤に追加収録された、”真実の弾丸”のREMIXはDJ KIYO作!
球数こそ少ないものの、FUNKY LEMONADE作品をはじめ、LIBRO”対話”やSUBSTANTIAL”IF I WAS YOUR MIC”辺りのREMIX等、同時期に好仕事を残していたDJ KIYOの記念すべき初のREMIX仕事ながら、12”ではA面だった”行方不明”(DJ KENSEI’S SMOOTH MIX)にも劣らない力作!

18 – “見まわそう”(ORIGINAL DEMO VERSION)
20周年記念のデラックス盤で初披露となった目玉曲!
正規バージョンではアクセント的に使用されていた大ネタ、JOE COCKER”WOMAN TO WOMAN”を全面的に使用し、定番ブレイクのMELVIN BLISS”SYNTHETIC SUBSTITUTION”を敷いたビートに乗ってくる、若さ故の前ノメリなラップとガヤは完全にニュースクールな耳当たり。
K-DUB SHINEのリリックに「94年、平成6年〜」とあるので、正規バージョンの1年前のデモ・バージョンなのに、かなり印象が異なります。
また、正規バージョンでは落ち着いたフロウを聴かせていたZEEBRAが、ここではPHARCYDEを意識したらしいフリーキーで前ノメリな節回しを披露している等、「空からの力」の発表前のフロウの変遷が確認できる意味でも貴重なテイク。

19 – “空からの力 PT.1″(ORIGINAL DEMO VERSION)
20周年記念のデラックス盤だけに収録された目玉曲をもう一発!
”見まわそう”と共に94年に録音されたと思しき”空からの力”のデモ・バージョンですが、こちらもニュースクールライクな仕上がりで、(当然!)ZEEBRAはフリーキーフロウ。
K-DUB SHINEとの掛け合いまで披露しており、リリックは実はあまり変更されていないのにパッと聴いた感じでは正規バージョンの面影はありません。
METERS”THE HANDCLAPPING SONG”がカットインされる展開もスリリング!
本編にはインタルードとして残った、ここでのLONNIE LISTON SMITH & THE COSMIC ECHOES”GODDESS OF LOVE”使いも、文脈を踏まえるとニヤリとさせられるはず。

ちなみに、デラックス盤のプロモーションでDJ OASISが配信したDJミックス「FUNK P RADIO MIXTAPE VOL.7 KING GIDDRA #ソラチカ 20」のラストのボーナストラック的に、”コードナンバー0117”のデモ・バージョンもプレイされていました。
こちらは、本編では”地下鉄”で使用されたGIL SCOTT-HERON & BRIAN JACKSON”1980”を使ったビートで、(ZEEBRAのフロウ的に)上記のデモ・バージョンと同時期に録られたと思われる貴重なレアテイクなんですが音質も悪くないので、デラックス盤の本編に収録してくれても良かったような…!

なんとなく、オリジナルLPも!

キングギドラ_空からの力
キングギドラ_空からの力_裏

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